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男の気晴らし、女の気晴らし。

「周囲が女の話ばかりしているので身の置きどころがない」という男性と、「周囲が男の話ばかりしているので身の置きどころがない」という女性は、一見すると確かに似ています。けれども、決定的な違いがあります。あわてて連帯したがる前に、まず知っておきましょう。

男の人が社会的に挫折を感じると「男同士で酒でも飲むか」ってなるわけです。

立場が違うと、どっちかが道化役になって相手の機嫌を取ることになる。小津映画『生れてはみたけれど』みたいに。だから似たような者どうしで集まる。

カネのある奴らは「女の子」のいる店へ行く。そのカネがない男たちは、おでん屋台でコップ酒、寂しい肩を並べてってことになるわけです。仁侠映画によくありますね。

いっぽう、女性は本能的に「男の人になんとかしてもらおう」と考えるもので、これが新宿二丁目方面から奇妙なクレームが挙がることの原因の一つなのです。

【同性志向男性の気晴らし】

同性志向の男性というのは「女性に興味がない」というよりは「男性に興味がある」わけで、自分でも「おかしいんじゃないか?」とか「なんで俺だけこんな生まれつきなんだ。神さまは不公平だ」とか、さんざん悩んで来たわけです。

それが成人して、お酒を飲めるようになって、そういう男が集まるという店へ行ってみる。「お初にお目にかかります。以後万事万端よろしくお願い致します」ってなるわけです。たまには知った顔を見つけて「なんだ、お前もか」ってなる。現実が平等でない以上、お互いに秘密を守るのは当たり前。

そういう男の友情に女が憧れる気持ち自体は昔からあったのです。けれども?

男同士の会話は「勘違いした女が甘えてくるのが気持ち悪い」とか「おごってもらえることを最初から期待してるのがいやだ」とか「自分がモテると思ってる。あの顔で」とかいうものである可能性も高いわけです。

彼らも女性に面と向かっては言わない。女性がいないところだと思うから安心して、お互いに向かって愚痴を言う。SNSにも流さない。

彼ら本物のマイノリティでさえ、SNS発言には気を使っているのです。「男が、男が」と悪口ばかり言うのは女性です。女性には「弱者特権」があるから言ってもいいと思っているのですね。女性にその気持ちがある以上「私はフェミとは別よ」とは言えません。

だからこそ、彼らは実在店舗を必要とする。ゾーニングされた場所が必要なのです。女性同人が「男はコミケのレディースデイに来るな」というのとおなじです。

彼らが「女は(SNSで好き勝手なことが言えるから)気楽でいいよな」という気持ちを共有できる相手がいるとしたら、ストレート男性です。その一部がオタクとも称される二次元コンプレックス。その一部がロリとも称される少女趣味。ぜんぶではありません。一部です。なにごとにつけても、うかつに「ぜんぶ」とか「みんな」とかいう横暴な言葉を使うべきではありません。

いずれにしても、ストレート男性の多くは(残念ながら)ゲイ差別の気持ちを持っているものだから、ゲイは彼らと連帯したがっても自分自身がヒエラルヒーの最下層に置かれてしまうことを分かっている。だから自分たちだけで酒を呑む。それだけのことです。

【女の気晴らし】

いっぽう、女性が「世の中には現実の女性に興味のない男もいる」と知ったら、どうするか?

彼らが好むものを指さして、笑いものにするわけです。「こんな漫画のどこがいいの?」って。「こんな巨乳が現実にいるわけないじゃん。夢の見すぎ。どうせ本物の巨乳の肩こりの苦労も知らないくせに」ってね。

またいっぽうで「男に興味を持つ男もいる」と知ると、どうするか?

さっそく自分から近づいていって「男同士でどこをマッサージするの!? いつ『なに食べ』みたいに同棲するの!?」と、からかうわけですね。

その女性自身が、BL読書を通じて、彼ら以上に男同士の恋愛に詳しくなっていようが、いまいが、彼らから見れば、ただの無礼な女です。ストレート男性をからかう女性の同類です。

「私はストレート男性に反感を持つBLファンで、他のストレート女性にも感情移入できないから、ゲイと連帯できるのよ」ってことは、ないです。

ゲイ側の誰も、それを望んでいません。

「ノンセク」を自称する女性が彼らと連帯したいと言いたきゃ言ってもいいですけれども、まずこのくらいは覚悟しておきましょう。あわてて自分で自分にレッテルを貼ってしまう前に、本物さん達がどういう苦労をしているのか、知っておきましょう。

