Misha's Casket

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1958年3月、加藤泰『源氏九郎颯爽記 白狐二刀流』東映京都

姓は源氏、名は九郎。覚えていてくれとは頼まん。

企画:辻野公晴・小川貴也 原作:柴田錬三郎 脚本:加藤泰 撮影:坪井誠 照明:岡田耕二 美術:塚本隆治 編集:宮本信太郎 音楽:高橋半 助監督:長谷川安人

総天然色、東映スコープ。太陽の色、空の色、海の色。主人公が着た白い着物、宝物のありかを示す赤い色硝子。タイトルバックでどんどんお話が進む斬新な演出に乗って、冒頭からカラー撮影の良さを存分に活かした画が続きます。

まだテレビは白黒だったはず(1953年放映開始)ですから、カラー映画を見に行こうよというのが重要な娯楽として成り立っていたのでしょう。華やかな着物・ドレスを着た女性キャラクターの活躍ぶりからいって、女性観客向けでもあり、デートにも最適だったのではないかと思われます。流暢な日本語を使う外人俳優とフラメンコが起用されて、時代劇に目新しさを加味しております。

主人公は九郎判官の子孫だそうで、中村錦之助(1932年生まれ)がピカピカに若くて綺麗だった頃。改めて、まだ若いのに堂に入ったお芝居なさる人です。悪者退治の瞬間に、どこから花枝が出てきたのかは訊かない約束。

白い着物で美化された素浪人という役柄は、のちに里見浩太郎がテレビで繰りかえし演じたわけですが、その里見が若侍の役で登場しているのが楽しいです。

物語の舞台は幕末、義経ゆかりの兵庫。坪井による構図は、全篇を通じて、カメラの間口とセットの奥行きを活かした見事なもので、あの異様に低いところから狙う加藤式ではありません。

錦之助演じる美剣士と、大川恵子演じる女性の気高さの周囲に、欲に駆られた男たちの滑稽みをちりばめた脚本に乗って、喜劇俳優たちが大活躍。悪役は西海の海賊だったのが廻船問屋になったそうで、度胸とカネ回りの良さを兼ね備えた、悪役なりに魅力的なオヤジです。

後半は説明を端折った展開の早さが加藤流。長回しの殺陣と自然光をよく捉えた美しいロケが続き、大自然の脅威の中での男と男の対決がクライマックスとなって、娯楽要素の大盤振る舞い。

秘剣、揚羽蝶!

日本特有の、女のような顔をした(女優よりも化粧の濃い)美剣士による世直しという荒唐無稽なヒーローものですが、世直しというからには社会悪が存在するわけで、カネがものを言う世の中という社会風刺の要素があり、庶民描写のリアリズム志向と、錦之助の生真面目な個性もあって、全体にドライな、引き締まった味わいです。

川霧煙る橋や山間の古径、六甲の御殿など、セットは何気に豪華です。エキストラの数も多いです。いい時代でしたね。



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