記事一覧

見もせぬ人や花の友、見もせぬ人や花の友。

雲を集める不二の山の麓の春は光に満ちて、高い梢にこぶしと桃が、低い地際には水仙が咲いております。この国は人心を和らげる美を備えております。災害も多いですけれども、海があるから悪い、山があるから悪いという人もあまりおりません。日々を生きる人心は偏狭で、恨みがましく、詮索好きです。噂を立てられることは義経でさえ恐れました。が、花が咲けば、見もせぬ人(今まで会ったことのない人)も友となるのです。花も咲か...

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1989年5月、佐伯彰一『神道のこころ』

あはれともかけても見めや桜花なれより先に我はちるとも(本居宣長)梅が咲き、梅が散り、桃が咲いて桃が散り、こぶしが白く咲いて、雪柳が揺れ、桜の待たれる季節となりました。読んだのは1992年の中公文庫版。もとは日本教文社から出ていたようです。信仰告白というのか。越中、立山の神道の家に発して、それを愧じた青年期を愧じ、異文化との接触を経て、しきしまのやまと心に立ち返り、志賀直哉の主人公の眼を通じて大山の影を...

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1925年、エイゼンシュテイン『戦艦ポチョムキン』

兄弟よ! 誰を撃つのか!おかげさまで100円レンタルで映画を観て幸せです。庶民が安価に芸術に触れられることこそ真の革命ではないかと思われます。わずか1時間14分ほどですが、映像美術としての密度がものっっすごく濃いです。グリフィス作品のカメラは基本的に長廻しで、俳優の動きにまかせており、まだ『イントレランス』でも接写の挿入の間合いに難があったんですけれども、こちらはたいへん意図的に「カット割り」と編集作業...

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1967年、石ノ森章太郎『ジュン 1』ポット出版

これもポット出版の目録を見て取り寄せてみました。まさかのハードカバー。約340頁。物理的に重いです。A5版。漫画はこのくらいの大きさで読みたいものです。2011年9月、第一版第一刷。紙質が良く、印刷も美しいです。>本書は「COM」(虫プロ商事)1967年1月号~1969年2月号に連載された「章太郎のファンタジーワールド ジュン」を一冊にまとめた。だそうです。昭和42年度小学館漫画賞受賞作。作者は1938年1月生まれ。執筆...

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1916年、D.W.グリフィス『イントレランス』

Out of the cradle endlessly rocking.不寛容と闘う愛の物語。今では撮れない映画って一杯あるんでしょうけれども、これは……! 『國民の創生』とは別の意味で、筆頭に挙げるべきかもしれない。バビロンもすごかったけど、「暗黒の木曜日」を経験する前のアメリカもすごかった。高さ90メートルの壁に囲まれた宏大な中庭を一望する絵をどうやって撮ったんだ!? 呆然とすることしばし。淀川長治の解説映像つきのDVDで、まずは自分...

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1915年、D.W.グリフィス『國民の創生』

美しい女性は美しい少年に似ていると云ったのは稲垣足穂なんですが、リリアン・ギッシュの妖艶さが却って崇高な天使に見えます。ドナテッロやレオナルドに見せてやりたかった。近所のホームセンターで買いました。株式会社コスミック出版から500円。何よりも、リリアン・ギッシュ主演の文字に惹かれました。堂々3時間5分。サイレント。映像の合間に黒地に白い文字で説明書きが表示される式です。日本語字幕が良い出来です。翻訳...

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1939年、溝口健二『残菊物語』

原作:村松梢風出演:花柳章太郎、森赫子、高田浩吉監督:溝口健二これが溝口作品かァ……。清冽な余韻にひたることしばし。役者を信じた長廻し、やや窃視的な斜めからの構図、フェードアウトによる上品な場面転換。梨園の御曹司と下働きの女性との身分違いの恋が、哀切ながらもややご都合主義なエンディングを迎えるメロドラマですが、撮り方の見事さに「締まりが良い」と感じました。溝口自身が父親を当てにできず、芸者となった姉...