すでに彼らに迷惑をかけてしまった女性たちの中に、自分と同じようなのがいるという可能性を覚悟しておきましょう。

とくにSNSは、自己紹介を必要とする(と思ってしまうことが多い)ので、あわてて「私もいま最新流行のナントカマイノリティです」と言いたくなってしまいやすいのです。

たんなる音楽共有サイト・写真共有サイト・お料理レシピ共有サイトなどであれば、ROM(リード・オンリー・メンバー)として振舞うことが可能です。「like」ボタンを押していればいいだけです。いまさら説明するまでもありませんね。

けれども、文字情報としてのSNSは余計なことを言ってしまいやすいのです。同人やっていたなら「同人やってました」でもいいです。野妻まゆみ作品のファンなら「野妻まゆみ作品が好きです」でもいいです。自分の経験や好みをそのまま言えばいいだけです。

けれども「なんとか女子」とか「なんとかマイノリティ」というふうに、自分自身にレッテルを貼り直そうとすると、あわててしまうことがあるのです。

とくに中年以上になると、若いふりをしたがって、カタカナ言葉を使いたがることがあるので、中年以上の人は、自分で注意しましょう。母親のトラウマは、存在しません。

【批判のブーメラン】

基本的に、ゲイ側は女性を警戒していると思えばいいです。女性がゲイバーに顔を出した場合でも、SNSで話しかけた場合でも、彼らは「また勘違いしたのが来やがった」と思っていると思えばいいです。

女性がゲイを相手に自分の人生の愚痴を聞かせたいのも、彼らばかり楽しそうでズルいという「ひがみ」を言いたいのも、もっと女性の人権運動に協力しなさいと説教したいのも、彼らから見れば「彼らに依存している女性」というだけのことで、ぜんぶ同類です。

百歩譲って、プロのゲイボーイがお客様による「女性上位プレイ」の一種として調子を合わせてくれるだけです。でも、女性みずからお客様の立場を超えて彼らの人権運動に関わろうとすれば、シビアな質問返しが待っていることを覚悟しましょう。

横暴なストレート既婚男性中心社会を批判してやるつもりで、きいたふうなことを言えば、すべて自分にブーメランします。

「どおしてトランスが簡単に手術を受けられないの~~?」と訊きますか?

あなたのような女性が軽々しく「ゲイはいいなァ」とか「私もゲイに生まれれば良かった~~」とか「心のゲイなんです~~」とか言っちゃうからです。

BL趣味を自慢する女性のせいで、本物が「どうせ漫画の読みすぎ」と言われる屈辱を受けているのです。

とくに二次創作BLは、ストレート男性キャラクターを利用するものである以上、女性を「私もホモになりた~~い」と言わせてしまう確率が高いので、本物のトランスおよびゲイにとっては不倶戴天の敵です。

トランスゲイは、絶対に、二次創作BL同人を許しません。

なかには気のいいトランスさんもいることでしょうが、基本的に、二次創作BL同人のほうから彼らに馴れ馴れしくできる筋合いはありません。なお、トランス男性の意識はふつうの男性です。女性がSNSで男性の下半身に言及すれば「いやらしい、恥ずかしい、我々に対して失礼だ。公共の場で言うことじゃない」と思うのが当然です。

もし、彼らの手前「母親のトラウマ」では都合が悪いと思ったからといって、あわてて「自分でトラウマを克服したから男性恐怖症ではなくなった!」といえば、もうゲイバーに居座る必要もなくなったということです。婚活を始めましょう。自分の発言がどんな結果を生むのか、二手先・三手先を読みましょう。

「どうせ山も落ちもないものしか書いたことないから♪」というのは言い訳になりません。中学2年生の時にはそうだったとしても、これからの人生で自分を変えていけばいいのです。

なによりも、性別も性志向も関係なく、すべての若い人が「大人には大人らしくしてほしい。カッコいい大人のお手本を見せてほしい」と思っていることを覚えておきましょう。

自分が「女の子」だからといって、自分より若い(トランス)ゲイが甘えさせてくれることを期待することは、彼らから見れば、まさに大人の我がままであり、マジョリティ・ストレートの横暴でしかないのです。

だからこそ、もし甘えさせてくださる方がいた場合には、大切にしましょう。モットーは「親しき仲にも礼儀あり」です。



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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。