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1978年、舛田利雄『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』

沖田の、子どもたちが行く。

西暦2201年。無限に広がる大宇宙。企画・原案・製作総指揮:西崎義展、監督・総設定:松本零士、脚本:舛田利雄・藤川桂介・山本英明。

あらためまして。「英雄の丘」に歌詞があるといいと思います。

この時点では、権利者は西崎だったんですが、表記がややこしいことになってるわけで、もうオープニングクレジットの段階で「監督は誰だよ!?」って思っちゃうわけですけれども、松本はほとんど現場へ来なかったという裏話を確認するまでもなく、劇場の大画面を意識した構図とカメラワーク・潔い編集は、漫画家に采配できるものとは思われず、やはり舛田の仕事と捉えればよいのだろうと思います。

冒頭から銀河の絵がたいへん美しく、ナレーション終了した後のたっぷりした間も見事です。よくぞ堪えた。

『スターウォーズ(エピソード4)』の日本公開と同年ですが、あちらは帝国の何がそんなに悪いのかよく分からなかったわけですけれども、こちらは序盤からたたみ掛けるように暴虐ぶりが表現されており、メカニック描画も力作で、見ごたえは高いです。

じつは劇場公開時に祖父に連れられて観に行った覚えがございまして、新婚さん達の浮かれっぷりは幼心にも アホくさく 微笑ましく、いま見ると、雪が家具売場の奥から手前へジグザグに走ってくる構図の斬新さにハッとさせられることです。

この年に『スターウォーズ』と並び称せられることになったわけで、「前年にアメリカで公開されたのを見てきた奴がパクッた」疑惑も生まれがちだったんでしょうけれども、あくまでこちらの原案(テレビ第1シリーズ)のほうが、ふた足早い1974年です。

今回は、劇場版にしてはセル枚数を抑えているらしく、一番よく動いたのはデスラーのマントじゃないかっていうくらいで、「東映動画の商業主義ってやつかしらん」などと思わされることですが、脚本の点では、とくに前半がひじょうに良く、間合いの効いた演出が輪をかけて良い。命知らずの空間騎兵隊の描写がいちいち魅力的です。

テレビ第1シリーズの「カネに糸目はつけない」という異様な熱気の再現は望むべくもなく、とくに子どもばかり描いてきた東映動画の頭でっかちな人物描画が野暮ったくて損してるんですけれども、メカ描画は見事ですし、ヤマトに乗ってるだけではなく、地平線の向こうから敵の現れる戦車戦・構図の大胆な航空戦・007ばりの銃撃戦と映画的面白さが盛りだくさんで、しかも物語は「とにかく白色彗星が強い」で一貫してるわけで、二時間半の書き下ろし劇場用新作として、たいへん出来の良い作品だと思われます。

だてに舶来の大作や高倉健の向こうを張って、年間ランキング入りしておりません。

とくに、テレザート星を望む「第一次作戦」のじっくりと落ち着いた展開はすばらしいです。

アニメで「モンタージュ」ってのもあれですが、クローズアップとロング、戦艦の中と外の切り替えの妙味は、いま見てもアニメのレベルではないと感じられます。

後半はちょっと駆け足&台詞が上っすべりした感じになっちゃいまして、脚本担当者が変わったのかもしれません。

艦隊戦は、地球の海洋上の動きが基本……かと思ったら、さすが土方艦長は3D作戦でした。

なお、ヤマトの出奔にしても、デスラー戦法にしても「ハード」の用意が絶対に必要なはずですが、その準備の様子を端折ってるので、若者たちの勢いで「かるく殴りこみ」みたいになっちゃってるのは、まァ東映だし。(違)

【古代進という人物】

全共闘世代も1978年になると普通に会社員やってたはずで、社内会議でバーーンと立ち上がって「それが我が社の創業精神なんですか!」なんてやれる人はいなかったはずですね。

古代の単細胞ぶり・熱血漢ぶりは、年寄りに向かって云ってやりたいけど実際には云えないという日本の普通の若者たちにとっての理想なのです。

西崎が口八丁手八丁の熱弁家だったことも反映されているかもしれません。

女性は「からめ手」で生きることを知っておりますから、この手の男性キャラクターを見ると「もっと器用に生きればいいのに。何こいつ。バカみたい。ウザイ」という気分になりやすいのです。

でも、現実には存在しないタイプ。だからこそ、これもヒーロー像なのです。007みたいに洒落てないけれども、それが日本人の生きる道なのです。自分が大人になったら、こういうのは「可愛い」って云っておけばいいです。

【征く我々が愛のためなら、残る貴様らも愛のためなのである】

後味はね……。その後の展開を知らないとしても、あんまり良いものではないです。アニメで主人公が帰還せずってのは、肩すかしを喰らったような感じがしますね。

第1シリーズで古代守の蛮勇を叱りつけた沖田さんが特攻を示唆したことになっちゃってますし、進の熱弁は要するに特攻の美化ですし。

とはいえ感動的ではあって、云いたいことを全部云った(云わせた)には違いないです。

(なお小見出しは実写映画『戦艦大和』の台詞をもじったものです。)

西崎による第1シリーズの企画書には、少年少女が地球の危機を救うため、愛の心で立ち上がるってなことが書いてあるらしくて、テーマとしては一貫しているのです。

サーシャの遭難を確認しに行った時点では、古代と島は少尉候補生だったか、宇宙戦士訓練学校の生徒だったかで、まだ18歳程度という話だったのです。それが確かに大人になったので、成長物語として初志貫徹してはいるのです。

制作者として考えてみると、両方のパターンを試すことが出来たというのは幸せなことだったのかもしれません。

光が一閃するまでにたっぷりと間を取った舛田の仕事は、最初と最後が呼応して見事だったと思います。なお、最後の挨拶文は、舛田は「出すな」って云ったんだそうです。

もし、西崎がこれほどハッタリのきいた人ではなく、もうちょっと硬くて、アニメそのものが好きで、第1シリーズのアニメーターを温存して「オフィス・ヤマト」を立ち上げ、大切に育てていたらどうだったかな、などと今さら思ってしまうことです。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。