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1977年、スティーヴン・スピルバーグ『未知との遭遇』

『さらば宇宙戦艦ヤマト』が洋画・邦画を問わず配給収入を比較して第5位だった1978年の、第2位。真っ暗な画面に不安な音楽が流れる冒頭からして大作の雰囲気。砂嵐を突いて次々と現れる自動車、いわくありげな男たち。「スピルバーグって奴ァセンスいいなァ!」と思ったことです。基本にあるのは、カントリーな暮らしを長い息遣いで丁寧に撮るヒューマンドラマと、ひたひたと緊迫感を増していくサイコ・ホラーの手法で、こちらは...

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同人活動を自慢したがる人には困るのです。

同人はライバルが増えやすいので、脊髄反射クレームしないように気をつけましょうというお話。男性の同人さんも気をつけましょう。同人誌即売会というところは、出展に当たって資格審査がありません。でも会場のキャパシティには限りがあるので、出展希望者が多ければ抽選となります。したがって、注目されればされるほど、個々の出展機会が減ります。だから昔の参加者は、若い人に向かって「足が洗えなくなるからやめておけ」と云...

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1977年、ジョージ・ルーカス『スターウォーズ』

ピーター・カッシングとアレック・ギネスを直接対決させたかった……。ライトセイバーは一振り欲しいですが、撮影現場には日本から殺陣師を送り込みたいです。『さらば宇宙戦艦ヤマト』が公開された年(1978年)の配給収入第一位(四十四億円)がこの作品なのだそうで、劇場公開を観た記憶もあるので思い入れはあるんですが、あらためて観てみると荒っぽいですなァ!セットと特撮とCGがすごいから観ていられるんですが、もし見慣れ...

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1953年、阿部豊『戦艦大和』

総指揮:田邊宗英監督:阿部豊原作:吉田満『戦艦大和の最期』(創元社)脚本:八住利雄教導:能村次郎(元「大和」副長)美術:進藤誠吾音楽:芥川也寸志出演:藤田進、舟橋元、高田稔、佐々木孝丸守るも攻むるも黒鐵の、浮かべる城ぞ頼みなる。浮かべるその城、日の本の皇國の四方を守るべし。九州徳之島の西方、二十浬。水深、四百三十メートル。昭和二十年四月七日、午後二時二十分。戦艦大和、ここに轟沈す。緊密な1時間40分4...

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二次創作に親しんでも、構成の勉強にはならないのです。

「組み合わせ」だけではお話が進まない、というお話。プロになりたい人は気をつけましょう。2012年度のNHK大河ドラマ『平清盛』は、その前年の夏から撮影に入っていますから、企画が練られ、脚本に着手されたのは、その数か月前の春。つまり東日本大震災がスタッフにも巨大な精神的インパクトを与えた中で制作されたのです。誰もが「自分はなぜ生きているのか。ドラマやってていいのか」と思い悩み、苦しんだことでしょう。その...

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漫画同人会と個人の混同。

漫画と小説を同じ名前で呼んで混同することによって、同人が将来の道を踏み誤ってしまう、というお話。漫画家になりたい人は漫画を描きましょう。「漫画を原作とするテレビアニメを素材とするパロディ作品という特殊な創作物を同人誌即売会という催事に出品する」という活動は、ひとつ決定的な弊害を生みました。いえ、著作権問題ではありません。それは話し合いで解決が可能です。社会問題として、もっと重要なのは「小説を出品す...

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萩尾望都を読んでも、アニパロは生まれないのです。

同じ名前で呼んだことによって、漫画と小説が混同されているというお話。【1.漫画とアニメの混同】漫画を読んで感動した人は、漫画のパロディを描けば良いことです。萩尾望都『ポーの一族』を読んで、エドガーとメリーベルとアランの3点バランスではなく、エドガーとアランが恋人同士だったら、なお一層「印象的」だな、と思って構いません。本人の発想の自由です。でも、アニメキャラクターを利用するのは、また別のアイディア...

