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1974年3月『宇宙戦艦ヤマト』(DVD第5巻)

明日の幸せというものは、自分の力でしか獲得できないものですからね。

【第25話】脚本:山本暎一 作画監督:岡迫亘弘

イスカンダル星へ投錨。スターシァは前々回で「ガミラスもイスカンダルも地球人もおなじ人間」と云っていたのですが、彼女と雪が似ていることには(ここで見るかぎり)とくに深い意味はないようです。

守の無事を喜ぶ真田さんは若々しいです。この期に及んで画像と音声のシンクロ具合が良くないんですが、編集の問題でしょうか。

山本暎一は、おそらく少年向け冒険活劇の素養があって、SFといいつつ実質は秘境冒険もの・西部劇の一種だった時代を知っているのだろうと思います。こういう惑星表面へ降り立ってからのエピソードが多かったですね。「雪ピンチ!」って要素も多かったような気がします。無事で何より。

守を迎えるスターシァはたいへん嬉しそうです。女を愛しぬく男の純情は、ほかの男の胸をも打つのです。あと131日。

【第26話(最終回)】脚本:藤川桂介 絵コンテ:石黒昇 作画:白土武・芦田豊雄・岡迫亘弘・森田浩光・宇田川一彦

地球に向けて、全速前進。

ここへ来てデスラー戦法炸裂。真田さんの「こんなこともあろうかと」戦法も炸裂。打ち切りによって短縮したぶんを詰め込んだのではないかと思われ、この期に及んでエピソード盛りだくさんで忙しい回です。

最後まで作画は安定しませんでした。場面ごとに良く描けているのですが、明らかに違う画家の筆であって、人物の顔立ちがコロコロ変わるのです。個人的には芦田が好きですが、「全場面を一人で描きなおした」という熱心なファンもいたことを疑いません。

後半は、沖田さんの顔の描画に気合いが入ってます。見事です。赤い地球の照り返しが第一話を想起させ、感慨深いことです。

沖田十三こそ、地球へ還っても個人的に待っていてくれる人もいないのに、大勢の人が待っているという思いだけを支えに、老体に重責を背負いきったのでした。

対する古代はいかにも直情径行で浅慮ですが、人間性の対比をよく描けたのが、このシリーズの良いところだったと思います。古代に対して島の冷静さも全篇を通じて印象的でしたね。

雪は初登場時はお姉さんっぽかったのですが、だんだん少女趣味になりました。『さらば』につながる「愛」というテーマと悲劇性(とご都合主義)は、すでにここで示されていたようです。

西暦2200年9月6日ヤマト生還。宇宙は何事もなかったかのごとく平和な時を息ついていた。

西崎義展の功績は、本人の備えていた鑑賞眼と、稚気あふれる熱心さが、制作陣の本気を引き出したことだったろうと思います。冨野由悠季・安彦良和が「大人がアニメに本気になってもいいんだな」と思わされたというんですから。

罪は罪でありましょう。しかし人間の罪であるならば、その人間の理解ということも、裁きの外のこととも思えません。(『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』p.275)

そしてもちろん、彼の要求に応え得る技術を備えた人々が、すでに存在していたことの意義は計り知れず大きいと思われます。全力を投じて日本アニメ界に新しい時代を開いたスタッフ、キャストの皆様、本当にお疲れ様でした。

なおもここへ来て、思い返すに、完結篇も、復活篇も、あってよかったと思うのです。ヤマトを葬るのは沖田十三の手がふさわしく、その志を継ぐ者は、やはり古代進であるべきである。

なにもかもみな、懐かしい。



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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。