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1969年4月、小沢茂弘『緋牡丹博徒 二代目襲名』東映京都

看板降ろしたかったら、一番景気の良か時に降ろせ。

原作:火野葦平『女侠一代』より 脚本;鈴木則文 撮影:吉田貞次 音楽:木下忠司 助監督:本田達男 

爆発的ヒットを続ける緋牡丹シリーズ第4弾(予告篇より)

雄大な空撮から入ります。相変わらず主題歌があれですが、緋牡丹お龍(23歳)の名は、すでに一人歩きしているようです。

筑豊本線開通の陰にあった、汗と血と涙の任侠ドラマ。石炭産業の隆盛を経糸に、やや複雑な対立の構図を横糸に、侠客ものの約束事を配置よく織り上げる鈴木脚本は(例によって)会話が簡潔かつ流れが自然で耳に心地よく、編集ぶりは大胆なまでにドライで全体のテンポが早く、小沢らしい豪快なアクションシーン盛りだくさんで、たいへん楽しいです。

あおり気味のカメラが、藤はもちろん、男たちの表情も丁寧にとらえております。石山健二郎はどうにも筑豊の男がはまり役のようです。

このシリーズの良いところは、お龍さんの人柄が、まさに花のように咲いていて、男たちの対立は相変わらず汗くさく血腥いですが、根本的な印象がたいへん清く正しく美しいのです。

お話は第一作から続いておりますが、今回は無職渡世じゃありませんで、博打は一度も打ちません。組を背負って女だてらに土木工事を請け負います。

丘蒸気(鉄道)敷設事業と川筋者(船頭)たちの対立を背景に、アラカンの名演と、悪役・天津敏もいつも以上の芝居っけを見せて、小沢さんにゃ珍しいと言いたいほど娯楽性を抑えた社会派人情劇でもあり、二代目襲名の名に相応しい見応えです。

シリーズ1本目では「しょせんは女」と言われてピリピリする横顔が美しかったですが、今回は本人が女であることに甘えないからこそ男たちに対して切り札になるという気持ちの良い構図。ひと筋おちる涙が光ります。

要するに鶴田浩二の役柄を藤純子がやってるわけですが、女であることを十二分に活かして会話が書かれており、お龍さんの美しいイメージは脚本家たちのインスピレーションを、いたく刺激したのだろうと思われます。

男の稚気と女の品格のバランスも良く、作中人物ばかりでなく監督以下実際の現場の男たちが美女を中心に浮き立っていた様子が偲ばれ、その雰囲気が映画全体を愛嬌のあるものにしているように思われます。

「とんだ飛び入り」は、ちょっと人をからかうように目を大きくして笑った顔が魅力でしたね。この着流しの人が出てくると、もう明らかに映画全体の雰囲気が変わっちゃうので、もしかしたら脚本家泣かせだったのかもしれませんが、絵的にはまったく撮りがいのある男です。

このシリーズでは脇役なので、本人が主役を張るシリーズとは異なる役どころを見られるのが楽しみの一つでもあり、今回は天津との直接対決が、いきなり最終決着へ持っていく式の殴りこみとは違った面白さとなります。会話があるだけでも珍しいです。

中盤ちょっと台本が荒れたような気もしますが、構わず撮っちまうところが小沢天皇流ということにしておいて、クライマックスは水上ロケがめっぽうカッコ良く、お龍さんの乱れ髪が艶かしく、血みどろ具合が小沢らしく、しかも撮影は任侠映画全体を見ても珍しいほど美しいです。天津の死に様もよく撮られており、彼を見る映画でもあるかと思います。

レギュラーメンバーが多いシリーズで、配置が難しいと思うんですが、清川虹子の名場面・名台詞いっぱいでした。長門も相変わらず芸達者でした。緋牡丹マークの矢野組の半纏ほしいです。

なお、1960年代のナチュラルメイクは好ましいですね。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。