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同人・BL論の意図と、日本の研究者の難点。

当ブログの同人論・BL論は、もともと研究者に向かって、研究の基本姿勢を問い直すものです。ひらたくいうと「大学の先生のくせに、言ってることがおかしい」と指摘するものです。「同人活動を禁止させろ」と言っているのではなく、同人に突撃インタビューしているのでもありません。にもかかわらず、同人活動経験者が被害妄想にかられて、自己弁護するつもりで暴露話を始めてしまい、「語るに落ちる」ということが時々あるので困...

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2016年、NHK『真田丸』第7回「奪回」

奪回ならずw ああいうおばあちゃんになりたいです。昨年から三谷脚本と聴いて期待しつつも、取りまぎれて一回も視聴していなかったのですが、やっと時間が取れました。機器操作上の手違いで、まず最初に第7回を始めてしまったので、そのまま拝見しました。ホッとしました。『黄金の日々』や『獅子の時代』の頃の大河ドラマがデジタル技術でブラッシュアップされて戻ってきたという思いが致します。大河ドラマは、じつは昔っから...

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1977年、西崎義展『宇宙戦艦ヤマト』

無限に広がる大宇宙。1974年10月6日、日曜夜7時半。地球は突如として滅亡の危機に瀕してしまったわけですが、日本アニメ界の作画力は極致に達していたようです。手描きなのです。すべて人間が、日本人が、手で描いて、手で彩色していたのです。個人用コンピュータなど想像もつかない時代だったのです。開始まもなく沖田艦が回頭するとか、ドメル軍空母の飛行甲板が反転して砲台が出現するとか、手書きの巨大戦艦が垂直方向に半回転...

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2015年、牧村康正・山田哲久『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』講談社

この国には、西崎義展という男がいたのです。役者見るよないい男で、絵に描いたようなワンマンで、浪費家で、ケチで、度胸がよくて、寂しがりやで、自分本位で、面倒見がよくて、男惚れされて、殺されてもおかしくないほど憎まれて、クラシックとジャズを理解し、演歌の興行を打ち、アニメにはズブの素人で、だからこそ最高のアニメ映画を作ることのできた男がいたのです。「この企画は西崎の制作助手を六年間にわたってつとめた山...

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2002年、ポット出版『「オカマ」は差別か』伏見憲明ほか

副題:『週間金曜日』の「差別表現」事件。季節の変わり目らしく片付け物をしたら、ポット出版の目録が出てきたもんですから、取り寄せてみました。「差別か」というんだから、「いや差別ではない」という反語を含んでるですな。「オカマは差別だ」というなら話がシンプルなわけですが、これは一見すると「そのようなクレームに対してメディアの自治を主張し返し、対話の通路を開く」という話。初版2500部。崖っぷちでがんばるポッ...

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【ルサンチマン同人】【BLの本質】【BLの自戒】【明日のために】

以下は以前に用いていたカテゴリ名ですが、「同人・BL論」として発表年順に編成し直しましたので、カテゴリ名としては表示されなくなったものです。けれども、基本理念としてご一読頂けますれば幸いにございます。【ルサンチマン同人】一時期「同人誌即売会」に出展していたのに、人気をなくして、不良在庫と赤字を抱えて撤退し、今でも同人の世界全体に対して恨みを持っている人。「同人」という言葉を眼にしただけで興奮してし...

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2010年7月、堀切和雅『なぜ友は死に俺は生きたのか』新潮社

副題:戦中派たちが歩んだ戦後。ああ、これはなんと危うい瀬戸際なのだ、無言のまま、彼らは去っていこうとしている。なぜ彼らが無言なのか、人々が考えもしないうちに。(p.183)この国の夏は鎮魂の季節です。「終戦」後55年の節目に合わせて刊行されたように思われます。カバーには法政大学壮行会後の行進(昭和18年10月15日)のセピア色の写真が掲げられています。約190頁。ポイント数が大きく、読みやすいハードカバーです。筆...

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。