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【同人の心得】次の壁サークルになるための密告はあり得ません。

当方は「話がおかしい」と感じたら徹底的に考えてみようがモットーでございまして、一歩ずつ論理展開していくんですが、セミプロ的な同人さんの中にはひじょうに頭の回転が早い人もいるので、当方が長々と説明しているようなことを一瞬で見切っている可能性もあります。

ほんというと続けて一つの記事にしたいのですが、さすがに縦スクロールが長くなるので、5分割なのです。ご寛恕を賜りますようお願い申し上げます。さて。




某プロ漫画家が、同人時代を思い出して、仮に考えてみるにという前提で「もしTPPのせいで非親告罪になったら『壁サークル』を密告して自分が一番になってやる」って言いましたね。

でも、なぜ自分は密告されないと思っているのか?

誰かに密告された「壁サークル」さんが「俺の後で一番になった奴もやってます」とは言わない保障なんて、あり得ませんね? 同人の世界に「裏切られたのに裏切っちゃいけない」なんて仁義は、ありゃしません。もともと親分でも子分でもないのに。

けれども「同人やっていた」人の習性として、「実際に著作権者が動かなければ大丈夫」と思ってしまいやすいのです。

それをそのまま引きずって、非親告罪化の話をすると「俺は非親告を利用して他人を逮捕させてやるが、俺自身が著作権者から親告されることはないから大丈夫」という、ごちゃ混ぜな自己正当化になってしまうのです。

誰しも自分を正当化したいのは当然ですが、だからこそ注意が必要なのです。

残念ながら、二次創作同人の世界は、浅慮と短絡を自分に許してしまうという性質を持っています。

原作を読まずに他人から話を聞いただけで「だいたいキャラが分かった。あとは適当に下ネタを書けばいいんだろ」という程度の認識で(そこそこ)通用してしまうからです。一事が万事その調子という人間性を助長してしまいやすいのです。

これは「俺のことか!?」と怒るところでもなければ、「あいつのことだ♪」と面白がるところでもありません。各位において、次は自分がやっちまわないように、ご注意なさってください。

【密告はあり得ない】

密告された「壁サークル」さんにとって最大の復讐は、イベント当日に捜査員を踏み込ませることですね。二番手だった奴が我が世の春を謳歌している瞬間に逮捕させるのが一番ドラマチックです。

捜査側からすると、前年までの出展者名簿を入手して「こいつは今年も出展するにちがいない」と目星をつけることはできますが、まだ売り出されていない作品については存在を確認することができません。今年は実家の事情などで描いていないかもしれません。

すでに製本してあれば、イベント会場への搬入日までは自宅に保管しているでしょうが、個人宅へ捜査員が踏み込む時点で令状が必要なはずです。けれども存在するかどうかがハッキリしない物について令状を乱発するということはできないはずです。

そもそも「非営利ファンアートを根絶やしにしろ」なんて、ホワイトハウスもディズニーも、ルーカスも、誰も言ってないのです。

それを根絶やしにするつもりなら、幼稚園・小学校へも捜査員を派遣して、子どもの落書きも検閲しろという話になってしまいます。さすがにナンセンスです。だから、もし本当に非親告罪として取り締まることになったとしても、実際問題として「おおぐちの取引だけを摘発しろ」ということになります。

とすると、捜査員が即売会へ踏み込んで、売買の現行犯を押さえ、証拠を押収するには? 「これから違法な取引が行われる」という確実な証言に基づいて捜査令状・逮捕令状を取るってことになるのでしょう。

ということは、いちばん最初に密告によって逮捕された同人の証言が重要です。日本では司法取引ってことはあまり言われませんが、理屈としては「ジャンル」を壊滅させることに協力すれば、壁サークルさん自身は無罪放免ってこともあり得るのです。

つまり、彼(女)を密告した人は、もうその時点で自分自身の明日を警察に売ったことになります。むしろ警察へ証人を差し出したようなもんです。つまり冷静に考えると、誰も密告できないのです。

映画に出てくるような暴力団同士の抗争というのは、おなじ組の中の人を警察に売らないという「仁義」がある代わりに、他の組を売るから成り立つのであって、全員がおなじサークルに属しているともいえる現代のパロディ同人の場合は、構図が違うのです。ここ重要です。

もっと冷静に考えると、そもそも法令が公布された時点でイベントの主催者が規約冒頭に「法律違反品は出展できません」って書くんですから、誰も出展できなくなるだけのことです。誰も出展しないなら「あいつは出展します」って密告もあり得ません。

