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【1940年、東宝『支那の夜』】

古い映画を年代順に見る冬休み企画。愁いは清し、君ゆえに。美しい映画だと思います。カメラの性能は決して良くありません。視野というか、撮影範囲が狭く、画面が丸いのです。でも構図には工夫が見られます。BGMは殆ど使わず、登場人物の心理を丁寧に「絵」で語っています。後半におけるミュージカル映画としての聞かせどころも、鳴らし過ぎ感がなく、締まりが良いです。編集にも間延びしたようなところがありません。ひじょう...

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【1944年、東宝『加藤隼戦闘隊』】

冬休み企画その2。「どうやって撮ったんだ!?」と開いた口が塞がらなくなる場面の連続です。空中戦は実戦の記録映像なのか……?敵機には出演交渉したのか……?爆撃による地上物の連続爆発は、いくらなんでもミニチュアだよな……?思わずまばたきが減っていたようで、気づいたら目が痛くなってました。ドライアイにはお気をつけください。冷静に考えると、対空砲や機銃を浴びながら実戦を撮影しても、回収できる保障がないので、再現な...

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【1946年、大映『七つの顔』】

冬休み企画、その3。オーソン・ウェルズがいて、多羅尾伴内がいて、フィルム・ノワールがあって、ルパン三世がいて、そのアニメ化があって、江戸川コナンがいて、猫の恩返しもある。アニメは最初からコピーのコピーのコピーです。コピーであることが悪いのではありません。コピーして出来たものの質が低いときが問題なのです。人材をゲーム業界に取られている、パチンコの仕事を受けることで精一杯なんて事情があるのかもしれませ...

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【1951年、松竹『鞍馬天狗 角兵衛獅子』】

花咲かば。告げんといひし山里の。使いは来たり、馬に鞍。最初から最後までカッコいいです。アクションシーンの連続です。「日本の古い映画なんて」と思うなら、外国映画だと思えばいいです。風俗があまりにも違うので、いまの日本人と同じとは思えません。異国情緒のつもりで楽しめばいいです。セットが豪華で、クレーン撮影もマット画も見事なもので、ミュージカル映画としての聞かせどころもあり、編集も惜しみなく、日本映画の...

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【1958年大映、市川崑『炎上』】

観ると良い映画。格調高い文芸作品。笑えるとか泣けるとか萌えるとかそういう娯楽要素はバッサリ切って捨ててあります。三島由紀夫『金閣寺』が原案で、取調室における回想として始まる、犯罪者の内面描写です。冒頭に「これは架空の物語である」旨、ていねいな注意書きが示されます。お寺の名前は「しゅーかく寺」に変更してあります。被差別が重要なモティーフになっており、いわゆる差別用語に傷つく若者たちの姿が直截に表現さ...

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【パゾリーニ、1964年『奇跡の丘』】

あるいは、マタイによる福音書。原題がそのまんまである通り、大ロケーション敢行・大量エキストラ投入によって、イエス誕生から受難・復活までを真正面から描いた大叙事劇。モノクロ。エピソードの数々は、キリスト教徒にとっては一般教養以前の基礎の基礎なので、「ここは○○の街」なんてナレーションも字幕も入りません。その今さら映画化するようなものでもないことを、あえて撮ってみたのは、ルネサンス絵画や絵本などを通じて...

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【月も曇らぬ日の本や。~高畑勲『かぐや姫の物語』】

ここまで来たのか。ここから再び立ち上がって行けるのか。アニメは伝説になろうとしています。ディズニーは、日本人が求めていたものがセル系アニメではなかったことを証明してくれちゃいました。アメリカ映画界は、鷹揚にもウォルトを追撃した日本人へ勲章を与えて労をねぎらった格好ですが、「これにて一件落着」というつもりもあるのかもしれません。『アナと雪の女王』を観た少女たちが気に入ったのは、まるで夜の歌姫のように...

