1963年10月、マキノ雅弘『次郎長三国志』東映

  13, 2016 10:20
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てめェ生国と発しまするは駿河にござんす。

企画:小倉浩一郎・俊藤浩滋、原作:村上元三、脚本:マキノ雅弘・山内鉄也、撮影:三木滋人、音楽:鈴木静一、助監督:山内鉄也

時代劇王国東映が放つ新・次郎長シリーズ第一弾(予告篇より)だそうです。近所のレンタル屋に『総長賭博』以降がそろってないもんですから、シフトしてみました。

のんびり明るい人情劇。安定のマキノ的俯瞰の構図から始まります。子分が一人ずつ増えていく様子を丁寧に描いています。マキノ監督はいつもそうですが、基本が舞台劇で、台詞同士のやり取りを大切にしているぶん、展開は、ゆる~~っとしています。

けれども、監督みずからの手になる脚本はなめらかで、無駄がありません。場面転換も潔く。BGMはジャズ調で良い感じ。ミュージカル映画時代も引きずってるようです。

松方弘樹がピカピカの21歳。「チャキリス張り」の粋なお兄ィさんで、すごくセクシーでカッコいいです。

鶴田もまだ若く、アイラインの濃い時代劇の化粧をしているので、節句に飾る人形のように美しいです。山城新伍は本領を遺憾なく発揮しており、大木実が大政として画面に重みを添えております。

どの俳優にも見せ場があるわけで、たいへん楽しそうです。役者の肩の力を抜かせるのが、マキノ監督の手腕の一つかもしれません。

物語はあくまで渡世人どうし・親分どうしの喧嘩出入りを描いているので、対国家権力闘争の色彩はついておりませんで、新興暴力団ってのもまだありませんから、基本ヤクザは一連托生。ギブアンドテイクが成り立つ世界の中で、のんびり喧嘩したり、預からせてもらったりしてます。

これが岡田茂の指揮下、任侠劇団の暗い世界観にはめられて行ったんだね……と、ちょっと思いました。

予告篇では藤純子が新人として紹介されていますが、いきなり芝居ができ上がっています。佐久間良子は……惚れた男くらいすぐに気づきなさいッ。

「ヤクザは人間の表家業にはねェ渡世だ。いわば外道の世界だぞ」

ところで博奕打ちとは何か? 外道の世界の「渡世の義理」がいやなら、足を洗って農夫にでも漁師にでも桶屋の職人にでも、ヨイトマケにでも、なればいいわけです。でも他人に使われたくない。汗を絞りたくない。一回の博奕で一カ月分をかせぎたい。要するに遊んで暮らしたい。一般市民の良識からすれば、ゴクツブシです。

負けて一文なしになったら、それ以上張りようがないので、次の町へ行くわけですが、路銀もないから、行った先の土地で一番の親分さんの世話になる。他人の家に上がり込んで、ただ飯を食わせてもらうわけです。食わせてもらえなければ餓えて野たれ死にしていたわけですから、親分さんにもらった命ってことになる。

次郎長の子分がだんだん増えてくると、次郎長自身が居候なので、水島道太郎演じる親分がだんだん大変そうです。

なお、サイコロも花札も、なにが出るのか、どう転ぶのか、イカサマしない限りコントロールできないんだから、勝っても負けても恨みっこなしの運だめしってのが本当で、あんまり熱くなるもんではなく、引き際が肝心です。それじゃお話が始まらないわけですが。

約100分ですが、明らかに物語の序盤で終わっているので、以下続篇、乞うご期待ということのようです。

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