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二次創作同人誌がだんだん売れなくなるわけ。

もし、あなたが「アニパロ同人誌」というものを生まれて初めて買うとしたら、何を基準に選びますか?

いわゆる「ジャンル」が何種類もあって、そのいずれもが同じように流行しており、二次創作の内容としては似たりよったりだとしたら? もともと自分の好きなアニメですね? 知ってるキャラクターが出てくるものですね? 

別に、それ自体は悪いことではありません。例えば「ものまね歌合戦」を視聴する際に、もともと知らない歌手の真似を見ても、あまり面白くないのと同じなだけです。

では、有名な台詞が引用されていて、原作が一番もり上がった「あの試合」の後日談という体裁が取られているものと、原作とは関係ないオリジナルストーリーが連載されていて、バックナンバーを読まないと話が分からないのに「バックナンバーなど無い」と云われたら?

前者を買って帰るでしょう。

同人誌というのは、毎回完売することが同人の目標です。原則的にバックナンバーは存在しません。プロの単行本というのは、増刷の約束が(ある程度)できているものです。それを売るためにも連載を続ける。話の途中から雑誌上で読み始めた人が「単行本を1巻から買ってみよう」と思ってくれるからです。

二次創作がオリジナルストーリーの長期連載になってしまうことはよくあります。それ自体も悪いことではありません。二次創作者自身が創意工夫を発揮した結果であり、それがなければ同人界が出版界の青田たり得ることもないからです。

二次創作者にも描きやすいキャラクター・描きやすい世界観がある。一度手ごたえをつかんだものは長続きさせたい。固定ファンもつきます。でも、将来の読者は減る一方です。なぜなら、就職などをきっかけに即売会へ来なくなる人が必ずあるからです。

だから、生き残るためには、減った人数以上の新規読者を獲得し続ける必要があります。

では、プロの単行本のように、バックナンバーに増刷をかければいいのかというと、せっかく即売会へ来て、一種類の同人誌のバックナンバーを10号そろえて終わりにする人はありません。

限られたお小遣いで、いくつものサークルから買いまわろうとするからです。

だから最新号が勝負です。それには連載の他に、パンチの効いた読みきり短編・中篇を載せる必要があります。その他に息抜き的な4コマ漫画や、グラビアとして通用するフルカラーイラストもあるといいでしょう。

べつに暴露話じゃありません。ビジネスの基本として、順を追って考えれば、部外者にも分かることです。

で、そういう複合的な雑誌を編纂するには、本当に複数の会員が所属している同人会(サークル)であれば、分担することができます。原案を他人に出してもらうこともできる。

でも、サークルとは名ばかりで、最初から「個人で出品するものだ。売上金を持ち逃げされると困るから誰も信用できない」なんて思ってる人は、すべて自分で用意する必要があります。長続きするわけがないのです。

「もっと楽に稼げるはずだった(から就職しなかった)」という人は、最初から自分が勘違いしていたのです。

【現役は忙しい】

パロディ、オリジナルを問わず、創作同人の世界で生き残っている人というのは、ものすごく努力しています。忙しいです。寸暇を惜しんで描かなければ、次のイベントに間に合いません。ツイッターでくだ巻いてる暇はありません。

逆にいえば、ツイッターで怒ってばかりいる人というのは、売れていません。昔やっていたけど、やる気なくしちゃった人です。再び売れるために努力するよりも、ツイッターで怒ってるほうが楽だから、楽してるのです。

現役は、楽をしておりません。

カネがほしいだけなら海賊版を売っている。じゃなくて、少しでも自分自身の固定ファンの期待に応えたい。さすが何々さん、この発想はなかった、ひじょうに面白かった、カネを出した甲斐があったと云ってもらいたいという気持ちがあって、徹夜も腱鞘炎も辞さずに制作している。

それを売ってはいけないってどういうことだと思うから本気で怒るのです。キャラクターは他人の創意に基づくものでも、それをアレンジするためのアイディアは自分が出したのです。ここは経験したことのない人にとっては「なに勝手なこと言ってやがんでィ」と感じられるところです。司法も判断に迷うところです。

でも同人の理屈としては、著作権者とは必要があれば自分で話し合う。業界の自治権に国家が介入するな。著作権者のクレームを警察が代行するな。

お笑い芸人たちが工夫を凝らした「ものまね歌合戦」が、歌手本人または所属事務所からの差し止め請求がない限り、テレビ番組(=テレビ局の商売)として成り立つように。『妖怪ウォッチ』が有名テレビドラマの権利者から差し止め請求を受けない限り、放映し続けられるように。

遠慮するのかしないのか、配慮するのかしないのか。なにを誰の自由と思うのか。人命や麻薬でも関わっていないかぎり、それを決めるのは権利者各個人である。どこまで行っても、こういう話でしかありません。

パロディでなければならない必然性はありません。だからこそ守るために本気になるのです。カネになればなんでもいい・エロけりゃなんでもいいじゃないのです。

「どうせみんなただのエロじゃん」という偏見を持っている人は、自分自身が淘汰されるのです。自分自身の固定観念にしたがって、ワンパターンなものしか書かないから、常連から見切りをつけられるのです。

生き残っている人は、よく勉強しており、専門知識が豊富で、描画もどんどん腕を上げています。

自分自身に他人を頼る気持ちのある人は「プロは編集者にチェックしてもらえる」などと言ってしまう。でも同人は、編集者が励ましても叱っても相談にも乗ってくれないからこそ、自分で自分の面倒を見る必要があるのです。

愚痴をいってる暇があったらアイディアを出すという奴だけが生き残ることのできる世界です。それでさえ難しいのです。簡単にかせげると思い込んだバブル組が参加を抽選制にしてくれたからです。そうです。あなたです。最新流行に乗ったつもりで、自分で自分を押し流したのです。

じつは「現在では二次創作・BLといえども、エロス一辺倒とは限らない(多様なアイディアの宝庫である)」という話を聞いていられず、「アニパロは原作を無視したエロに決まってる」と対抗意識をむき出しにする言説は、一見すると若者による非行文化の最先端のように思えますが、じつは「自分の時代だけが正しい」という、中高年ルサンチマンの一種に過ぎません。



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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。