記事一覧

1975年2月『宇宙戦艦ヤマト』(DVD第4巻)

【第19話】 脚本:山本暎一 作画監督:岡迫亘弘

匂い優しい白百合の 濡れているよな あの瞳。(『北上夜曲』作詞:菊地規)

相原くんがメンタルやられちゃったようです。心理描写主体ですから画面的には地味で、編集が荒いですが、山本脚本らしい脇役キャラクターに焦点を当てた良エピソード回です。想い出すのは、想い出すのは、北上河原の雪の夜。

母に会いたくて脱走した・姉に会うために脱走したというエピソードは実写映画にもありましたが、この1970年代は意外なほど戦争を題材に取り上げ、その陰の部分を真正面から描くことに挑戦していたように思われます。サイゴン陥落・ベトナム戦争終結は1975年 月。

なお、森生活班長のお寝巻き姿は刺激的でした。ふつうの戦争映画にはあり得ない描写ですね。アルカディア号から鳥さんがゲスト出演(違)

それにつけても艦長、食卓に着かれる前にお帽子を脱がれませ。あと255日。

【第20話】 脚本:藤川桂介 作画:スタジオ・メイツ

戦いは、勝てばいいのだ。(byドメル)

バラン星攻防戦。古代が沖田さんから艦長代理を拝命しました。よくも悪くも直感的に判断する彼は、理性的に反論する島とは良いコンビです。ドメルは日本アニメ史上屈指の印象的な中年男ですが、自らの奢りに負けたようです。

キャラクターの顔がコロコロ変わる作画はチームプレー。あと253日。

【第21話】 脚本:藤川桂介 作画監督:坂本三郎

私の作戦に失敗はない。(byドメル)

満を持して、ドメル戦。宇宙の狼に敬意を表して、オープニング曲の導入が変わりました。今回は七色星団へ配備を完了するまで。実写ライクなカメラワークが緊張感を高めます。

バラン基地陽動作戦は地球人(おもに古代)の心理まで読んだ見事な作戦だったので、総統がもうちょっとドメルさんをえこひいきしてくれていたら展開が違っていたのですが、番組のタイトルが変わっちゃいます(『宇宙将軍ドメル』)ので、御都合主義なのは致し方ないです。

ドメルの顔が良く描けていた回でした。編集も落ち着いていたと思います。あと215日。

【第22話】 脚本:藤川桂介 作画:タイガープロダクション 

七色星団攻防戦。オープニング曲を省略して、時間枠をいっぱいに使いました。こういうことやっちゃうセンスには繰りかえし敬礼を送りましょう。

敵戦闘機隊が画面の奥へ消えていく構図センスも並大抵ではないと思われます。重爆撃機の発進は何度見てもすさまじいです。ヤマト艦載機の発進も丁寧に描きました。

洋の東西を問わず、第二次大戦もの・大東亜戦争ものはたくさんあったわけですが、1975年の時点で架空戦記を真顔で描ききったというのは、やはりすごいことだったと思います。

これが若い創作家(の卵)たちに「自分で自由に戦術を考えて、海戦・航空戦を描いてもいいんだ」という発想の自由を与え、意欲を掻き立てたことの意義の大きさは計り知れません。

ドメルは一騎打ちなどの精神性にこだわらず、使えるものはぜんぶ使う合理的・冷徹な指揮官で、まちがいなく名将だったのですが、唯一の誤算は、ヤマトに真田志郎という男が乗っていたことでした。

大損害を受けた艦底・艦橋・宇宙葬を描ききるリアリズム志向にも繰りかえし敬意を表したいと思います。エンディングも劇場版ライクでした。

「地球のために命をかけた全ての勇士に送る。きみたちの心は、我々の心に蘇って、明日の地球の力となるだろう。我々はきみたちを決して忘れはしない」(沖田十三)

【第23話】 脚本:藤川桂介 作画演出:芦田豊雄 作画監督:小川隆雄

「百里の道を行くときは、九十九里をもって半ばとせよ」(by佐渡酒造)

さァ、こっからです。劇場版でもほとんどノーカットだった回。

すでにこのとき放映打ち切りが決定しており、全39話の予定を全26話に仕立て直すために後半の展開について激論が闘わされたそうです。

が、ここへ来てキャラクターの顔がひじょうに良いです。現場の士気は高かったようです。スターシァは美しいばかりでなく、気高い迫力を帯びております。あと164日。

【第24話】 脚本:山本暎一 作画:スタジオ・メイツ

まだお気づきになりませんか。大ガミラスといえども敗れることはあったのです。(byヒス)

もはや粛々と爆音だけが轟く、ガミラス最期の日。子供向けの手加減一切なし。これがなければジブリ映画さえなかったんじゃないかと思われたくらいです。劇場版でもノーカットだった回。

人物の顔は、各場面ごとに良く描けているのですが、コロコロ変わります。小泉謙三以下、スタジオ・メイツのチームプレーなんですが、自分の腕に覚えがあれば、一人で全部描いてみたくなりますわね。パロディではなく真正面から(ノベライズならぬ)漫画化した同人誌がたくさんあったことを信じます。

古代と雪がえらかったのは「沖田さんに云われた通りやっただけだもん」とか「こっちだって犠牲が出たんだから正当防衛だ」とか、一切言い訳しなかったところですね。彼らはここで大人になったのです。

この話は、あくまで沖田さんが主人公で、冥王星戦の頃から、老骨最後の大仕事というメインプロットがあるのです。そもそもコスモクリーナーを取りに行くのも若者たちの未来を守ってやるためで、古代が沖田を乗り越える話ではなく、すでに実の息子をなくした沖田の手の中で大勢の若者たちが成長して行く話なのです。

雪は登場したばかりの頃はお姉さんっぽく、ミステリアスな感じで、島との三角関係を暗示していたと思うんですけれども、だんだんコメディリリーフの一種になった挙句に、いつの間にか古代にくっついちゃってまして、この点だけはやや物足りないところです。

島と古代の二人が代わる代わる彼女にアプローチして、彼女が二人を手玉に取るくらいが良かったですが、それでは男性視聴者からは愛されなかったかもしれません。

島と古代本人たちのほうは、人間性の違いをハッキリ打ち出すことができており、今に至るまで得がたい人物造形だと思われます。それにつけても、船外からサンプルも取らずに成分分析するアナライザーは優秀です。

「この機会に、艦長として一言だけ諸君に申し上げたい。ありがとう。以上だ」(沖田十三)

あと161日。


 
Related Entries

SEARCH

Profile & Caution

Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。