2008年『パニッシャー:ウォー・ゾーン』

  27, 2012 02:06
  •  -
  •  -
これはいい(・∀・)

マフィアの造形が安っぽくて怒りっぽくて、そこがいい。老ボスのしゃがれ声はドン・コルレオーネへのオマージュだ♪ と言っていいよね。アクションでスリラーでやや猟奇的、その代わりエロと中途半端なギャグはない。ある意味さわやかに、安心して観られる。あえて言えば『イベント・ホライゾン』に似ている。

個人的にはもう明らかにレイ・スティーヴンソン目当てで借りている。(ずいぶん前に予約したので届いた頃には動機を忘れているが、この作品については他に考えられない)

体格がよく、暴力性を秘めていて、粗野な無精髭がセクシーでよく似合うが、女子供に優しい役がまたよく似合う。1964年生まれ。2008年公開映画だから撮影は前年として、43歳。男盛りっぷりが目に嬉しい。日本映画はアクション俳優が若すぎてつまらないのだ(個人的感想)

というわけで原作マンガを知らずに借りているからクレジットを見て「マーヴェルかーー」とのんきに思った。コマ割りを意識したオープニング、悪役たちの誇張した演技のマンガっぽさにニヤニヤしつつ、なめてかかったら良作だった。

徹底してマンガ調に誇張しているところと、「特殊部隊の教官」という設定が説得力をもつリアリティ感の両立がいい。ワイヤーアクションは(ほとんど)ない代わりにアクションには肉弾戦の迫力があった。下手な笑いを取りにいかないとこもいい。
「1,2,3」だけは大笑いさせてもらったが、その武器屋など脇固めも女優も子役もみんないい顔をしていた。全く怖がらない娘は純真すぎてファンタジーな存在なのだが、これもそこがいい。

画面はあるときはセピア調でノスタルジック、あるときは青灰色でSF調、あるときは手持ちカメラで追っかけたドキュメンタリー風。工夫がきいていて飽きなかった。
「地上の片隅のできごと」だから別に空撮は必要ないわけだが、時おり空撮による夜景が挿入されて、濃密な閉塞感と同時に壮大な空気感も感じられた……と思う。あのNYの夜景が「近未来」ではないという現実のほうが現実感がないわけだが、日常的すぎて逆に存在感の希薄な回想シーンのはさみ方も上手かった。
“徴兵”の際の「背景の星条旗とかすかに流れる国歌」は小説ではできない手法。映像ならではの効果で楽しかった。YAKUZA にも声かけて欲しかったけど、やられ役だからなw とんだ自由と独立の国もあったもんである。

ストーリーは「長いこと活躍してきた仕置人の最後の仕事」=家族を奪った“本丸”への復讐 vs. 顔を奪われた復讐に絞り込んでおり、クライマックスへ向けて一気に語る緊張感を保ったと思う。『キング・アーサー』もそうだったけど、かつてのようにヒーローが生まれる過程を描き、「彼の戦いが始まる」というふうに「引き」にするのではなく、キャリアの終わり際、引退試合、千秋楽、そういうところへ焦点を当てるのが最近流らしい。

生物兵器・ロシアンマフィア・アラブテロと今っぽい要素をちょっとずつ取り入れつつ、「司法取引による免罪」という法の抜け道も皮肉りつつ、当たり前のように裏切りを描き、しつこく演出せず「お約束感」で押し切ったのは娯楽作品らしい軽快さを保ってよかったと思う。『相棒』(東京マラソンのほう)みたいに途中から話がお涙頂戴に変わってしまうなんてこともなく。

唐突な教会の場面も、フランクの過去と人間性を知らせて充分だったし、しつこくもなかった。原作を知らないと分からない話ではなく、この一本だけ観て彼の人生を理解し、ファンになることができる。原作のファンにしか分からない謎かけのような場面があると、原作を知らないファンは鼻白んでしまうが、それはなかった。詰め込むにしても、初心者向けの味を上手にひと口ずつ詰め込んだ「デザート・ディッシュ」「当店自慢のおみやげセット」みたいだったと思う。

レイは「基本」のオールバックと黒革の衣装も、資料写真中の海兵隊制服姿もカッコよかったし、パパ時代の長髪もすてきだった。彼の魅力満喫でごちそうさまと思っていたら、コリン・サーモンという美味しいおまけがついてきた。白人のほうがキレていて、黒人のほうが理知的というキャラクターの振り分けは最近ときどき見かける。似た体格の二人の格闘戦は楽しませてもらった。仲良くなりすぎてバディものとなり、コメディ臭が漂ってしまう手前で踏みとどまり「一人で戦うと決めた男」の話に終始したのはよかった。

いっぽう、二人の間で落ち着きなく首を振り続けるプロファイル屋ソープの役作りが秀逸だと思った。トリオ漫才でシリーズ化してほしいような気もする。

悪役は『オペラ座の怪人』そこのけの見事な造形で、舞台だったら彼がカーテンコールで出てきたらスタンディングってところだ。ジェイソン、フレディなどとともに悪役スターの座を与えたい。毛皮の襟のコートもマフィアらしくて素敵だったし、ラストで着ていたパイソン模様の詰襟スーツ(軍服ふう)はイカしていた。

……とはいえ彼自身はじつは(それほど)残虐なことをしているわけではなく、一見(それほど)キレてない弟との良コンビぶりが面白いわけで、兄ちゃんのために体を張って鏡を割るのにはちょっと泣けた。

クライマックスは要するにドンパチなわけだが、弾(と火薬)を消費するばかりでなく、主人公の「特殊部隊の教官」という経歴を活かして、少ない弾数で遠距離から確実にしとめるという様子をテンポよく描いて、これも飽きなかった。悪者退治が途中で腰くだけになる作品は多いが、盛大にやってくれて楽しかった。

復讐が終わり、彼はいずこへともなく姿を消した……と西部劇ふうに終わるとカッコ良かったのだが、言うまでもなくラストで台無しにしてくれたwww 復讐だからこそあんなに頑張ったんだという話をしてきたのに、ちょっと脅せば逃げていくようなチンピラの脳みそスプラッタしてはいかん。

十字架が半分消えて「自ら助く」状態になったシャレと、レイの体格の良さを活かした立ち姿のシルエットのカッコ良さ、エンディングのメタルサウンドが決まっていたので許す。

面白かったのでちょっと覚えておこうと思ったスタッフたちの名前。
監督:レクシー・アレクサンダー 撮影:スティーヴ・ゲイナー 編集:ウィリアム・イェー

興行収入が製作費を下回っちゃって残念な結果だったようだ。原作ファンには「謎かけ」のようなところ、マニア心をくすぐる部分がなかったところがつまらなかったのかもしれない。でも映像にもストーリーにも演出にもまんべんなく目を配った良い作品だったと思う。個人的には98点。おちいりがちな失策をすべてうまく回避したのに最後に余計な落書きをしたので減点、というところw

それにしてもロシアンマフィアのじいちゃんカッコええ脇汗出た。(←お年寄りキャラ好き)


Related Entries