1966年、篠田正浩『処刑の島』

  26, 2016 10:20
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俺たちは、またこうやって、やっとめぐり会えたというわけだッ。

原作:武田泰淳(流人島にて) 脚本:石原慎太郎 撮影:鈴木達夫 美術:戸田重昌 音楽:武満徹 編集:篠田正浩 助監督:宮川昭司

映画は大映。日生劇場プロダクション第一回製作。企画製作は石原なので、配給が大映。

石原慎太郎にだけァ、今どきのサブカル作品についてなんだかんだと言われる筋合いはねェぞと啖呵切りたくなる作品。

篠田正浩の唯美主義的映像によって、かろうじて高踏的・芸術的な装いを保っておりますが、脚本は明らかに若書きであって、設定上の無理が大きく、やりたいことが一杯あったらしくて、詰め込みすぎ感満載です。

逆にいえば、そこを無理に辻褄あわせようとせずに映像パワーで魅せた篠田の手腕と、淡々と悪役を演じきった三国の恐ろしいように立派なふてぶてしさを評価するといいのかもしれません。

当方の選択基準も「篠田作品を(レンタル店にあるかぎり)古い順に観てみよう企画」なわけでございまして、まずはビックリするほどきれいなカラー撮影でした。八丈島ロケーション敢行。古楽器を利かせたオープニング曲が魅力的。

タイトルはおどろおどろしいですが、今どきの学園スクリーム物みたいじゃなくて、物静かな文芸調です。予告篇では「異色大作」って云ってますが、1時間25分ほど。

大自然の片隅で、地にしがみつくように生きる人々を地味にカネかけて撮るのが篠田流。海の色も美しいですが、前衛的な舞台劇を思わせる対決場面が出色です。多様な芸術分野への造詣が深い方だったのでしょう。

過去が少しずつ明かされていく式のサスペンスなので、あらすじは申し上げませんが、序盤は(監督みずから切り貼りした)編集が大胆で、回想と現在が混在し、混乱しやすいので、頑張ってついて行きましょう。

もちろんそれが監督の狙いなんですが、例によってと云うべきか、「難解」って云われたんじゃないかと思います。

予告篇はやや見せすぎで、ロマンス映画みたいですが、まだ若い主人公男女のロマンスではないです。

題材が題材だけに、面白いって云っちゃうとあれなんですけれども、映画としての撮り方・見せ方としては素晴らしく、演出がいいとか構図がいいとか編集がいいとか云いながら観ることのできる方にはおすすめです。

主演の新田昌(あきら)はまさかの新人。中年の苦味と色気を兼ね備えた、たいへんいい男です。

窓枠の小さな三角形の隙間から、最初に三国連太郎の顔立ちがハッキリする構図は、よく狙ったと思います。

やや野性的な娘役には、松竹から岩下志麻を借りてきました。眼の光が印象的。

戦中から敗戦直後を経験した男性作家の多くは「男=人間社会の暴力性の象徴、若い女=聖なる自然の象徴」という対比的テーマを抱えているものです。

とくに石原が書いて、篠田が撮った映画には、魅力的な女性キャラクターが登場します。気が強そうで、眼ぢからがあって、神秘的な雰囲気をまとっているのに、生き方は受身。

だから物語の本筋に絡んでくるかというと、あまり自分から動くわけではなく、少女趣味なのも明らかで、これを手塚治虫が描けば、グッと現代ふうに近づくわけです。

若い作家には、人里離れた土地を舞台に自分自身の権力欲・サディズム的空想を満足させたいという気持ちもあるもので、慎太郎にだけァ(以下略)

一応、物語上の結末はつくので、『桜の森』『おりん』に比べて、後味は良いほうではないかと思われます。

人間界に何があっても、海の色と陽の色は変わらず。


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