Misha's Casket

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著作権保護の強化について、ゆっくり考えてみましょう。

まず、国民には売りたいものを売る権利があります。ご町内のバザー、フリマ、ヤフオク出品のために、いちいち個々人が国家機関に対して許可願いを提出するということはしていませんね?

国家の機能は、国民生活のすべてを規定し、監視し、採点することではありません。国家は先生ではなく、国民は子どもではありません。

「上からの近代化」を経験した日本人の意識は、今なお政府・軍部によって「これからは西洋にならってこういうふうにやるんだ」と教わるという構図から脱していないことがあり、「このやり方でいいのかどうか、えらい人に訊いてみないと分からない」という考え方をしてしまうことがありますが、本来、国民が国家に優先し、国民はすべての言動が自由です。ただし、他人を傷つけないかぎり。

これがフランス大革命以来の人権宣言の基本です。

というわけで「売ると他人が傷つくもの」だけを国家が法律で禁止するのです。「大勢の国民が迷惑するので、国民の代表が指導する」という理屈です。

たとえば、麻薬が医療現場以外のところで取引・使用されれば国民が心身の健康を損なう。人身売買が認められれば誘拐が頻発する。盗品を売ってもいいなら窃盗・強盗が多発する。爆発物を宅配便で送れば宅配業者が一生とりかえしのつかない怪我をする、など。

したがって「いままで自由に取引させておいたが、これからは売ってはいけない」と言われたということは、それほど危険なものだと思われたということです。

これに対しては「誰の権利も傷つけていないし、将来にわたって傷つける恐れもない」と言う必要があるのです。「カネになる」は理由にならないのです。

それでいいなら海賊版の売人だって「カネのために売っている」と言うでしょう。麻薬の違法取引だって、危険ドラッグだって、実在児童ポルノ・人身・盗品の売人だって「俺自身の生活がかかってる」っていうでしょう。

だから、同人やっていた人が「私たち、カネもうけのために二次創作してるんだよ! 誰もアニメキャラなんか好きじゃないんだよ! 知らないの!? もっとよく調べてから書いてよ!」とタイムラインの中心で叫んでも無意味なのです。

同人誌即売会は同人誌を即売する会なんだから、売ってるこた分かってるのです。でも「売るためにやっている」といっても「じゃあいいよ」と言ってもらえるわけではないのです。売るかどうか以前に「描いてはいけない」と言われてしまったからです。

だから、もし同人が「海賊版を売ってはいけないのは分かるが、二次創作ならよい」というなら、なぜよいのか、そこを自分で答える必要があるのです。「あなたが調べてよ~~」じゃないのです。

つまり、原作が売れなくなるわけではないからとか、自分の手で心をこめて描いたからとか、実在の人間の人権や生命を損なうわけではないからとか言う必要があるのです。最初からそういう話です。

「でも、げんに原作者の著作者人格権を損なってることについてはどう考えてるんだ?」と訊き返されたら、自分で答えればいいのです。もともと、それを無視して「同人やっていた」のは自分の責任なんですから。

「だって編集者が私たちに連絡をくれたんだよ」なんて言ったって、関係ないのです。編集者は著作者人格権を持ってないのです。

もし「原作者が二次創作フリーを宣言した、という連絡を編集者がくれた」という話なら、前半のほうを公開しないと意味ないのです。

SNSで発言するということは、世界に向かって発表するということです。自分の無実を証明したいなら、適切な証拠・証言を出しましょう。「別にそういうわけじゃない」というなら、編集者と同人が共犯だったと自白しただけです。

そういう状態で、調べがつけば逮捕に近づくだけです。

証拠がない内から全員ぶんの逮捕状を請求するということはできません。けれども本人から自白が得られたとなれば話は別です。えらそうに言う奴から順番だってことです。覚悟はできていますか? 自分はもう辞めたから大丈夫だと思っていますか?

【ゆっくり考えましょう】

タイムラインの中心で「カネもうけ」という言葉をくり返すことが好きな人がいて困るんですが、それは理由にならないのです。そもそも「売っているかどうか」が問題ではないのです。衝撃的ですよね。

この件には「ファンアートそのものを根絶やしには出来ない」ということと、「原作者の自己決定権」ということが関わっているのです。

どのみち「パロディ」は、あくまで創作物ですから、人命にかかわるのですぐにやめさせろということにはなりません。いっぽう、インターネットを通じた著作権侵害問題は、今後ますます先鋭化し、規制強化・法律の見直しといった話は何回でも挙がってくる可能性があります。

いまから同人やってみようという人は、年金をもらえる年齢になるまで、50年間くらい、法律・国際世論の動向に注意し続ける必要があるということです。だから何回でも考え直し、基本を確認する価値はあります。ゆっくり見ていきましょう。

【ファンアートを根絶やしにはできません】

もし、キャラクターが好きだ・可愛いなという気持ちに基づく「ファンアート」そのものを根絶やしにしろというなら、各家庭・幼稚園・小学校へも捜査員を派遣して、子どもの落書きもすべて消させろということになります。

自宅の前に雪だるまをつくって、小枝でヒゲを作って、有名な猫や鼠のキャラクターのように見せれば、母子とも逮捕ということです。

また、すべての信書を開封して、二次創作ではないかどうか確かめる必要があります。たった一人の文通相手に向けて便箋に「何々くんと何々さんが」とアイディアを書いただけで押収・逮捕ということです。電子メール・ライングループなども検閲する必要があるでしょう。ほぼ人権侵害です。

また、そのたびに警察の活動費も必要ということになります。つまり、子どもの「おえかき帳」を検閲し、雪だるまの証拠写真を撮影し、親子を引き離して検挙するために警察官が出張するので、そのたびに国民の税金を使うということです。

多くの国民が「なにもそこまで」というでしょう。「さすがにばかばかしい」と思うでしょう。

だから、そもそも「国家がファンアートを罪悪視し、警察官を動員することのほうが、国民にとって迷惑である」ということができます。

いっぽう、権利者にとって、キャラクターを使用されることはなんの問題があるのか? すでに単行本や映画によって、一般家庭の年収を上回る利益を得ている著作権者が、個々の一般家庭に対して「キャラクター使用料ひゃくまんえん」という必要はあるのか?

