1959年1月、岡本喜八『暗黒街の顔役』東宝

  31, 2016 10:21
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製作:田中友幸 脚本:西亀元貞・関沢新一 撮影・中井朝一 美術:阿久根巌 録音:刀根紀雄・下永尚 照明:森茂 音楽:伊福部昭 監督助手:竹林進 編集:黒岩義民

「3大スタア豪華共演」(予告篇より)なんですが、兄弟仁義ではなく、できの悪い実の弟に兄ちゃんが苦労させられるというホームドラマ。子どもの間では『禁断の惑星』のロボットくんの玩具が流行っていたようです。

歩行困難な子どもが大勢いるのはポリオの後遺症と思われ、ギャング映画の一種ではあるんですが、社会派リアリズム路線も取り入れております。子どもたちの世話をする女医さんは素敵なキャラクターです。

鶴田は熱いのに寂しい影を背負った苦労症というキャラクターを確立しており、早くもヤクザの世界への懐疑を口にして、後の井上梅治作品や山下耕作作品につながっていく要素を確認できるのが興味深いです。

渡世上の兄貴を演じる平田昭彦がえらい美男で、鶴田との美男同士の殴り込みという空前絶後の場面が観られますが、キャラかぶってる感は否めません。

なんとなく、あんまり予算はかけてない感じで、しかもロカビリーを唄うアイドル歌手という海外の流行に追随した宝田明を売り出したかったらしく、前半のミュージカル映画調の演出に尺と費用を投じてしまい、間延び感も否めません。

おそらく『理由なき反抗』を念頭においた青春ストーリーの一種なんですが、大学出の兄弟がなんで渡世人の世界にいるのかが説明されておらず、ややイメージ先行というか、寄せ集めな世界観の基盤が弱い感じが否めません。

でも構図と編集には喜八流アイディアが時々光ります。後半に平田と宝田が出てこなくなり、佐藤允が演じるヒットマンが登場すると、明らかに話の締まりと画面の密度が濃くなるので頑張ってください。

美男が大勢いるに越したこたァないのですが、出せばいいってもんでもないです。なお美男メイクは時代劇を引きずってるようで、白粉濃い目な感じです。

三船さんは39歳。だいぶ肉がついて渋みも増し、思わず「よかったなァ松永。体治して更生できたのか」とか言ってやりたくなってしまいますが、むしろ興味深い使い方というべきで、しかもやっぱり画面を支配してしまうので、あなたは黒澤さんとこで主役やってなさいと言ってやりたくなったりもします。

なお、よく考えると何もしてない河津さんの底籠もる悪役ぶりと、そんな「パパ」に対して一歩も引かない情婦役の草笛光子が素敵です。女性が都合よく使われているようでもありますが、こんな世界にもいい人もいるという要素を美男と女性に担当させたわけで、その点のバランスは良いと思います。

これが成功しないと、次がなかったはずなので、ややメロドラマ調のホームドラマな脚本を新人監督に撮らせてみたところ、思いがけず後半で斬新な個性を示したので、今後に期待ということになったかと思われます。




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