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第四十回「はかなき歌」

やっと観た。兎丸無念の回はできが良かったと思うので、しばらく余韻にひたっていたのと、滋子ちゃんが出てくるといつも若干テンションが下がるので放っておいた。

なんであんなに蓮っ葉なキャラクターになっちゃったんだ、たまきはる建春門院(´・ω・`)

撮影は細野氏だったので期待した。期待をうわまわる美しい画面だった。演出は中島氏だったので情感あふれるゆったりめの話運びに期待した。期待通りの物柔らかな中にも緊張感を保った展開だった。

脚本は「すごろく人生」(お前ら本当にそれでいいのか)な二人だけが相変わらず言わなくてもいいようなモノローグを垂れ流しているが、そのほかは余計なセリフがなくなり、時空間を異にする場面をザッピングしたまとめ方も効果的で、本当に肩のちからが抜けてきたと思う。

今回は(というか今回も)脇固めの男性陣がいぶし銀の光を放った。信西の時代を思い出して「すまいせちえ」(懐かしいね)の計画に浮き立つ西光の、にじみ出るような嬉しさの表現がよかった。いい俳優さんだ。

成親の目のちからと、顔筋の動きとしてはわずかなのに確実に心情を伝える表情の変化も刺激的。じきに見られなくなってしまうかと思うと残念だ。

北条エンケンと三浦殿もすてきだった。杏ちゃん 政子も「川から拾ったばかりでまだ泥で汚れているが磨けば光る水晶」みたいな硬質な輝きが心の清涼剤だ。

ナレーターは、しゃべらなければ非常にいい。藤九郎がやや落ち着きのない従者らしい動きをするのに比べて、ゆったりとした佇まいが(後の)大人物らしさをよく表している。

ナレーションだけは何度きいても「要らないだろう」と思う。語り口のまずさからいっても、必要性からいっても。そもそも「地の文による状況説明がないと、祝典の挙行によって支配者と側近のつながりが一層強まった」程度のことを理解させられない(かのように視聴者に提出する)ドラマも他にあまり見かけないんだけれども……

伊藤五の見せ場があったのが嬉しかった。抑えめな演技と、不安な緊張感を保った撮り方は、福原に引っ越してからこっち、どの人物・場面の描写についても冴えている。ホームコメディ的なギャグがなくなったのも本当にありがたい。「もうじき終わるんだ」という粛々とした雰囲気が現場にあったのかもしれない。宇梶頼政はあれだけの出番というのは勿体ないですな(´・ω・`)

楽や舞の使い方は的確だったと思う。長すぎず、脳天気すぎず、余計なBGMも重ねなかったし、華やかさの陰に先行きの不安感。撮影と編集の工夫が光っていたかと思う。

というわけで「フラグ」は立ちまくりだったので予想はできたが、とつぜんの訃報には、とくに歴史ファンというわけではなく観ている人(なんて既にいないのかもしれないが)には納得がいかなかっただろう。まぁ昔のことで何にしても死因ははっきりしない(急死するほどの腫れ物って)のを、あえて病状などを描写せず、きれいに終わらせたということだろう。クドクドと遺言を述べるなど、別れの場面を演出しなかったのは良かった。セリフは少ないに越したことはない。

深キョンは本当に良い顔をするようになった。背中から撮ったのもいい。ここんとこ沈みがちな時忠の知力は、しかし衰えていないという描写、抑えた演技もツボだ。そこから清盛の決意表明へつないでいくのもいい。かつてのように話があっちこっちしなくなった……が、清盛の言は、先見の明があるというよりは、結果を知っている現代人の目で先走って予言のようなことをいわせているのがやや鼻につく感じだが、後白河院の感動的なようで後づけの言い訳がましい述懐と合わせて、いつものことなので仕方がない。

全体に清盛の出ていない場面の出来がよいのも、いつものことなので仕方がない。松ケンは足元の弱くなった五十八歳らしさをよく演じていると思う。五十歳の誕生日は覚えていなかったが五十八歳は覚えていたのと、保元の乱から年数をかぞえられるようになったのが「お利口になったねぇ」としみじみした。さがり眉毛に白いものが混ざっているのはメイクさんの工夫だろうけども、遠くを見るような俳優の表情も雰囲気もいい。ただちょっと声が軽いのも、いつものことだ。なんか舞台の仕事とかするといいと思う。厳島ロケは美しかった。清盛の着た赤と盛国の黒が利いていた。

というわけで全体に良かったんだけどもう一回観たくはない。なにせたまきはるちゃんの一人学芸会っぷりが……

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。