28, 2016
2015年9月、海道龍一朗『室町耽美抄 花鏡』講談社

雪を廻らす花の袖。至福の約400頁。誰よりも海道龍一朗その人の創作の美学と作法を拝見した思いがいたします。膨大な量の参考文献の行間へ、深々と切り降ろされた「作家の想像力」という太刀の筋目の正しさよ。輝き出たのは師を信じ、未来をまっすぐに見つめる若者たちの双眸でした。作家自身の人間理解の誠実さに、全幅の信頼を置いて読み進めることができます。いまどき珍しいハードカバー。装丁が美しく、講談社の肩の入れよう...

2015年9月、海道龍一朗『室町耽美抄 花鏡』講談社

 28, 2016   -

 27, 2016
1972年、佐伯清『昭和残侠伝 破れ傘』

脚本:村尾昭、撮影:飯村雅彦、編集:田中修花は風を誘い、風は花を慕い、雪を廻らす大侠客の袖はひるがえって、日本の男の美学に筋目を通しました。このあと高倉・池部とも任侠映画には(ほとんど)出なくなるので、貴重な記録映像ともいえるかもしれません。第9作。集大成の品格を得ました。取った取られたの抗争の連続に恋の悲劇を重ねて、コメディリリーフによる中だるみ感を排除した徹底的ハードボイルドタッチ。複雑な対立...

1972年、佐伯清『昭和残侠伝 破れ傘』

 27, 2016   -

 26, 2016
1971年、佐伯清『昭和残侠伝 吼えろ唐獅子』

脚本:村尾昭、撮影:星島一郎、編集:田中修ご丁寧なお言葉、お心うちは、たいてい汲み取りましてござんす。シリーズ第8弾。鶴田浩二が美しかったことです。鶴田のプロフィールもウィキペさんで読むと相当おもしろいですが、もちろん書き写すわけには参りません。地道に映画感想文。ベタに男好きな佐伯監督が復活して、予告篇にあったような「集大成」というよりは、やくざ本来のやり口のえげつなさを強調した、むしろ特殊な回な...

1971年、佐伯清『昭和残侠伝 吼えろ唐獅子』

 26, 2016   -

 25, 2016
1970年、マキノ雅弘『昭和残侠伝 死んでもらいます』

脚本:大和久守正 撮影:林七郎・清水政郎 編集:田中修シリーズ第7弾。タイトルがすこぶる物騒なわりに、溝口映画かと云いたいほどの人情「世話場」路線。高倉の美しい顔を汚した今さらな写実主義と設定変更に戸惑うことしばし。渡世人どうしがおなじ星のもとに生まれ、おなじ屋根の下に暮らす夢はかなったようで、よかったね重さんと云ってやりたくなることですが……思うにマキノ監督は、もともと社会派リアリズム路線であって...

1970年、マキノ雅弘『昭和残侠伝 死んでもらいます』

 25, 2016   -

 22, 2016
1969年11月、山下耕作『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』

脚本:神波史男・長田紀生 撮影:林七郎 編集:田中修お前とだけは、仇どうしにゃなりたくねェな。シリーズ第6弾。名匠マキノ雅弘って本当は写実性重視の社会派人情路線(小津・溝口みたいの)で、男同士のなんとやらってあんまり好きじゃないよね……とこう、名匠には違いない泰然たる語り口に感心しつつも消化不良感はあったもんですから、監督替わって、ああ良かった。ここまでシリーズつきあって良かった(涙)山下監督は1930...

1969年11月、山下耕作『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』

 22, 2016   -

 21, 2016
1969年3月、マキノ雅弘『昭和残任伝 唐獅子仁義』

流れ流れの旅寝の空で 義理に絡んだ白刃の出入り。第5弾。冒頭のフェティッシュな血まみれクローズアップが良い。瑞々しい撮影は坪井誠。役名とキャスティング、採石場という舞台設定に「セルフ・カバー」の要素を持たせて、ファンサービスしつつ、藤純子の魅力を活かした女性映画の要素も加えつつ、若手にも個性的な役柄を与えて、二部構成状態にもなっておらず、まとまりの良い一本だと思います。監督(1908年、京都生まれ)は、...

1969年3月、マキノ雅弘『昭和残任伝 唐獅子仁義』

 21, 2016   -

 20, 2016
1967年7月、マキノ雅弘『昭和残侠伝 血染の唐獅子』

脚本:鈴木則文・鳥居元宏 撮影:星島一郎 男同士が誓ったからは 死んでくれよと二つの笑顔。……と云いながら、あんまり男が好きではないマキノ監督。健&純子の可愛らしさには吹きました。何度でもやり直すがいいです。シリーズ第4弾。メインキャラクターは第2作で登場した花田秀次郎と、第1作で見事な「軒下の仁義」を切った風間重吉。悪役は第3弾から河津清三郎の連投で、もはや二次創作。第1作において、真の「残侠」は、風...

