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1968年10月、マキノ雅弘『ごろつき』東映東京

俺が、女中になるとか!?

脚本:石松愛弘 撮影:飯村雅彦 録音:広上益弘 照明:大野忠三郎 美術:中村修一郎 助監督:伊藤俊也 音楽:渡辺岳夫

マキノさんお久しぶり。まさかの傑作。円熟味にあふれております。代表作の一つに数えてもいいかもしれません。キックボクシングの流行に乗っかった安直な娯楽色の強い作品だと思っていたのですがごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

沢村忠・西川純・斉藤天心・藤本勲がご本人出演して話題性を高めているわけですが、その使い方が素っ気ないのがマキノ流。高倉37歳は入門まもない青年らしさを演じきり、本職顔負けの肉体美も披露しております。

東名高速道路と有線放送が開通して、炭鉱と流しの歌手が不景気になりつつあった頃。ヤクザが暴力団といわれて解散することになった頃。プレハブ工法が普及しつつあった頃。ほろび行くもの、流行るもの、のさばるもの。大東京は地図で見るとせまいけど、「稼業仁義」の切り方も知らない素人の若者たちには広いのです。

『日本侠客伝』にも、一貫して「堅気として生きていこうとする青年が義理に駆られて白刃の出入り」という主題が見られたわけですけれども、これは元々ヤクザと付き合いがあった家の後継者ではなく、まったくの素かたぎの若者がキックボクサーとして成長して行くサクセスストーリーに置き換えたことで、落差が大きくなり、緊張感が生まれたのでした。

新宿の街並みが根本的には変わっていない(というかこの頃できた)ことと、黒澤『野良犬』の頃と変わらない(またはさらに退廃した)都会の若者たちの様子も見られます。

女子がブルージーンズを着用しているのも印象的で、男女逆転の面白さを取り入れております。扁額の言葉は任侠じゃなくて根性。マキノ雅弘、60歳。

戦前にジャズ調ミュージカル時代劇を撮っちゃった人は、音楽の使い方も相変わらず柔軟だったようです。終幕にも珍しい要素を加味して情緒を深めました。

アクション場面がマキノ作品には珍しいほどの迫力に満ちているようで、撮影の飯村雅彦の名前を覚えておくといいのかもしれません。(『昭和残侠伝 破れ傘』の人でした)


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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。