1952年、ルネ・クレマン『禁じられた遊び』(Jeux Interdits)

  20, 2016 10:20
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100年、これを預かって。

原作:フランソワ・ボイェル 
脚本:ジャン・オランシェ、ピエール・ボス、ルネ・クレマン
撮影:ロベール・ジラール

禁断の遊びは、本人にとっては遊びじゃないのです。幼い恋の悲劇は、それが人間の無力さの象徴だから切ないのです。1940年6月。戦争がなければ起きなかった小さな出会い。

古典的名作を順に見てみよう企画。でも意外に新しくて1950年代に入ってからでした。

オープニングクレジットは絵本の形になっており、「いまは昔の物語」というフィクション性を強調した導入になっております。昔の作品にはこういう約束事がありましたね。戦争の記憶が「お話」になりつつあった頃なのかもしれません。

本篇明けると、独軍の空襲から避難するフランスの人々。空撮とエイゼンシュテインふうの編集が光りますが、苦み走った辛口リアリズム路線なのは明らかで、観てるほうもあんまり喜んでる場合ではございません。

……と思うと、やっぱりフランス流ではあって、社会風刺魂は筋金入りのようです。貧しい生活を淡々と描くというのは日本の映画もよくやるわけですけれども、とらえ方と描き方が違う。

自動車を所有する都会のプチ・ブル。近代文明化される前の中世の気質を残した田舎の農民。受勲と受難。死と恋。大人の世界と子どもの世界。屋根裏と地階。幼子たち、若者たち。

叙情的な音楽を響かせながら、対比的な要素をテンポ良く積み重ねて、ドライな風刺性を際立たせつつ、しだいに熱を上げていく語り口は、これがフランスの論理性かと。

あまりにも有名な美しいアルペジオは、少女に対する時の少年の心の震えを表しているようです。流れる水の音は、あらがいがたい時の流れを象徴しているかのようです。

スティーブン・キングみたいな話じゃございませんので、怖いの苦手な方も安心して御覧いただけます。

少年の純情さに胸打たれつつも、空前絶後の最年少主演女優賞というべき少女の舞台度胸というか、カメラ前度胸に驚かされることです。

戦争のない世界は人類共通の願いのはずですが、戦争がなければこの出会いは生まれなかった。迂闊に「感動した」と云おうとする口に突きつけられた、これがフランス流メメント・モリの鋭い刃。

おそらく学校へも行っていない少年の口から流れる水のようにこぼれ落ちる祈りの声が、耳の底に響き続けることです。

イェペスの楽曲はバッハの無伴奏の味わいですが、チェロだったらだいぶ印象が違うはずなので、子どもたちの軽やかな身心を象徴するかのようなギターの音色を選択した時点でクレマンの勝ち。



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