1967年7月、マキノ雅弘『昭和残侠伝 血染の唐獅子』

 20, 2016   -

 19, 2016
1966年7月、佐伯清『昭和残侠伝 一匹狼』

死を覚悟して母を想う男の花道には、松と白波がよく似合う。信じた道を進む先に待っていたのは、もう一匹の狼でした。これは海岸でロケハンした絵の良さが出色。賭場を真上から撮った絵や、壷のクローズアップと、女優の演技力を信じた長廻しの両立もいいわけですが、物語は藤純子が出てくる前と後で事実上の二部構成になってしまっており、1月の『唐獅子牡丹』から引き続いて、二枚看板の難しさに脚本も悩んでいたのかもしれませ...

1966年7月、佐伯清『昭和残侠伝 一匹狼』

 19, 2016   -

 18, 2016
1966年1月、佐伯清『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』

脚本:山本英明・松本功、編集:長沢嘉喜。とんだ不器用もあったもので、過密撮影スケジュールを全力でさばく残侠は、映画斜陽化時代に咲いた血の色の花でした。シリーズ第2弾。舞台は浅草を出て宇都宮。時代もさかのぼって昭和5年。石切場で大ロケーション敢行。同じ役者が敵になったり味方になったりするので、大衆演劇の一座に通ってるみたいで楽しいです。戦前の浅草には芝居小屋や映画館が一杯並んでいたのだそうですが、まっ...

1966年1月、佐伯清『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』

 18, 2016   -

 15, 2016
1965年10月、佐伯清『昭和残侠伝』

ろくでなしよと、夜風が哂う。東京オリンピック大成功・カラーテレビ大普及の翌年の世に問う、浅草復興の暗部の実録ふう。残侠伝シリーズ第一作。どういうスケジュールで撮影してるんだと呆れつつ。戦後日本も若かったが、俳優たちも若かった。シリーズが若かった。熟成される前のアルコール臭の強い酒みたいで、そこがいいです。美術・照明・撮影・編集などの仕事ぶりはベテラン。舞台は「昭和二十一年頃」の闇市……じゃなくて、堅...

1965年10月、佐伯清『昭和残侠伝』

 15, 2016   -

 14, 2016
1965年4月、石井輝男『網走番外地』

原作:伊藤 一、脚本:石井輝男、音楽:八木正夫、編集:鈴木 寛 とてつもなく密度の濃い約1時間30分。あえてモノクロ。見た後で気分が暗くなるようなプロレタリア文芸調だと思って敬遠していたのですが、やられました。総じて日本映画は同時期の海外作品に比べてレベルが高いと思ってるんですけれども、これは計測器の針がレッドゾーン超えて吹っ切れた感。映像的美学、日本的「語り」芸の面白さ、エイゼンシュテインの時代に...

1965年4月、石井輝男『網走番外地』

 14, 2016   -

 13, 2016
1970年、佐藤純彌『最後の特攻隊』

人間は、兵器ではありません。誰も死にたくはなかったのです。だからこそ、これだけ悩んだのです。喜んで死にに行ったと思ってはならないのです。『野生の証明』の佐藤純彌の仕事を確かめようと思ったのと、高倉健の名に惹かれたのですが、奥歯の(食いしばるあまり)痛くなるような、腹の据わった実録風でした。オープニングはすべて本物の記録映像。1970年から戦後日本の来た道をふりかえる形で。ラストシーンは極東軍事裁判。も...

1970年、佐藤純彌『最後の特攻隊』

 13, 2016   -

 12, 2016
1943年3月、黒澤明『姿三四郎』

『戦艦大和』から藤田進つながりで黒澤明第一回監督作品。凛冽たり明治。日本が若かった時代を背景に、役者も若かったが黒澤も若かった。冒頭から登場人物=観客の目線を意識したカメラ移動の斬新さに呆気に取られることしばし。下駄で月日の経過を表したり、主人公の内面の変化を蓮花で象徴させたところなど、『ジュン』が漫画で描いた詩なら、こちらは映像で描いた詩かもしれません。詩という言葉も日本じゃ誤解されやすいのです...

1943年3月、黒澤明『姿三四郎』

 12, 2016   -

 11, 2016
1978年、角川春樹・佐藤純彌『野生の証明』

「自分はただの、平凡な市民です」2時間23分。『さらば宇宙戦艦ヤマト』が洋画・邦画あわせた配給収入第5位だった1978年の第4位。約22億円。『西崎義展の狂気』(講談社)が、同時期の型やぶりプロデューサーとして角川春樹を紹介していまして、その宣伝戦略のすごさに言及していたのですが、当時、身をもって経験しました。おとーーさーーん、怖いよーー。テレビを点ければ聞こえたものです。……あれ? 映画冒頭の立てこもり事件...

1978年、角川春樹・佐藤純彌『野生の証明』

 11, 2016   -

 08, 2016
1977年、ルイス・ギルバート『007 私を愛したスパイ』

むかーーし、ソ連という国があったのです。マイクロソフトではなく、マイクロフィルムの時代でした。いま、レーニンの遺体はどうなってるんでしょう。『さらば宇宙戦艦ヤマト』が公開された1978年の洋画・邦画合わせた配給収入ランキング第3位。約32億円。SF全盛時代に、七つの海の覇者が意地と洒落っけを見せました。デタント時代のソヴィエト・アングロ・コーポレイション。見せ場盛り沢山で飽きない2時間5分。ショーン・コネ...

1977年、ルイス・ギルバート『007 私を愛したスパイ』

 08, 2016   -