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【らせんの素描。】

1980年代の映画です。まだ洋画による美化されたイメージが生きており、AIDSの発生を背景にしたバッシングも強かった頃に、勇気をもってカミングアウトしたゲイ男性たちの日常を伝えるドキュメンタリー。金髪でも、美少年でもない、ふつーの日本のお兄ちゃん・おっさん達の穏やかな表情を静かに映し出した良作です。お芝居をしたり、詩を朗読したり、歌を唄ったり。のびのびと自己表現したいだけ。好きな人と一緒に暮らしたいだけ。...

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【映画『ハリー・ポッター 死の秘宝 Part1』】

トビーに助演妖精賞あげてください。原作ともども、毎回ハッピーエンドというお約束を繰り返さずに、商業性が犠牲になりそうな危ういところまで踏み込んで、キャラクターを成長させていくシビアさは見習いたいところです。いじめっ子一家もいなくなってしまうと寂しい冒頭から、おなじみキャラクターが勢ぞろいして「ハリーだらけ」になるファンサービス、CGであることが分かっていてもなお見ごたえのある逆走カーチェイス。間然...

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【ハリー・ポッターと死の秘宝 part2 (2011年)】

教訓1:部下は大切にしましょう。 2:母ちゃんを怒らせると怖いです。アズカバンの番人を天井から吊るしてみたいな、USJへ行けばモビール飾りが売ってるのかな、などと思いつつ……原作を読んでしまうと「原作とちが~~う」という点が気になって、映画そのものの呼吸を見誤るので、原作は後回しです。【静けさが生む風格。】画面が白黒で、血の色を表現できなかった時代の映画には、残酷さを売りにしない品の良さがあったと思...

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【2007年 ORANGELOVE】

監督:ALAN BADOYEV出演者:ALEKSEI CHADOV, OLGA MAKEYEVA, ALEKSEY VERTINSKY公式サイト:http://badoev.com/カンヌに彗星のごとく現れた、若冠26歳(1981年生まれ)の新鋭ウクライナ人監督……! ということだったようです。もともと音楽ビデオから始めた人による、初の長編映画。なるほど音楽の選曲と使い方(映像とのコラボ具合)が、たいへん魅力的です。デジタル時代らしいというか、SNS時代らしいというか、贅沢な場面設...

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【1936年『THE PLAINSMAN』】

監督:Cecil B. DeMilleゲイリー・クーパー美しい。あまりの美しさに、やや殺伐としたセントルイス港の日常風景から浮いております。海外の白黒時代の映画は、保存状態の良いところが、まさに有難いです。時おりカメラが切り替わって、不世出の美男のバストショットを堪能できます。ちょっと輝いて見えるようなフィルターかかってるですね。上背に優れた凛々しい美男が女に鞭を振るわれてみたり、異民族に緊縛されてみたり、だまし...

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【引き裂かれる男心、充足する女心。】

映画監督というのは軍人ではありません。徴兵義務を果たしてきた人はいるかもしれませんが、実際の戦闘に参加した人は少ないと思います。また、もちろん現役マフィアやヤクザではありません。機動隊員でもありません。マル暴でもありません。自分自身が体力派・武闘派ではないことを知っているから、創作家の道を選んだわけです。彼らの作品には、戦いに行く男たちに対して、置いていかれる女の悲しみが、妙に生々しく描かれている...

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【ヴィットリオ・デ・シーカ『自転車泥棒』1948年】

エキストラが美男です。実際に敗戦直後に撮影しているわけで、わずかな給料をもらって喜んだ俳優の卵が大勢いたんじゃないかと思います。これで自分の自転車が買えるってね。イタリア中が薔薇色に染まる自転車レースは五月にやってましたが、あの底辺がこの自転車文化なんだな……と変なところに感心したり。あまりの名作ぶりに長いこと敬遠していましたが、290円になっていたので買ってきました。永岡書店より『懐かしの名作映画ベ...

