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1963年10月、マキノ雅弘『次郎長三国志』東映

てめェ生国と発しまするは駿河にござんす。

企画:小倉浩一郎・俊藤浩滋、原作:村上元三、脚本:マキノ雅弘・山内鉄也、撮影:三木滋人、音楽:鈴木静一、助監督:山内鉄也

時代劇王国東映が放つ新・次郎長シリーズ第一弾(予告篇より)だそうです。近所のレンタル屋に『総長賭博』以降がそろってないもんですから、シフトしてみました。

のんびり明るい人情劇。安定のマキノ的俯瞰の構図から始まります。子分が一人ずつ増えていく様子を丁寧に描いています。マキノ監督はいつもそうですが、基本が舞台劇で、台詞同士のやり取りを大切にしているぶん、展開は、ゆる~~っとしています。

けれども、監督みずからの手になる脚本はなめらかで、無駄がありません。場面転換も潔く。BGMはジャズ調で良い感じ。ミュージカル映画時代も引きずってるようです。

松方弘樹がピカピカの21歳。「チャキリス張り」の粋なお兄ィさんで、すごくセクシーでカッコいいです。

鶴田もまだ若く、アイラインの濃い時代劇の化粧をしているので、節句に飾る人形のように美しいです。山城新伍は本領を遺憾なく発揮しており、大木実が大政として画面に重みを添えております。

どの俳優にも見せ場があるわけで、たいへん楽しそうです。役者の肩の力を抜かせるのが、マキノ監督の手腕の一つかもしれません。

物語はあくまで渡世人どうし・親分どうしの喧嘩出入りを描いているので、対国家権力闘争の色彩はついておりませんで、新興暴力団ってのもまだありませんから、基本ヤクザは一連托生。ギブアンドテイクが成り立つ世界の中で、のんびり喧嘩したり、預からせてもらったりしてます。

これが岡田茂の指揮下、任侠劇団の暗い世界観にはめられて行ったんだね……と、ちょっと思いました。

予告篇では藤純子が新人として紹介されていますが、いきなり芝居ができ上がっています。佐久間良子は……惚れた男くらいすぐに気づきなさいッ。

「ヤクザは人間の表家業にはねェ渡世だ。いわば外道の世界だぞ」

ところで博奕打ちとは何か? 外道の世界の「渡世の義理」がいやなら、足を洗って農夫にでも漁師にでも桶屋の職人にでも、ヨイトマケにでも、なればいいわけです。でも他人に使われたくない。汗を絞りたくない。一回の博奕で一カ月分をかせぎたい。要するに遊んで暮らしたい。一般市民の良識からすれば、ゴクツブシです。

負けて一文なしになったら、それ以上張りようがないので、次の町へ行くわけですが、路銀もないから、行った先の土地で一番の親分さんの世話になる。他人の家に上がり込んで、ただ飯を食わせてもらうわけです。食わせてもらえなければ餓えて野たれ死にしていたわけですから、親分さんにもらった命ってことになる。

次郎長の子分がだんだん増えてくると、次郎長自身が居候なので、水島道太郎演じる親分がだんだん大変そうです。

なお、サイコロも花札も、なにが出るのか、どう転ぶのか、イカサマしない限りコントロールできないんだから、勝っても負けても恨みっこなしの運だめしってのが本当で、あんまり熱くなるもんではなく、引き際が肝心です。それじゃお話が始まらないわけですが。

約100分ですが、明らかに物語の序盤で終わっているので、以下続篇、乞うご期待ということのようです。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。