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1967年7月、マキノ雅弘『昭和残侠伝 血染の唐獅子』

脚本:鈴木則文・鳥居元宏 撮影:星島一郎 

男同士が誓ったからは 死んでくれよと二つの笑顔。

……と云いながら、あんまり男が好きではないマキノ監督。健&純子の可愛らしさには吹きました。何度でもやり直すがいいです。

シリーズ第4弾。メインキャラクターは第2作で登場した花田秀次郎と、第1作で見事な「軒下の仁義」を切った風間重吉。悪役は第3弾から河津清三郎の連投で、もはや二次創作。

第1作において、真の「残侠」は、風間だったのです。清次は気風のいい若いので、神津組4代目に気に入られていた。それが戦争へ行って、もっと根性つけて帰ってきた。でも本人は「もうヤクザの時代じゃねェな」と思っている。わりと簡単に廃業するっていう。

いっぽうで、交通の便が良くなかった時代に、東京からはだいぶ外れていると云わざるを得ない宇都宮に残された、江戸時代以来の侠客の作法と心意気を背負っていたのは、風間重吉だったのです。

それを見抜いて、二枚看板の一方として、大きな比重を与え、シリーズ化の道を開いた功績は大……ですけれども、秀さんは堅気? 堅気なんですか?

そりゃ火事と喧嘩は江戸の花ですけども。この路線変更は製作陣の思惑か、監督の好みか、脚本家の一存か。ウィキペさんで読めば一目瞭然ってのも色気がないので、いろいろと勘ぐるわけです。

ゆったりと視野の広い画面に、浅草に生きる堅気衆の姿を取り込んで、メインキャラクター達の芝居の後ろに職人歌や祭囃子を流し、江戸情緒の再現に成功しているのは監督の持ち味なのでしょう。溝口健二『残菊物語』が直ちに想起されるところです。

津川も藤も山城も、おっかさん達も、すごくいいキャラクターと芝居で、心に残る人々ですが、明らかに「残侠」というテーマではなく、ふつうに世話物・人情時代劇になっちゃってるわけで、喜劇風味でもありますし、名匠マキノは名匠なんだけれども、畑違いの名匠じゃないかって気も致します。

流し目に色気を含ませる池部の芝居は、思うに新派を通じて歌舞伎から受け継いだ二枚目の型で、根が社会派リアリズム路線の監督は、それを「もう古い」と思っている。わざと池部の見せ場をフレームから外してるようなところがあって、でも池部はもともと抑えた芝居のできる人なので、愛の鞭に耐えて、よく勤めているというように思われます。

若手と女優に尺を取ったぶん、高倉の出番も少なくなってるんですけれども、こちらはもともと直球勝負な俳優の持ち味に合わせた脚本が用意されていたのでしょうし、期待通りに全力投球しているわけで、すごくいい顔をします。ただし、振り返りざまにその表情が一瞬見えるという撮り方で、どの役者に対しても、この監督のカメラは寄って行かないのです。

舞台劇の中継を拝見しているみたいで、独特の面白さがありますが、不思議といえば不思議な映画話法だと思います。

とまれ、女の侠気と、それをしっかり受けとめた秀次郎の引き締まった顔には泣かされました。

花田と風間は敵どうしではなく、最初から親友として演じるのは俳優たちにとっても気分がいいようで、肩の力が抜けているように思われます。街並みを再現した大掛かりなセットを活用した道行も、第3弾の海岸ロケとはまた別の映画的豪華さだったと思います。

今回の獲物は白鞘ではなく、拵えつきでした。やっぱり普通に時代劇やりたかったんじゃないかな、と……。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。