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デ・シーカ『自転車泥棒』ふたたび。

ネオレアリズモの夜明けらしいんですが、基盤にあるのは人情喜劇だろうと思います。どの場面でも、もっと悲惨な展開は充分に考えられるのです。下町で喧嘩に巻き込まれたのに、刃物が出てこなかったのは、むしろ不思議なくらいです。終戦直後の時代に、まだそのへんに軍用拳銃が転がっていたっておかしくありません。揉み合ったはずみで相手に致命傷を与えてしまった、さらに逮捕に抵抗したはずみに警官が車にはねられたなど、不幸...

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2008年、アンドレイ・クラヴチュク監督『アドミラル』

Admiral (Russian: Адмиралъ) コルチャック提督:コンスタンティン・カベンスキーアンナ:エリザベータ・ボヤルスカヤカペル将軍:セルゲイ・ベズルコフアレクサンデル・ヴァシリヴィチ・コルチャック。実在した黒海艦隊司令官。1917年の革命の際、セバストポリにいて粛清をまぬがれ、西側の協力を得て反革命軍のリーダーとなった人の半生記。以前にご紹介したグルジアのメラヅェ兄弟による『ヴァプレキ』(Вопреки)という楽曲が...

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1936年『河内山宋俊』

日活、太秦発声。山中貞雄監督。原作:山中貞雄、脚色:三村伸太郎。河内山宋俊:河原崎長十郎。金子市之丞:中村翫右衛門。お静:山岸しづ江北村大膳:清川荘司(日活特別出演)お浪:原 節子(現代劇特別出演)河原崎長十郎美しい。いや原節子美しい。どっちを先に言おうか迷います。節子16歳。それにしちゃ落ち着いた風情と気品を備えています。確かに逸材です。運命に打ちのめされて項垂れる姿は、明治時代の日本画家たちにも...

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1960年、大映京都『大江山酒天童子』

製作:永田雅一音楽:斉藤一郎脚本:八尋不二振付:花柳有洸監督:田中徳三総天然色特撮時代劇。「目千両」光線炸裂する新旧美男対決。伝統美への尊敬、意欲的な特撮。見どころ盛りだくさんの娯楽大作です。合戦部分は大ロケーション敢行。人馬大量投入。炎も本物。あいた口がふさがりません。CGのなかった頃です。くり返します。CGのなかった頃です。現場の熱意が伝わります。大江山の鬼退治、じつは朝敵退治という合理的解釈...

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2007年、ザック・スナイダー『300』

続篇じゃないです。少し前に続篇の公開記念で1本目のほうが新パッケージになっていたので買っといたのです。絵が美しいので、たいへん好きな作品です。一枚ずつ隅々まで描きこんだ油彩画のならぶ美術館へ行ったような、お得な気分になります。背景と人物は明らかに合成で、スタジオ撮影感ありありなんですが、その作りものっぽさがまた舞台劇を見に行ったような気分にさせてくれます。実際の舞台劇では、遠景のスケール感を出せな...

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2014年、大友啓史『るろうに剣心 伝説の最期編』

6日の金曜ロードショーで拝見しました。衣装、背景、殺陣、撮影とも見事なもので、日本の映画人が頑張っている様子が嬉しいです。横にズーーッと移動するカメラワークが印象的でしたが、アニメを意識しているのかどうか。自身の色男っぷりをよく分かっている福山さんの堂に入った演技が見ものでしたね。ご結婚おめでとうございます。物語のほうは……維新の功労者が、明治政府によって迫害される。歴史の暗部を描くというアイディア...

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1952年、新東宝『清水次郎長傳』

石松三十石船、七五郎の義侠、閻魔堂の最期、青木屋の決斗。製作:杉原貞雄 監督:並木鏡太郎 脚本:三村伸太郎 撮影:横山實出演:高田浩吉(松竹)・田崎潤・月形竜之介・市丸(ビクター)・廣澤虎造見渡せば、富士の高嶺に久能山。田子の浦風そよそよと。東海道は良いところ。唐突な選択は、近所のホームセンターでDVDを売ってたからです。廣澤虎造の本人出演に惹かれました。ナレーションの代わりに浪曲が全編に用いられ...

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。