1944年4月、黒澤明『一番美しく』

  24, 2016 10:20
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大丈夫。一生懸命やればいいのよ!

脚本:黒澤明(まさかのノン・クレジット)

撃ちてし止まむ。情報局選定国民映画。ですが、戦意高揚に名を借りた少女の成長物語であり、青春映画の傑作と思えばいいです。もんぺ穿きでも下駄履きでも、女の子はいつも女の子。おばあちゃん達の若い頃。

光学機器の製作所に動員された女学生だと思うんですが、16歳くらいのお嬢さんたちが、手作業でレンズを製作しております。当時の製作技術・機材が分かるのが貴重です。

彼女たちの奮闘ぶりを見守る製作所のおえら方が、またいかしたジェントルマン達で、『あゝ野麦峠』みたいなお話ではないので、安心して御覧ください。志村喬の役作りが(相変わらず)面白いです。

なにせ皇国の女子がいっぱい。いまどきのアイドルよりずっと野暮ったい顔立ちですが、ぷっくりした頬っぺがまぶしいです。

寄宿舎から職場へ向かう道中を、ただ歩くのではなく鼓笛隊として編成されており、その練習風景も少女たちの心理的葛藤を示す場面として上手に使われております。鼓笛隊に編成されている理由は……まずは団結力を高めるためですが、たぶん若い娘さんたちが道に広がってキャッキャウフフするのが戦時統制化の雰囲気としてよろしくないというようなことだったんじゃないかと思われます。

が、もちろんそのキャッキャぶりが全篇をいろどってるわけでございまして、この「大勢の人間が寄り集まった姿がなんとなく微笑ましい」というのが黒澤の特徴で、マキノさんともまた違うのです。小沢さんが近いかもしれません。監督の人間性が画面ににじみ出るような気がするというのも、思えば不思議なことではあります。

なお、主役の渡邉ちゃん役が、すっごい美人です。

撮影もきれいで、編集がすごく冴えてます。若い女優たちのナチュラル演技を活かしたドキュメンタリー調ですが、じつは脚本上の仕掛けも盛りだくさんで、山場のたたみかけるような語り口がよく、たぶん黒澤の戦前映画の中では最高品質。映画史全体から見てもハイレベルな一本だと思います。



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