2013/06/24

1957年『OK牧場の決斗』

髪型が好きだと言ってくれた男にいきなりタカられた!∑(゚д゚lll)

OKコラルの決闘、じつは保安官と無頼漢の武装解除をめぐるちょっとした路上の銃撃戦、本当は30秒くらいで終わった……そうですが、ともかく結果は分かってる話をいかに面白く見せるのかというと、俳優の魅力でみせるわけなのですね。

前半はいかにワイアットとドクが仲良くなったか。場面転換を兼ねた「道行」があって、後半が決闘の起こる街での人間模様。

二人はすでに名を成しており、ドクは最初から要注意人物として危険な香りたっぷりに、ワイアットは一見もっさりと入ってくる実直な保安官。サバイバルな服装が似合いそうな砂ぼこりの舞う街で、あの時代の男たちはスーツに革靴で過ごしていたんですな。

掃いたような白雲、水色の空、黄色く枯れた草原、地平線から現れる騎馬の男たち。口笛と蹄の音。あああ西部劇が始まるっ。オープニングの美しさ、意気の高さだけでも繰り返し鑑賞する価値があります。これほど上段に構えて「お笑い」にならなかった時代、いいなァ。

じつはこの男たちの中心人物はまだチョイ役のリー・ヴァン・クリーフなのでした。根は気の弱そうな役柄ですが、いい顔立ちで印象に残ります。彼らに導かれて雄大な自然と、花をそなえる人もない墓場の不吉さを味わいながら、カメラも街の中へ。

カーク・ダグラスを最初に見たのは『パリは燃えているか』のパットン将軍。アメリカンな爽やかさに溢れているように思いました。ここではむしろ「汚れ役」といっていいかと思いますが、キレてます。椅子の背越しに上目遣いににらみ上げる初登場シーンのカッコいいこと。1916年生まれ、公開年には41歳。

バート・ランカスターは最晩年の『フィールド・オヴ・ドリームス』で泣かされたのが最初なもんですから、顎の張った男盛りの生々しい色気にビックリです。1913年生まれ、公開年には44歳。丸っとした目がチャーミング。

実在のワイアットは決闘の年に33歳、ドクは30歳。もっと血気盛んだったかもしれませんが、映画は初老(=40歳)に達した男たちの「若い頃はいろいろやったが、そろそろ人生にケリをつける」的な気分をベースにしております。

肺を病んだドク(咳をまき散らすのはやめましょう)は長いこと連れ添った女と「これ以上一緒にいてもどうにもならない」という気分を抱いて自棄気味、堅物ワイアットは初めての恋に一直線。

ケイトとローラという二人の対照的な女性たちの、それぞれなりの純情ぶりを絡めつつ、前半は男二人のキャラクターの違いを際立たせることに費やされるわけで、史実を無視して友情ロマンのドラマ性を味わうことになっております。むちっとしたランカスターと、常にスレンダーさを際立たせる衣装で決めたダグラスが全くいいコンビ。

ショットグラスで水を割らずにかっ食らうウィスキー、柱で擦ったマッチで点ける葉巻、レザーで研いだカミソリ、投げナイフ、、バントライン・スペシャル、ポーカー。

「訊きたいことがあるんだがね」
「このゲームはソリティアってのさ」

ダグラスはカードのあつかいに長けたところを時々披露します。真似するよね(ノ´∀`*)

男のカッコ良さに溢れておりますが、公開年は1957年なわけで、戦後12年め。『エデンの東』『理由なき反抗』より後。アメリカでの公開日、5月30日は「メモリアル・デイ」でもあるはずです。作中に「勤め上げてもわずかな年金」「南北戦争へ行った兄貴に憧れた」という台詞がありますが、すでに街行く若者たちには「いまの俺たちは何をしたらいいのか」というような気分があったかもしれません。「開拓時代の男たちはカッコよかったなァ……」というノスタルジーだったのでしょう。日本では、その男のノスタルジーに憧れて、無国籍映画や翻案である任侠映画、時代劇がいっぱい撮られましたが。

「男の道行」の美しさでは『唐獅子牡丹』に軍配を上げたいでしょうか、この作品の「四人横並び」のカッコ良さの勝ちでしょうか。『戦略大作戦』でパロディにしていたのは爆笑させてもらいましたが……


アメリカの女性は「実家と私とどっちが大事」など、ウザがられても自分の権利は主張するようです。男たちも「俺には俺の仕事がある。分かってくれなどとは言わない」というふう。

日本の任侠映画などでは「先代の未亡人」など、最初から手を出してはいけない相手に男が勝手に惚れて、黙って命を投げ出す。女も「もしかして」と思いながら、彼を受け入れるようなことはほのめかしもしない(するとロマンポルノになってしまう) 女性キャラクターを見ながら、ちょっと彼我の違いを思いました。

女性とのメロドラマ部分は、そういうわけで女性に言うべきことをしっかり言わせておりますが、中だるみするというほど「尺」を割いておらず、いいバランスだと思います。最近の映画・ドラマは女性パートに時間を取り過ぎて、男のドラマが水をさされた感じになるので、このくらいがいいです。

ワイアットの兄ちゃんの嫁さん、対戦相手のお母さんも非常にいいキャスティング、いい演技、撮り方・つなぎ方で、女性の使いどころが本当に上手いです。ドクとケイトの対決シーンは、ドクにとってむしろ最大の見せ場といってもいいくらいですし。


「明日は決戦」という夜の、ワイアットの高揚のなさ。病身のドクの鬼気迫る上目遣い。「せめて人生でたった一人の友人と一緒に死なせてくれ」 互いが注いだ盃を無言で干す男たち。

西部劇というのはドンパチが主眼で、もっと荒唐無稽なものだと思っていましたごめんなさい。

この作品は、兄弟愛・親子愛・男女のせめぎ合い・仕事への責任・ギャップのある男同士の友情・悪者なりの人間性まで、あらゆる人間模様をあますところなく、くどくなり過ぎず、描ききっていると思います。史実そっちのけでドラマ寄りなわけですが、この監督の『大脱走』でも見られた群像劇の上手さなのでしょう。

音楽はクラシックバレエの伴奏音楽を思わせる品の良さがあり、気持ちよく場面に入っていくことができました。ワイアット弟が倒れてからの長回しは胸がつまります。演技力のある役者を二人そろえて監督冥利……だと思うんだけど、監督には監督の言いたいことがあったみたい。


よく考えるとなんでワイアットとドクが仲良くなるのか分からんのですが、理髪店を我が物顔に利用してドレスアップしつつ良くしゃべる賭博師に、真面目一徹の保安官がおもしろさを感じた……ということでよろしいでしょうか。


見るからにかっこいいジャケット(*´∀`)つ Gunfight at the O.K. Corral