1972年、佐伯清『昭和残侠伝 破れ傘』

  27, 2016 10:20
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脚本:村尾昭、撮影:飯村雅彦、編集:田中修

花は風を誘い、風は花を慕い、雪を廻らす大侠客の袖はひるがえって、日本の男の美学に筋目を通しました。

このあと高倉・池部とも任侠映画には(ほとんど)出なくなるので、貴重な記録映像ともいえるかもしれません。

第9作。集大成の品格を得ました。取った取られたの抗争の連続に恋の悲劇を重ねて、コメディリリーフによる中だるみ感を排除した徹底的ハードボイルドタッチ。複雑な対立の構図が少しずつ見えてくる経過に伏線を張った、今までで一番うまい脚本だったと思います。画面にも上質な広がり感が出ました。

長らく不動だった照明さんと美術さんが変更になりましたが、道行は旧作名場面のありがたい再現となり、たいへん美しかったです。

出演者は親分衆以下、シリーズおなじみ俳優さん達の勢ぞろいで楽しいです。熊さん、出世なさいましたね。待田京介もいい具合に老けました。

天神浜チャリティ花会から始まる義理と人情のしがらみ続き。やくざ本来のえげつなさをきちんと(ってのも変ですが)描けており、どいつもこいつも意地を張るところを間違えてるかのような不器用な渡世っぷりは、じゃっかんの皮肉が感じられないこともなく、あるいは書いてる人がクレバー過ぎるのかもしれません。背景事情を台詞で説明しちゃうのは、癖のようです。

北島三郎が、まともに芝居やってまして、誰だ? って訊きたいほど若いんですが、たいへん上手いです。それはドザえもんじゃなくて簀巻きw 高倉が彼の喉に聞き入って「バクチ下手だけど、歌うめェな」という顔に素で浮かぶ微笑は愛らしいです。

花田秀次郎は、売り出して長いですな。出所後に落ち着くところのない、生活に張り合いのない流れ者の悲哀を初めて描けたかと思います。顔に渋みが増したので、過去(の女性関係)のある役が決まることです。東宝の星由里子さん、大人の色気の中に可愛らしさのある、いい女優さんですね。佐伯監督は女優を静かに撮るところが好きです。

雪の似合う大侠客、鶴田浩二は貫禄が違いました。あの細面に高倉健が押されているように見える。どう考えても逆手に構えた匕首で長ドスと斬り合うのは最強です。

会津の若虎は、名にし負う残侠ぶり。相変わらず「昔の二枚目」という目線使いの芝居も決まることです。(ほめてます)

秀&重の人間関係は、藤純子が女の勝負を張った回がありましたが、秀次郎が焼き魚以外の据え膳を頂かない人なので、風間がコキュの哀愁を本当に背負うことはないわけで、男同士の対立の構図に恋を絡めるには、この形が最適なのかもしれません。河原ロケの風にひるがえる髪と裾がいいです。ここまで来て、さまざまに工夫してくださることです。

なんで今さら、悔いはない。

終盤の悲劇の高まりは雪に白く彩られて、血の色も鮮やかに切なく、殴りこみは二人の殺陣も、セットの構造を知り尽くした移動撮影も、枝越しの構図も最高だったと思います。

今回、風間も組を背負うことになったので、また新たな跡目争いでも起きない限り、寄せ場から帰ってきたら秀次郎が風間に草鞋を預けて長居することになるのでしょうか。戦後の世に残侠の心を伝えてほしいものです。

予告篇には高倉健直筆の久濶を詫びる手紙が表示されます。文面の端正さから俳優の素顔が役柄そのままであったことが偲ばれます。

みなさま、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

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