2008年、榊英雄『ぼくのおばあちゃん』

  21, 2016 10:20
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優しい嘘って、いうこともあるんだね。

製作総指揮:木下直哉 原作:なかむらみつる(「ぼくのおばあちゃん」ぴあ刊)脚本:龜石太夏匡・榊英雄 撮影:宮川幸三 照明:鈴木康介 美術:井上心平 音楽:榊いずみ 
特別協力:愛媛県・大洲市 東京ロケ協力:木下工務店

柿の実、鶏頭、物干し台。ひっさつ・せーばい剣ッ。おとながまじめに子どもと遊んでくれた頃。大事にしたい作品。

第21回東京国際映画祭、日本映画「ある視点」部門正式出品作品。菅井きん、2008年8月29日、ギネス認定。世界最高齢(出演時82歳)主演女優。

予想通りの涙腺刺激剤ですが、見せ方がものすごく上手いです。照明、構図、カメラワーク、編集など、映画作りがPCに頼っていなかった頃の緊張感と実直さにあふれております……って、2008年!?

まだ若い俳優出身の監督以下、スタッフがアナログ時代の実写映画をなめるように見た人々なのだろうと思う他ありません。とはいえ、スローやストップモーションなどもたいへん効果的です。

特筆すべきは時代劇パートがあることで、この出来栄えが!(嬉) まさかのワンシーン・ワンカット。拍手。

そして何よりも、2008年の時点でこの風景を維持している大洲市に感謝と尊敬の念をお伝え申します。

俳優たちはたいへん楽しそうに演じており、なごやかな撮影現場だったように思われます。中学生以下の子役たちは、いずれもたいへんおりこうさんです。

おばあちゃん自身の半生の苦労は語られませんで、まさにタイトル通り、孫の目から見た、孫の胸に残る懐旧の日々。

今なお二十四時間戦い続ける男たちの悲哀の向こうから、劇中劇の楽しさと、回想シーンがさざなみのように打ち寄せる複層構造になっており、おばあちゃんがいた頃を描くカメラには、すべてのカットに美しい陽射しの色と情緒がまつわっております。

その手前で、若い母親たちは、どこの家庭でも自分自身の責任感を背負いかねているようでございます。

脚本には無駄がなく、終盤は回想の中の回想という入れ子状の構成と編集の技に泣かされます。

監督も原作もまだ若い男性ですから、小さな男の子への共感があるようで、彼らの姿を通じて、おばあちゃんと、お母さんと、お母さんだった人がおばあちゃんになった人への慕情を称揚する、今どきまっすぐな自己愛作品でもあります。

監督の名言:人がいなければ、映画はできない。

人とは、生まれて、迎えられて、見守られて育つものであり、時間が過ぎ去るということは、とても幸せなことなのです。


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