寺山修司の勘違いと、社会学者の自己満足。

  22, 2016 10:20
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まず、ここでいう「フェミニズム」とは誰のことかというと「私のことかしら?」と思う方です。より良い未来に向けて、それぞれに考えてくださればよろしいので、あわてて言い訳クレームなさる必要はございません。さて。



【寺山修司の勘違い】

かつて、寺山修司が竹宮恵子『風と木の詩』を一読して「少女の内面を表している」と評した。

端的には、これによって、いまで云うBLを読むのは少女に限られるというステレオタイプが成立したのでした。

そして「BLを読んでいる限り、まだ子どもだと見なされるから、誰の権利を侵害しても大目に見てもらえる」という不適切な自意識も生まれてしまったのです。

でも竹宮自身は、1950年2月生まれの26歳でした。早生まれですから、1949年生まれと同級生です。その同級生である団塊世代が第二次ベビーブームの(字義通り)生みの親になった後も、竹宮は独身でした。

ということは、当時の男性は、非婚女性=子どもと見なしたのです。

前衛詩人といえども、成人した女性が心身ともに男性に甘えずに自立して生きていくことを認めなかったのです。

本当は、当時から今に至るまで、フェミニズムはここを突っ込まなきゃいけないのです。永遠の少女などといって喜んでる場合じゃないのです。

フェミニズムのオバサン達が「だったら私も少女ですわ!」と云って、自分でウケちゃったもんだから、「何をしても大目に見てもらえる」という不適切な自意識が克服されるどころか、助長されちゃったのです。増長と云ってもいいでしょう。

でも、男と「やった」女でなければ成人として認められないのであれば、選挙権お返しせにゃなりません。就職もできません。児童に労働させてはいけないからです。

寺山的勘違いには、あと2つ指摘できることがあります。

【表現の自由と、読者批評】

力石徹に激越な弔辞を捧げた前衛詩人が、ひきつづき漫画表現の自由を最大限に尊重したいと思えば、すでに少女漫画として発表されてしまったものを「子どもに読ませるものじゃない」とは云いにくい。

まるで16歳の読者投稿作品かのように云っておく必要があったのです。

また、作品と作者のプロフィールを照らし合わせて深層心理を分析するというタイプの批評方法に批評家自身が飽きて、読者のほうの反応を探るという、社会学的批評が流行っていたらしいのです。

要するに、どっちも批評家側の都合です。

フェミの先生たちを含めた女性読者がそれに乗っかったなら、「少女」は寺山のおじさんに甘やかしてもらっただけです。

それが女性の「弱者特権」の本質です。まだ若くて可愛いから、ストレート男性から大目に見てもらえるのです。ゲイには通用しません。

【社会学者の自己満足】

特殊な漫画を売っていることで有名な「コミケ」の参加者に限っただけでも、1975年に高校生として参加した人は、1980年には成人しています。コミケは学校でもアイドルグループでもないのですから、成人したから、何年目だからといって卒業するわけではありません。

ベテランが上手に描いたものを出品し続けたから、それより若い人々が、アニメ流行の一環として飛びつき、真似をしただけであって、本来は大人が読み書きし、現実とは混同しないという約束を守るべきものである。

これを明言しておくべきだったのです。

実際には、社会学者・評論家といった人々が、1980年代非行文化の一種として、「社会構造に不満を抱えた少女たちによる自由な自己表現」として持ち上げてしまったので、当事者に「何をしても(母親がトラウマだからと云えば)大目に見てもらえる」という自意識を醸成してしまった。

それは本来、森茉莉や二十四年組などの創作者の本意ではなかったはずです。ましてアニメ製作・制作者の本意でもなかったはずです。

社会学者自身が、マルクス主義に染まっており、あたかも資本主義が打倒されて共産主義の社会が出現するように、男性中心社会が若い人々の手によって打倒されて女性中心主義の社会が出現するかのように思い描いてしまった。

子どもは神の使いであるという伝統的イメージ、学生運動・紅衛兵などの現世的イメージと混同し、若い人々による世直し・打ちこわし運動を希求してしまったという、大人における責任転嫁です。

自分自身のルサンチマンを基盤として、ユートピアを期待する宗教的情熱をともなったイデオロギーによって、学問が(まさに)左右される。日本の歴史学・社会学は、長いこと、この熱に浮かされていたのではなかったかと思います。

社会学者というのは、自分自身を「社会を観察し、研究する人だ」と思っていますから、自分自身の誤謬には気づきにくいものです。

そろそろ反省がなされるべき頃合だと思います。

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