1969年4月、山下耕作『戦後最大の賭場』東映京都

  05, 2016 10:22
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わいらはしょせん、ばくち打ちですぜ。

脚本:村尾昭 撮影:山岸長樹 照明:増田章 美術:富田治郎 音楽:斉藤一郎 助監督:牧口雄二 ナレーター:柳川清

この物語の登場人物および設定はすべてフィクションである。珍しく断り書きが出る通り、硬質なナレーションを起用したリアルなニュース映画調から入ります。遠めに撮るカメラで大作風味。

やがて対象を絞り込んで、構図とロケハンのセンスが燻し銀色に光る山下流ハードボイルド任侠ホームドラマ。親分衆が勢ぞろいする大花会と大花会の間にあった心理劇。

リアルな世界観と任侠劇最大の泣かせどころである義兄弟愛が無理なく融合し、女たちの内助の功ぶりも潔く、安倍徹も悪役なりの男の意地を見せて、たいへんハードな物語ですが、後味の良い傑作です。必見。

登場人物が多く、対立の構図は複雑ですが、村尾の脚本は無理なく流れがよく、ほとんど音楽を使わずに、真情あふれる鶴田の芝居と、貫禄をにじませ始めた高倉(公開時38歳)の持ち味を最大限に活かします。

義理と人情秤にかけりゃ、どっちも重くて遣る瀬ねェ。こんな小さな盃だけど。男と男がまっすぐ見つめあう姿を真横から撮るのが山下流。ほかの監督ではあんまり見られない構図です。

鶴田は小指が何本あっても足りなさそうな中間管理職で、ギリギリで顔だちに若さを残した高倉は売り出し中の組長。宮川が立派になりましたというべきか、二人のこれまでに演じてきた役柄の集大成。

暑苦しい悪役俳優たちがこれでもかと雁首ならべた中に、昔気質のおきれいな人たちが清楚な雄花を咲かせて、紋服に装ったり、スーツを着こなしたりと、見た目にもたいへん楽しいです。

現代を舞台にした実録調は、いつもの「商売仇のいやがらせが反撃に収斂する」というのとはパターンが違うわけで、そのぶん事情の説明が必要ですから、序盤ややのんびりめですが、急展開するのが山下流ですから頑張りましょう。

『日本侠客伝 絶縁状』では時代に合わせて商売替えしていた侠客たちが、『暗黒街最後の日』の時代には企業体らしい偽装を巧妙化させておりましたが、これはそういう生き残り戦略の行き着いた先。反共を口実に保守政党に近づいていく姿が忌憚なく描かれております。

『緋牡丹博徒』では、やや遊びすぎに感じられた山下流のセンスは、ここでは気高い悲劇となりました。そして山下監督の信じるところを言葉にしてみれば、仁侠映画最大のテーマは、観客に「堅気でよかった」って思わせることなのです。




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