1963年、沢島忠『人生劇場 飛車角』東映東京

  12, 2016 10:20
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もう、男の意地や義理はいや。

企画:岡田茂・亀田耕司・吉田達、原作:尾崎士郎、脚本:直居欽哉、撮影:藤井静、照明:川崎保之丞、音楽:佐藤勝、編集:田中修

製作の吉田は(岡田の命令で)『さらば宇宙戦艦ヤマト』にも深く関わっちゃった人。こっちは岡田が原作に大鉈をふるったんだそうで、飛車角が寄せ場にいる間の「おとよ」さんを中心にしたメロドラマ仕立て。台詞のやり取りを大切にした文芸調。

歌舞伎の世話物というか新派というか、伝統的な舞台劇が基本ですが、大胆な構図と、自然物を利用した無言の心象描写、前衛的なまでに潔いモンタージュという、映画ならではの技法を駆使した印象的な芸術作品でした。

鶴田浩二が飛車角。だいぶ熱血漢です。日本人形のようなというのは、ふつう女性の美貌の比喩に云うのですが、若さを残した鶴田(1924年生まれ)の顔立ちが、本当に人形のように美しいことが知れます。

高倉健は1931年生まれ。撮影時には31歳だったと思われますが、18歳の新人のように可愛い顔をしてます。小金一家の若いもの、宮川の役です。

吉良常は月形龍之介。いや月形龍之介が吉良常。田宮二郎とは違った役作りで、まさに燻し銀の味わい。十年前ってェと……アラカン相手に近藤勇でしたね。

黒澤『姿三四郎』の頃から、ボソボソと低く喋る独特な演技が変わっていないことが知れ、鶴田との実年齢の違い(1902年生まれ)もよく分かって、役柄とはまた別の意味で印象的でした。

どうしてもやっぱり仁侠映画の額縁を使って女性映画を撮りたいって気持ちもあるようで、男心に男が惚れるんだけれども、どういう男心かっていうと、恋女房を忘れられない純情さなのでした。

飛車角の物語として絞り込んだので、キャラクター構成がすごくシンプルで明確です。村田英雄は主題歌歌手のファンサービス出演程度ですが、うまいです。

当然ながら、誰を最初に登場させるかによって観客の中でキャラクターの印象と序列が決まるわけで、ラブシーンから始まった加藤版の瓢吉くんは、いかにも大正デカダンス。こっちは青雲の志を抱いた爽やかなワセダ学生で、逆にいうと、ただそれだけの脇役なのでした。

戦後の女はストッキングとともに強くなったわけで、この「おとよ」さんの暑苦しいまでのなりふり構わなさは、佐久間の演技力あってこそ。にもかかわらず女優として低迷期にあったという裏話を聞かされると、本人もこの一本に賭けていたのだろうと思われることですが、映画が撮られた年代をも、よく表現しているのかもしれません。。

終わり方が規格外れで、やや驚かされることです。

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