1968年9月、山下耕作『緋牡丹博徒』東映京都

  13, 2016 10:21
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ご当家の親分さん、お姐ェさん。陰ながら、お許しこうむります。

脚本:鈴木則文、撮影:古谷伸、音楽:渡辺岳夫、助監督:本田達男

女だてらとお笑いくださいますならば、仁義、お受け致します。(『次郎長三国志』より)

おんな一匹、緋牡丹渡世。こちらも控えてみました。仁義の口上をスラスラ述べるのは男でも難しいみたいで、風間重吉(池部良)の他には、このお龍さんがピカイチじゃないかと思います。

純子の歌唱については云わないことにして、山下監督はやや耽美派というか技巧派というか、オープニングからカッ飛ばしております。

山下式クローズアップ&モンタージュは、やや荒削り感がありますが、応援したい気分になります。音楽が渡辺岳夫のせいか、5年くらい後の出崎アニメを観る味わいもあります。

基本は渡世人世直し行脚。個人的な恨みを抱えて(荷物も持たんと)旅をする「すっごいきれいなおねえちゃん」が、行く先々の喧嘩出入りに一枚噛んで、「ぶしつけなお願い」をして廻るわけでございます。

道後へ行ったり、大阪へ行ったり、富三郎や虹子の役が明らかに続編を意識しているので、ややまだるっこしい感もありますが、まずはこの一本にやりたいことを詰め込んだようで、見せ場は盛りだくさん。

意外なほど大勢の男性キャラクターそれぞれの事情を取り込んで、やや複雑な話をよくまとめたと思います。

お龍さんはとにかくきれいで、啖呵も決まるが台詞のない場面の顔の芝居もよく、殊に男の口から「女のくせに」って意味のことを云われるたびに、こめかみに怒りを走らせ、プイッと背ける横顔と首筋の線が美しい。

こう見ていると、女性の社会進出を阻むのは、要するに縄張り争いなんだなと思いました。男性陣としては、誰でもいいから頭数を減らして自分の取り分を増やしたいわけで、女性でなければ老人・病人が「おやっさん、もう無理するな」とか云われちゃうのでしょう。

で、お龍さんが女を捨てたつもりで頑張ることになるわけですが、他人の喧嘩を買って出る理由は、女らしい思いやりの心なのでした。なお、女は血の臭いには慣れているものです。

高倉健が特別出演で、主役じゃないので、本人の背負ってるシリーズではあり得ない珍しい対立の構図や、ラストシーンが観られます。主役じゃないので、背中で語る場面が多いわけで、裾を思いきって短く着つけた着流し姿の格好よさが、むしろ他の作品より際立ちます。

大木実が悪役だけれども、表情に根の人のよさがにじむのでした。侍上がりという設定がたいへん似合ってます。永遠の大政。

山本麟一も、出演史上空前絶後じゃないかというほど出番が多く、悪い人みたいな顔してるけど本当はいい人という持ち味が最高に生かされていたかと思います。ああ本当にお嬢さんが好きだったんだな……と思うと泣けました。純子の小娘ぶりっこ演技も可愛かったです。

前半の若山富三郎と金子信雄はやや漫画タッチで、何がしたかったのかと思うに、美女の一人旅という極端なフィクションの世界に観客をいざなう道化の役ですね。富三郎の本領発揮は次回以降のお楽しみ。

殴りこみは待田京介が大活躍で、爆弾常の下で修行した甲斐が。お龍さんは小太刀一本で、戦闘力は高いけれども、リーチが短いので、飛び道具も使うわけで、そこへ高倉が加わって、娯楽映画らしさは大盤振る舞い。長刀を構えた高倉の振りが大きくて、画面をいっぱいに支配する様子がよく分かります。撮るほうも大変だけど、楽しかったろうと思います。

なお、乱戦の際には、斬られ役の中に毎回一人くらい過剰演技する奴がいるですな。(気持ちは分かる)

殺陣も体術も見事だったお龍さんには、改めて二代目襲名のご挨拶も頂いたので、続篇もお付き合いさせて頂きます。小沢茂弘だし。

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