Misha's Casket

ARTICLE PAGE

1965年9月、加藤泰『明治侠客伝 三代目襲名』東映京都

原案:紙屋五平 脚本:村尾昭・鈴木則文 撮影:わし尾元也 音楽:菊池俊輔 助監督:鳥居元宏

まさかの「藤山寛美を見る映画」でした。声を聴きながら「誰だ…?」と訝り、気づいた途端にいやもうビックリしたのなんのって。もしかしたらコメディ要素を狙っての起用だったのかもしれませんが、役者に底力があったので良い話になってしまいました。

DVDパッケージは、やや看板に偽りありで、組員背負って紋服なぐり込みというお話ではございません。もうちょっとワイルドに、緋牡丹渡世。「三代目」の捉え方にヒネリが入っておりまして、侠客という存在そのものへの違和感を隠さない脚本は、なかなかに骨があります。

映像については「これでもか」というほど惜しみなく加藤泰で、プロデューサーのお嬢さんだろうが何だろうが容赦なくフレームから取りこぼしております。うかつに真似すると、すごく陳腐になってしまうので気をつけましょう。

撮影のわし尾は、この後マキノさんの下で『日本侠客伝 血斗神田祭り』を撮る人ですが、ここでローアングルっぷりを鍛えたのかもしれません。

アラカンと鶴田。女好きのする優男たちが善玉で、いかにも暑苦しい大木実と安部徹が悪玉という、日本らしい対立の構図。三島由紀夫は見たでしょうか。加藤は高倉も丁寧に撮っておりましたが、鶴田の美しい表情を撮るにも天下一だったようです。

物語は、あくまで大阪市民のための公共事業の陰にあった「筋者」どうしの内輪もめであり、私的な復讐であって、マキノさんが庶民エキストラを大量動員して勧善懲悪の大団円を好むのとはまた違う、苦味走った大人の娯楽です。

大正デモクラシーボーイ(加藤監督のこと)には、どっかに私小説を愛する心があるのかもしれませんし、愛されキャラなのに寂しい影を帯びた鶴田という人の個性によるのかもしれません。

それにつけても、殴りこみはワイルドです。加藤監督は汽車そのものがお好きだったのだと思います。



Related Entries