2014/01/04

2001年『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』

スカパーで見ました。バッシングされ続けたクレしんも、最早お正月休暇を埋める定番あつかいの模様。
「奴ら、俺の魂に傷をつけやがった」
89分の密度の濃さ。何度見てもカッコいいし、面白いし、泣けますね。

20世紀博の正面ゲートに次々とぶつかって山積みになるスバル360という表現は、実車で台数をそろえることは大変だし、スタントが危険すぎるし……というので「実写作品の中でそこだけCG」だったら興ざめなんですけれども、最初から最後までセルアニメだったら、こんなに面白い。

お話を語ることに絵が従属しているタイプのアニメはあまり好きじゃなく、これは「アニメでしかできない方法で、絵が語っている」ところが好きです。個人的には『カリオストロの城』より『名探偵ホームズ』(ナウシカ併映版)を思い出す事が多いです。

「家族のいる幸せを味わわせてやりたい」という言葉に血相を変えたチャコさんに、どんな事情があるのか、大人には「あるいは……」と推測できるけれども、子供は理解できなくてもいいことになっている。説明しすぎの台詞が多い作品に比べて、まさに大人の仕事というべきでしょう。

……TVアニメの多くが、説明的なセリフが多くて、そのぶんテンポが悪いのは、子供に分からせるためで、もともと子供に分からせるために作ってるんだから、それでいいのです。奴らはちょっと「お話がむずかしい」と感じると、とたんに興味をなくすので、確かに説明が必要なのです。

これはだから、1959年生まれの監督が同世代の男性に向けて放った作品とは今さら言うまでもないのですけども、15億円の興行収入のどれほどを、実際にファミリー(を連れた男性)が担ったのでしょうか。

初公開時の2001年4月に野原ひろしと同じ満35歳だった男性は、1965年か1966年の生まれで、就職した頃はバブルで良かったけれども、ちょうど長男が生まれた30歳の頃(1995年頃)から後が大変だった……という人たち。1970年の大阪万博の年には、ちょうど5歳だったので、しんのすけが「とうちゃん、おうちへ帰ろう」と声をかける相手の、あの少年が、しんのすけと同じ5歳のひろしでもあり、全国のとうちゃん達でもある。

「とうちゃんは、とうちゃんなんだよ」

(泣けてきた)

この人たちは5年後の1975年頃には10歳なので、ちびまる子ちゃん達と同時代を生き、「ヤマトは見たけど、ちょっとむずかしかった」くらいでしょうか。ガンダム放映とカリ城公開の1979年には、14歳。ガンダム映画版第一作公開年には、16歳。劇場へ行って見たかな?

なお、テレビアニメ版のしんちゃんが始まった1992年に35歳だったとうちゃん達は、1970年代前半に中学生時代を過ごしており、このとき『少年ジャンプ』誌上では『ハレンチ学園』を連載中だったので、「あの頃の少年漫画は刺激的で面白かったな」という印象を持っている人がいるとしたら、当然ではあります。

テレビ版は、すぐに「子供が真似をして困る」という声が挙がったようですが、翌年に公開された映画版第一作は、シリーズ最高額の興行成績を上げており、子供が一人で映画館へ行ったわけはなく、ひろしが運転する車で海岸へレジャーに出かける話でしたが、同様に女房子供を映画館へ連れて行き、入場料の支払いを担当したとうちゃん達が、初期の人気を支えたことになるでしょう。(だいたいにおいて)

しんちゃんアニメ版も、だから今年で22年目になります。「最近のアニメ」なんて思ってると、一旦おとなになってしまった者にとっては、20年なんて「あっ」という間です。

やや脱線すれば、この20年の間にマンガ・アニメは美青年軍団のようなものがもてはやされるようになり、まるで様変わりしたようにも思えますが、「少年漫画にあの頃と同じハレンチ(な女性美)を取り戻そう」という主張は……ちょっと、もう受け入れられないでしょう。もっとも、子供の喜びそうな下品なジョークや刺激的な女性美が全く描かれなくなったわけではなく、というか今でも充分にアレですが、これを「好みに合わない」と言われては、もう致し方ない。

チャコさんは、面長の美人で、普段のしんのすけのアイドルであるナナコおねいさんも面長・切れ長な美人なので、これは、とうちゃん達の好みでもあるのかもしれません。私も好きです。

この20年が何だったかといえば「就職氷河期 SINCE 1993」だったわけで、かなり多くの人が自由業として生きる道を選んだはずです。1967年から1974年まで、出生数が非常に多い時期が続きました。2001年には、この人たちは30歳前後。シリーズ最後のセルアニメ映画となったこの『オトナ帝国』には、原画などに多数の日本人が起用されており、そのすべての方々の経歴を確認することは私にはできませんが、主力を担ったかもしれません。

「魂」に傷がつくシーン、カーチェイスシーン、しんのすけがタワーの階段を駆け上がるシーン……セルの枚数の多いことは、素人にも容易にうかがい知れます。続く『戦国大合戦』の合戦描写には「やられた!」と開いた口がふさがらない思いをしましたが……しんちゃん自身の活躍ぶりと、テーマ性と、「手描き」の底力という点で、こちらのほうがわずかに格上でしょうか。