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1975年7月、佐藤純弥『新幹線大爆破』東映東京

原案:加藤阿礼、脚本:小野竜之助・佐藤純弥、撮影:飯村雅彦・山沢義一・清水政郎、音楽:青山八郎

革命がうまくいった国へ行ってみたい。

東映が総力を結集して贈る超大作(撮影特報より)、爆弾時代、1975。現代の狂気を鋭く抉る!(予告篇より)

山本圭の団塊代表なトッチャンボーヤぶりが泣かせます。見果てぬ夢を追った新左翼は、映画界にいい材料を提供したんだなァと変な感慨に浸りつつ、狂気と書くつもりで侠気になってしまうキーボードからお贈りします。

これぞ男性映画。父よあなたは強かった。

冒頭から伏線を張りつつ、早いテンポでたたみかけ、コメディリリーフもなく、お色気もなく。何十人もの現場の男たちの額に光る玉の汗が印象的です。最後はやっぱり人力ですからね。

予告篇は「恐怖」の文字を繰り返して、パニックムービーらしさを煽ってるんですが、根が真面目な日本人のことですから、「大惨事をいかに防ぐか」という、旧国鉄職員たちの葛藤を描く緻密な心理劇になっております。

オープニングの文字と、プログレッシブな音楽がたいへんに1975年的で懐かしいです。

人間力といえば、戦争映画を別にすると、ついに渡世から足を洗った高倉さんの堅気なお仕事第一作ということのようですが、この方、仁侠映画やりながら、ちゃんと演技力を高めてきたですね。

『残侠伝』の間にも顔と雰囲気がどんどん変わって参りましたし、じゃっかん苛立ちが見えるような時もありましたが、作品のグレードとしては微妙な脚本を与えられた際にも、奥の奥まで踏み込んで役作りしていたように思われます。

ここでは、その蓄積された底力が全開されたようです。カメラは寡黙な男に思い切って寄っております。

顔立ちのスター性と仁侠映画の蓄積があって、筋の通らないことはしない人に見えるけれども、肝は据わっているという、俳優の個性を最も活かした役だったかもしれません。

映像のほうは、撮りも撮ったり。惜しげなく様々な角度から撮り溜めた絵を切ったり貼ったり切ったり貼ったり、カメラを振ったり。面白いです。

この手の「反社会的」作品は、知能犯の手口も見どころなわけで、新幹線総合指令所や運転台の描写とともに、好奇心を楽しませてくれます。

なお、庶民はパニックに際して何もできないなら祈ってるのが良さそうです。

クライマックスは、取ってつけたようなクラシック音楽ではないほうが良かったかもしれません。いっそ法華の太鼓を鳴らさせたほうが良かったような気もしますが、これはまァ宗教上の配慮もあるし。

たぶん、この頃にはまだロックは不良の音楽で、犯罪のBGMに相応しく、秩序が回復された象徴が古典音楽だったのかもしれません。

(そう考えると『冬の華』のチャイコンも正しい世界・堅気の世界の象徴なのでしょうね)

そして何よりも、宇津井健の演技力を見る映画です。終盤の彼なりの結論は、それだけの真面目さがあったから、あの難局を乗り切ることができたのであり、序盤のポイント切り替えの危機に際して見せた集中力と、この結論が呼応しているという、見事な脚本でした。

ラストシーンも印象的で、この頃の映画の映像的な面白さは、CGが無かったからこそ、アナログ機材を使って出来ることを様々に工夫したところから来ているのだと思います。

佐藤監督は、ほんとうに映画が好きなんだな、と思ったことです。

なお、公開と同時にノベライズが出版されると予告篇にありました。この頃は「映画を見て小説を書く」というのが、わりと当たり前だったのかもしれません。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。