ほとんどの人が規約を守ってオリジナル作品を用意してきたのに、一人だけ図々しく二次を出展する奴がいれば、周囲の冷たい眼差しを浴びながら、準備委員会から厳しい叱責を受け、撤収させられて終わりです。

もし「警察に負けるな、警察を入れるんじゃねェぞ」というのであれば、むしろオリジナルの出展を禁止して、全員一斉に二次創作を出展し、人間の鎖をつくるってなことになります。

たとえ法令が施行された後でも、国民には国家の決定に反対し、見直しを求め続ける権利があるのです。まさに性的マイノリティ達が実行しているように。

この場合は、それこそ一蓮托生。密告者は自分を含めて全員を警察に売ることになります。もし自分だけ見逃してもらえば、密告者だということがバレてしまうだけです。

警察は2万余の出展サークル全員を留置し続けることができないので、早期に釈放するでしょう。その後、2万余人による密告者への制裁が始まります。

べつに暴露話ではありません。仁義なき映画でも観ていれば、誰でも思いつく筋書きです。

ようするに、コミケ出展を前提にする以上、密告はあり得ないのです。「次の壁サークルになるために密告する」ってことは不可能なのです。だから「密告されると困るから」ってのは(許可マーク制定に向けて)同人どうしの団結を求める理由にはならないのです。

密告以前に「出展できなくなると困るから非親告罪にしないでください」という要望へ一本化して行こうという話でいいのです。

もし本当に非親告罪になってしまった後で、コミケ出展も、アニメ関連ショップ・通販サイトでの委託販売もできなくなり、完全に地下へもぐった状態で闇取引が行われるようになれば、密告もあり得ます。

が、ネットなどで宣伝できないなら、闇取引の日時を知っているのは関係者だけですから、密告者が誰かは一目瞭然です。2万余人の仲間から「あの場に居合わせた10人は誰も信用できない」と見なされるわけです。次の闇取引には誘ってもらえなくなります。

そうなると、自作をさばく相手を求めて、自分では自費出版しない一般人に声を掛けて歩くことになりますが、一般人に通報されるかもしれないし、2万余人の仲間の誰かに通報されるかもしれません。人を呪わばなんとやら。くり返しますが、暴力団同士の抗争とは構図が違うのです。

でも、そこまで行く前に「非親告罪にしないでください」で済むのです。

第一、製本する段階で印刷所が「違法な原稿は引き受けません」という可能性だってあるんですから、非親告罪になった瞬間に成り立たなくなるのです。

オフセット普及前のガリ版やコピー誌に戻すことも可能ですが、それを郵送で通販する場合は、警察が「すべての書籍小包を開封して、二次創作ではないかどうか確かめる」ってことになるのです。信書の検閲です。どこの全体主義国家か。

そこまで承知で非親告罪化を受け入れた上で「密告をふせぐための許可マーク」というのは、逆にいえば非親告罪化を受け入れる・賛成するということですから、現役同人から反対されるのは当然なのです。

【最大の失敗】

赤松さん最大の失敗は、最初に「密告の可能性がある」って言っちまったことです。

本人の「同人ってのは、そういうことをする連中だ」という偏見を表明してしまったことです。

たしかに、どこの業界にも自治体にも国会にも、横領・収賄・違法な薬物使用・イジメなど、全体のイメージを悪くしてくれることをやらかす人が時々います。けれども全員ではありません。

この件の場合も、ほとんどの同人が反射的に「そんなふうに思われたくない」と思ったことでしょう。その後から何を提案しても受け入れられないのは当然なのです。

しかも上記のように「密告を防ぐための許可マーク」というのは、最初から話が成り立っていない。まことに残念ながら早計に過ぎたのです。

じつは、許可マークというのは、親告罪を前提にしたときには、原作者にとって便利なものなのです。

すなわち「こういうふうに法律変更の話が出て、一般社会にパロディ作品の存在が知れ渡ってしまった以上、一般人から原作者のところへ『許可を出したのか、ほっといていいのか、もっとしっかりしろ』といった質問・お叱りを装った嫌がらせ電話などが殺到する恐れがあるから、先手を打とう」ということなわけです。

けれども、ブログか何かで「フリー」を宣言するだけでも充分にことが足りるのです。

第一「すでにCCマークがあるのに何が違うんだ」って問題もありますね。


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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。