2016/11/01

1962年11月、内田吐夢『宮本武蔵 般若坂の決斗』東映京都

勝ち方にも、いろいろある。

製作:大川博 脚本:内田吐夢・鈴木尚之 撮影・坪井誠 美術:鈴木孝俊 音楽:小杉太一郎 助監督:山内鉄也

吉川英治不朽の名作、完璧の映画化第二弾(予告篇より) いつ見ても「画が大きい」と感じられるのが内田流。もはや日本の原風景の貴重な記録というべき美しい自然と、品格と情緒の共存する吐夢話法をじっくり堪能いたしましょう。

そうです。例によって、男のドラマになるまでが長いのです。が、ちゃんと錦之助らしい活躍と坪井による雄渾なカメラワークを拝見できますから頑張りましょう。

セットもたいへん豪華です。映画産業はそろそろ斜陽しているのですが、五輪へ向かう頃の日本の活力の表れでしょうか。

脚本はレベルを上げており、含蓄深い名台詞が一杯で、吉岡さんちと宝蔵院さんちが登場し、役者がそろった感とともに、各場面ごとの話の流れとしても、いちいち面白いです。

たけぞーは姫路城を出て、人間らしくなりました。清十郎は江原真二郎で、いかにもいいとこの若様ふう。

僧兵の怖さが良く分かる宝蔵院シーンでは、山本麟一が阿厳坊で、得意の誇張ぎみな演技が効果的。

当然ながら、キャスティングが王道路線なわけでございまして、井上雄彦のサブカル的アレンジと比較するのも一興です。

内田は、というか内田もというべきか、男性ドラマの枠の中で女性と子どもをたいへん丁寧に撮る人で、女優たちは清楚なタイプも色っぽいタイプもたいへん美しく、品があります。江戸初期の髪形と服装が魅力的。10歳くらいの男の子も登場しますが、これがすっごくいい子です。ちょっとだけ登場する赤ちゃんも可愛いです。

なお台詞の中に「能芝居」という言葉があるのが印象的です。下宿の女主人による『鉢木』も魅力的。

お通さんは苦労させられてますが、入江若葉は役柄としても素としても控えめな美しさの中に芯の強さが感じられる、この時代らしい良い女優さんで、三年も待っててもらっても礼の一つも言わない男でも、ついて行くのが女の意地と見切ったなら頑張れ、立つんだお通。

又八っつぁんは、すっかりダレておりますが、木村功にそれなりの見せ場を与えているところも内田流……だと思います。本位田のお婆(又八の母)もコメディリリーフなわけですが、女優の上手さとカメラワークの工夫によって面白い場面になっております。早めに切り上げるセンスも大事。

物語のテーマは「真の強さとは何か」で一貫しておりまして、未熟者めと繰り返す武蔵を囲む自然美が、日本の若者の心の清冽さを象徴しているかのようです。

現代女性と致しましては、清濁併せ呑んだ月形龍之介と黒川弥太郎の僧侶出で立ちのダンディぶりをも眼福とさせて頂きましょう。合掌、南無妙法蓮華経。

次は伊賀方面へ行くらしいです。



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