1959年4月、沢島忠『お役者文七捕物暦 蜘蛛の巣屋敷』東映京都

  24, 2016 11:01
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若旦那はやめてくれ。ばか旦那だよ。

企画:辻野公晴・小川貴也 原作:横溝正史 脚本:比佐芳武 撮影:坪井誠 照明:和多田弘 録音:野津裕男 美術:井川徳道 編集:宮本信太郎 音楽:鈴木静一 和楽:望月太明吉 助監督:山崎大助

お役者やくざ一番手柄、痛快時代劇スリラー。(予告篇より)

映画らしい大きな画、豪華なセットとお衣装を堪能できる快作。坪井カメラは容赦なくブンブン首を振っております。大名家にまつわる謎解き物語で、たいへん丁寧に語られておりますが、画面はものすごくダイナミックです。

主人公は歌舞伎俳優になるのがいやで、下町の長屋で遊び人暮らしをしてる「目から鼻へ抜ける」おにいさん。溌剌と明るい錦之助は実年齢で美青年盛りの27歳ですが、芝居は堂に入っており、表情の作り方がいちいち決まってカッコいいです。チャキチャキのべらんめェ。姿勢が美しく、殺陣は眼にも鮮やかです。

横溝らしい凶悪事件続きですが、凶行の場面はマイルドに美化されているので安心して御覧いただける部類だと思います。主人公と町娘のラブコメが主題の一つで、金田一ものとちがって明るく進行いたします。

老若男女が楽しめる、女性を誘って観に行ける、そういう時代の映画です。

これを高校生男女の話にすると現代のアニメ番組になるわけで、やってることはそんなに変わらないのです。それはともかく。

主人公が探偵として動き出すまでが長いんですが、二つの大名家と歌舞伎の家、主人公の長屋暮らし、目明しの親分さんたち、浪人の一党と、多数の登場人物と場面転換を見事にさばいて、テンポは早いです。

劇中劇が中盤の見せ場で、舞台に蝋燭を並べていた江戸時代の歌舞伎を完全再現しました。中村さんちが総出演の勢いで、いちおう役名はついておりますが、ほぼご本人出演。

途中、お姫様を誘い出すために大店の旦那が「女形に紹介してやる」という場面がありまして、役者が演技する姿を示して「御覧なさい、あの美しさを」っていうのが印象的です。

この日本では、女性が女装の男性を見て忌避感を示さず「きれいだわ。お近づきになりたいわ」って言うのです。男性陣もそれを期待している。不思議といえば不思議な現象ではあります。それはともかく。

町方の主人公と、その実家の役者たちを大名家の事件に関わらせていく脚本は、やや強引ではあって、話が見えない感じがしばらく続きますが、主人公が役者出身であることは事件捜査にきちんと活かされており、多羅尾伴内ふうの楽しみもあるわけで、もとより娯楽作品ですから、錦之助の芸達者な様子を楽しむのを主眼にしてよいと思われます。

時代劇映画流行の峠はすでに越えてしまった頃と思われますが、だからこそ監督も撮影も俳優も練達の技を見せてくれるという、良い時代だったと思います。




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