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1980年8月、舛田利雄『ヤマトよ永遠(とわ)に』

女性なるもの、我らを導く。

監督:舛田利雄、脚本:舛田利雄・山本英明・藤川桂介、美術設定:辻忠直、メカニックデザイン:辻忠直・板橋克己

劇場版第3弾。配給収入、約13億5000万円。ちょうど同じ頃に『銀河鉄道999』の劇場版があったはずで、機械化母星というのは同じ発想ですから、確かに松本零士が原案を出したのでしょう。女性キャラクターの活躍ぶりも西崎イズムよりは松本イズムのように思われます。

あるいは男性向けシリーズ作品は、序盤で男のロマンを描き尽してしまうので、だいたい3本目くらいで女性ドラマにシフトするのが一つの約束事なのかもしれません。

アニメファンの少女趣味は、今に始まったことじゃございませんで、1978年には宮崎駿『未来少年コナン』にラナ嬢、1979年には同監督『カリオストロの城』にクラリス姫が登場し、この1980年には、すでに伝説的な人気となっていたはずです。

2代目サーシャは森雪よりも頬がふっくらとして少女らしく、そんな時代の要請にも応えようとしている様子が見られます。

1978年の『さらば』公開後、テレビシリーズ第2弾と、テレビスペシャル版『新たなる旅立ち』をはさんで、作中では1年しか経ってないらしく、古代は見た目に歳くってませんが周囲の状況が変わっております。

死んだはずのキャラクターの使いまわしは、熱心なファンからの批判が根強いようですが、1960年代の実写映画もやってたことで……それより声優の使いまわしのほうが困るかもしれません。

仁侠映画で水島道太郎や中村竹弥や大木実や葉山良二や山本麟一が(わりと)いい役をやったり、徹底的な悪にまわったりしても別に気にならないことですが、おなじみ声優が別の役で起用されていると戸惑うのは不思議なものです。

「またどこかの異星人が攻めて来たのでしょうか」

アナライザー、ナイスつっこみ。無限に危険続きの大宇宙。

唐突な敵の物量作戦になす術もない 日本軍 日本人だらけの地球防衛軍。こんなこともあろうかと! はるか無限の彼方へ旅立つヤマトと、地球に残った人々による二面作戦。

堂々2時間半の大作で、映画オリジナルですが、まるでテレビ版ダイジェストみたいに早い展開で、ちょっと感情移入がむずかしいくらいの勢いでたたみかけます。女性ドラマに尺を取ったぶん、男性ドラマが割をくったような気もします。

アルフォン少尉は、方面軍司令官でありながら個人的取引を持ちかけちゃうわけで、この公私混同ぶりが西崎流か……

映像のほうは見事なもので、実写ばりのカメラワークは漫画家に采配できるものとは思われず、舛田節が冴え渡っているのでしょう。戦闘シーンも出色の切れ味の良さ。闇の向こうの二重銀河は呆然とするほどに美しく、川島和子のスキャットが最高に効果的。「劇場の大スクリーンで見たい」と思わせるアニメは、やはり得がたい傑作です。

人物については、松本零士のキャラクターを東映動画がアニメ化した絵の野暮ったさは幼な心にも感じていたのですが、これはとくに序盤の作画が甘くて損をしているように思います。舞台がヤマト艦内に移ってからは、語り口も、人物の顔も、グッと良くなります。

ヤマトそのものは、艦体が輝いてます。何が見たいって、出撃シーンを見たいわけで、今回は無重力の宇宙空間に広がっていく岩石が美しいです。

整備完璧なのに士官クラスだけ何も知らされていなかったらしく、 旧日本軍 地球防衛軍らしいところでしょうか。艦長は宇宙戦士訓練学校長から転出した山南さんです。あおった構図がカッコいいです。

かつては『スターウォーズ』に先行していたんですが、銃撃戦が増えたあたり、今度はこちらのほうが影響を受けているような気もします。でも航空戦・カートリッジ弾の発射から敵の被弾に至るシーンなど、海外特撮を上回る上手さだと思います。

人間ドラマも深みが増して、観客の年齢層が上がったことを意識したかと思われますが、SF戦争アニメでまさかの女性映画。女性ドラマ部分の出来は良いのですが、やっぱりちょっと気恥ずかしいですね。

これ以降のアニメでは、これをやっていないと思います。発想の根本はプロデューサーの現実の女性関係が大胆だったことかもしれませんが、かえってアニメは子供向けに作るほうが良いことがハッキリしたかもしれません。

【折衷案の悲しさ】

戦争の犠牲者をサーシャ一人に象徴させたので、情緒的な高揚感は美しく、声優たちが収録中に本当に泣いてしまったというのも良いエピソードです。

ただし、脚本が何人かの折衷案なので、つじつまは合わなくなってしまっております。

松本零士には『999』と同じ機械化母星のアイディアがあったに違いなく、独裁者が国民を機械部品として星の構造体に組み込んでしまっているという世界観を持っていたのでしょう。

ヤマトに向かって飛んできたミサイルは住民たちの特攻です。だから彼らの「こんな戦いを終わらせてくれ」という心の声が聞こえてくるのが本当です。

それが描かれていない以上、古代進はサーシャ以前に「あの星にも大勢の非戦闘員が暮らしているはずだ」と悩まなければならない。彼はガミラス戦のときに「報復合戦は無意味だ」という後悔を経験しているわけですから。

脚本には仁侠映画をやっていた人が含まれているわけですが、星と星との全面戦争ではなく、ちょうど任侠映画のように、せまい人間関係の話になってしまっているように思われます。

仁侠映画であれば、女子どものいない所で、十数人の子分を斬って、親分にとどめをさしたところで終わるわけですが、星対星の全面戦争なら、七十億人の非戦闘員を巻き込んだ大虐殺ということです。

だから相手の星全体が悪意を持っているのか、総統個人が異常人格の独裁者なのかを見極めるのが本当です。

本来は特殊チームを組織して潜入させ、総統を暗殺し、起爆装置を無効化して、和平の道を探るということであるべきです。でも、もちろんそれではヤマト(の波動砲)の出番がない。しかし、撃てばいいってもんでもない。

『さらば』では、かろうじてこの辺りに配慮した、納得のいく物語になっておりましたし、『新たなる旅立ち』においては、古代進が頼もしく成長した姿を見せてくれたんですが、ここへ来てまた熱血単細胞に戻ってしまっており、これは脚本陣の誰のアイディアだったのか、プロデューサーの思いつきだったのか。

古代守というキャラクターも、第1作において弟よりも先に観客の前に登場した人物で、思い入れの強いファンも大勢いたはずですが、勿体なかったと思います。

似たような話を何回も作ることは、まさに東映がさんざんやって来たことで、べつに西崎だけがやっちゃいかんということはないです。

が、欲をいえば、俳優(たとえば高倉健)自身の加齢に合わせて役柄に深みが加わっていったということがあるわけで、古代進の成長物語として、シリーズ構成したかったなァという感は残ります。

どうも、成り立っていない話を「とにかく夏の公開に間に合わせるぞ」というので進めちゃったというような。絵的にはすばらしいのに、企画段階のアラが透けて見える。そしてアニメファンも大人になる……という作品だったのかもしれません。


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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。