1965年9月、岡本喜八『血と砂』東宝&三船プロ

  04, 2016 10:20
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うまく行くと思ってなきゃ、戦争なんかできねェよ。

製作:田中友幸 脚本:佐治乾・岡本喜八(伊藤桂一「悲しき戦記」より) 撮影:西垣六郎 美術:阿久根巌 録音:西川善男 照明:西川鶴三 音楽:佐藤勝 監督助手:山本迪夫 協力:日本管楽器株式会社

昭和四十年度芸術祭参加作品。古今無双・空前絶後の戦場リアル娯楽ミュージカルお色気コメディ戦争諷刺アクション映画。もうどこからどう突っ込んで、どう表現したらいいやら。1945年の椿三十郎って言ったら岡本さんか黒澤さんのどっちか怒るかな!?(いやたぶん大丈夫)

昭和二十年、夏。北支戦線。喜八流戦場リアルは冒頭から「話の筋とか見えなくてもかまわねェから思いきりやっちまえ!」的楽しさと、冴えに冴えたエイゼンシュテインふう編集技が画面に溢れ返って、聖者が街にやってくる。生まれ変わって七生報國。

金鵄勲章受章のヴェテラン下士官と18歳・19歳の軍楽兵たち(通称ボーイスカウト)のお話なわけで、原作ではふつうの兵科なのを監督のアイディアでミュージカル仕立てにしたそうです。吹替え録音の楽団名はクレジットされておりませんが、日本のジャズメンのレベルは高いです。

おとな同士の人間関係は、45歳の三船さんの人情味あふれるワイルドさと、仲代さん33歳(1932年生まれ)の似ても焼いても食えない冷たい美形悪役というべき個性が最高に噛み合って、喜劇俳優たちの名演技の援護を得て、慰安所のお春さんはすこぶる開放的で、ボーイスカウト達は立ってるんですが、立てないのであります。

いや、立ってるから立てないのであります。

男の人にしか発想できないお下品な笑いは、だからこそ人と人との心をつなぎ、音楽は尚さら「ハーモニー」を生み、観客の心をしっかりと若者たちに着地させるのでした。

後半は特殊効果班大活躍。美術班入魂のトーチカ・火薬の物量作戦は、終戦後20年の日本の景気を偲ばせます。

作戦行動を描いた作品はいくつもありますが、これほど克明に、緻密に描いたものは珍しいといっていいかと思います。音の使い方の細やかさは絶品です。ヒーローの造形からいうと、西部劇や時代劇の踏襲のようでもあり、スパイ映画の流行に乗っているようでもあります。岡本監督も本当に映画が好きで、映画作りを楽しんだ人だったのだろうと思います。

戦争映画というのは、戦意高揚と称されるものでさえも、じつは映画人たちの平和の願いと戦争批判の心を描き出しているものです。これほどのフィクション制作が可能なのは、もちろん平和だからこそなのです。

「製作者の意図を尊重して」という注意書きを付さなければならない要素がいくつかございまして、今となっては(いや何時の時代でも)その点を冷静に観られる人限定ですが、大切にしたい作品だと思います。



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