1968年3月、小沢茂弘『博奕打ち 殴り込み』東映京都

  09, 2016 10:22
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今夜を縁に、くたばったら骨を拾い合う仲になろうぜ。

脚本:笠原和夫 撮影:赤塚滋 照明:増田悦章 美術:井川徳道 音楽:津島利章 助監督:本田達男

名作中の名作。じつは『総長賭博』は博打を打ってなくて、ギャング路線を焼き直した暴力映画なんですけれども(三島のせいで)名前だけ売れちゃったというところがあって、『博奕打ち 殴り込み』というタイトルと内容が完全に一致している気持ちよさでは、こちらが格段に上。

皮肉をきかせた変則的な兄弟仁義と変則的な縄張り争いに、直球ロマンスと親子人情劇という鉄板を重ねて、よくぞ笠原がここへ来てこれだけ持ち直したなと。『総長賭博』で兄弟仁義の真逆を行ったところが(三島のせいで)ウケちゃったので、腹がくくれたのかもしれません。

副題は「野良犬」でもよかったのかもしれませんが黒澤の名作とかぶっちゃいますからね。

賭場にチラホラと背広ネクタイ姿の月給取りもいる昭和5年の社会を背景に、すでに観客が任侠路線を見慣れて「渡世うち」の約束事を心得ていること、さらに俳優のイメージが善玉も悪玉も確立していることを最大限に活かして、お話がどんどん進みます。撮るほうも早いが観るほうも頑張れみたいな正調・小沢節。

玉川良一がお気に入りのようで、夢路いとし・喜味こいしを起用した、タイトルロール明けのコメディリリーフ部分が冴えてます。ミヤコ蝶々の毒舌も絶好調。待田京介が悪い子ぶってまして、大陸帰りの洋装と着流しヤクザのタイマン勝負は見どころです。河津清三郎を信用してはいけません。

「盃をもらう」といったところから手打ち式への鮮やかな切り替えは、慣れないと戸惑うんじゃないかと思わるほどですが、マニア向けが良いほうに作用した好例だろうと思います。

撮影はたいへん手堅く、話法を充分に心得た人で、安心して観られます。

オープニング音楽はたいへん粋で、全篇を通じてベースが活躍するジャズ調の音楽が魅力です。もともと「フィルムノワールを日本でもやりたい」ってことで始まったのが『暗黒街』などのギャング路線と思われ、その和風テイストが任侠路線ですから、ここへ来て見事に融合したのでした。鶴田で始めて鶴田で終わる。(まだ終わらないんですけれども)

変則的な兄弟仁義を活かした変則的な殴り込みを描くクライマックスでは、笠原&鶴田コンビによる一世一代の名台詞が出ましたが、ここには再現しませんので、観てのお楽しみ。

なにげに「ヤクザの世界における兄弟のあり方」という皮肉が観られるのも笠原流。

魚河岸柳が風に揺れ。隅田の川風、たもとに入れて。義理と人情に命を賭ける。男伊達なら日本一です。小嵐幸次郎ひとり行く。

これがヤクザの、これがヤクザの生きる道。どうしても小指が上がっちゃう鶴田浩二は、体格も小さく、周囲に濃い~~顔が「これでもか」と揃ってる中で相対的に最も優男なんですが、見せ方を心得てる人で、格闘シーンの真っ最中にも落ち着いて芝居ができるのでした。

実生活やスタジオ入りの様子など、良くも悪くも大スターらしい人だったようですが、親分衆がズラリとそろった中に「ごめんなすって」と入っていく役が多かったわけで、これはやっぱり役者の中にもできる人とできない人がある。さらにアクションが華麗で、撮りっぱなしでも舞台劇のように楽しく観ていられるんだから仕方がない。なおかつ、演技の中でも若手や女優を引き立てることができました。

同様に観客人気に裏打ちされた尊大な態度から「天皇」とまで呼ばれたらしい小沢とは気が合ったのかもしれないなァ(怖い考えになってしまった)と思うなど。



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