2014年、吉岡友治『その言葉だと何も言っていないのと同じです!』

  19, 2016 10:20
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副題:「自分の考え」を論理的に伝える技術。

啓発書・実用書も数あれど、ちょっと珍しいくらい密度の濃い本です。

「断固たる決意で臨む」「組織一丸となって」「一人ひとりができることをする」……他人を説得するつもりで、ついつい使ってしまいがちな定型句が、いかに内容空虚かつ危険な思い込みに満ちているか、こてんぱんにやっつけて参ります。

ビジネス書という位置づけで、サラリーマン上司と部下の会話をイメージさせてるんですが、創作者を含めて文章を書く人は必読だと思われます。

細かく章立てされ、冒頭に生々しい会話分の形でダメ定型句の具体例を示し、本文の序盤において太字で基調を述べ、続けてその根拠を論理展開し、章の終わりに箇条書きで「まとめ」として結論を記す。

>「論理展開」は難しくない。最初に述べた理由を詳しくわかりやすく言い換えていき、自分の言いたい結論につなげるだけだからだ。(p.182)

歯切れの良い文章、および本書の構成自体が正しい言葉の使い方の例示になっております。

著者は東大文学部出で、予備校の国語講師。小論文メソッドを確立し、学生・ビジネスマンの文章を何千何万と添削してきた、のだそうです。

白眉は第四章(「自分の考え」を論理的に伝える技術)で、じゃあ実際にダメ定型句を使わずに説得力のある文章を書くには何をすればよいか、惜しげもなくさらけ出してくれています。

基本的によけいなことを一切いわない硬派な文章なのですが、全編に言葉遊びとアイロニーの痛快さが満ちており、著者の経歴をあらためて(奥付で)確かめてみると、専攻は演劇と文学理論。なるほど。きっと風刺のきいた現代劇がお得意なのでしょう。離見の見もここに極まれりといったところです。

筒井康隆がラジオ出演したとき、ラジオ業界の「特殊な自意識」に驚倒した話や、室生犀星の微妙に貧乏くさい自慢話を皮肉るかのようなエピソードを伊丹十三が紹介していたなんていう、こぼれ話の選定ぶりも魅力的です。

全頁を引用したいくらいですが、そうもいかないので日本実業出版社から税別1400円です。A5ソフトカバー、230頁。軽くて手に持ちやすく、文字も大きく読みやすいです。

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