多くの場合、そこまで請求してきた著作権者はいませんでしたね? 家庭的な娯楽の範囲で似顔絵を描いたり、友達同士のパーティで仮装したりすることは、誰も罪悪だと思っていない以上、罪悪ではないのです。けれども?

「私はこのキャラクターを利用することによって金銭的な利益を得た」と明言する人がいた場合、話が違ってきます。その人には利益の中から何パーセントかを権利者にお支払いすることが可能なはずです。

つまり「カネもうけのために二次創作やっている」と言ってしまった人は「権利料をお支払いする用意があります」という意味になります。それを支払わずに逃げれば、窃盗とおなじことだという話になるわけです。

ここで「でも私、女の子だから……」というなら、別の問題が発生します。

【保護者を呼んでこい】

著作者人格権というのは、原作者個人にのみ帰属するものですから、二次創作者個人との間で大人同士の話し合いをすることができます。原作者は「ゾーニングする約束を守れるならいいよ」など、さまざまな条件を設定することも可能です。

いちいち国家が介入して、一律の基準を適用する必要はありません。むしろ原作者の自己決定権の侵害です。同人サイドは、国民の一人として、このように主張することができます。これ自体が「表現の自由」です。

表現の自由ってのは、もともと「戦争反対」を掲げるなど、政府の横暴に対抗する権利のことです。昔は戦争反対って言っただけで憲兵にひっぱられたんだから、それを防ぐ権利が「表現の自由」です。

で、この場合「おとな同士で冷静に話し合うことで解決できる」のが前提ですから、同人自身が「私、女の子なんです~~」と主張している場合には「保護者を呼んでこい」ってことになります。精神障碍者・精神病患者ですと主張しているなら尚更です。

成年後見人の必要な人物に、好きに「カネもうけ」させておくというわけには参りません。本人が「頭がおかしいので善悪の判断ができない」と自己PRしているなら「二次創作よりも、もっと悪いものも売り出すかもしれない」と言えてしまいます。そのために怖い人たちに巻き込まれるかもしれません。

社会は、むしろ本人の安全のために、本人の行動の自由を制限することになります。

分かりますか? 法律の話をするとは、こういうことです。「まだ子どもだから(男女のことが分からない代わりに男同士には詳しい)」とか「いかれてる」とかいった同人誌即売会限定のブラックジョークを実社会へ持ち出してしまえば、「なんちゃって~~」では済まないのです。

【恨みの心でクレームするのはやめましょう】

TPPによる著作権保護の強化という話は、映画会社などの大手権利者が、自社の有名キャラクターをファッションブランド等の「ロゴマーク」と同じように考えて、勝手に海外テーマパークの呼び物にされたり、広告宣伝に利用されたりすることによって「取れるはずの権利料が取れない」という事態を防ぐために、キャラクター利用の一律禁止を打ち出して来たものです。

超大手の場合、取りっぱぐれる金額も莫大ですから「次の映画製作に差し支える」ということになります。結果的には従業員の解雇、俳優・監督の失職といった、おおきな影響が考えられます。

それを真に受ければ、上記のように、子どもの落書きにも目を光らせろということになってしまいますが、大手としても、そこまで考えていない。むしろ子どもたちにはおおいにキャラクターを愛し、真似して似顔絵も描いてもらって、次世代のアニメーターに育ってほしい。

だから一般のSNS利用者なども冷静を保てばいいので、若い人々が似顔絵イラスト・二次創作漫画を楽しんでいることに目くじら立てる必要はない、と言い得るのです。

世論が動けば政府が動き、政府が動けば警察が動く。それが民主主義ですから、一般国民が「ファンアートを罪悪視すべきだ(アメリカ様のご機嫌を損ねないように)」って気分になってしまわないことが重要なのです。

ここで、おカネの話を始めちゃう人は、自分勝手に違う話題に突入しちゃったわけなんですけれども、じつは「昔の規制運動のせいで自分の同人誌が売れなくなった」という恨みがある。むしろ、そっちを言いたかったわけです。

だから「売れなくなると困るでしょ!」という話にしてしまうんだけれども、TPPによる規制は、そういう話じゃないのです。

国民としては「国家として、キャラクター使用を罪悪視しない(=非親告罪にしない)」という状態を維持できればいいのであって、自分から「カネもうけのためにやってる人はどうなんですか!?」と言ってしまえば、その時点でアウトなのです。

この「怒ってるので一見すると強気なんだけれども、じつは発想が受身である」という状態には、自分が陥ってしまわないように注意しましょう。

くり返しますが、キャラクターを使用すること自体がよくないといえば、一般国民の趣味的な活動もすべて逮捕の材料になるのです。手芸、ネイルアート、キャラ弁・ちぎりパンなどの料理、バザー用品の製作といったことがすべて罪。少なくとも警察への届出が必要ということになるのです。けっして一般人にとって関係ない話ではないのです。

「でも、二次創作ってゆぅやつはエロいから」というならば、これは「わいせつ」という問題であって、法律が違うのです。

ここで「エロは女の表現の自由だから、二次創作は女の表現の自由ですよ!」と言っちゃう人があれば、それもちがうのです。

【いまでも原作者には権利があります】

著作者人格権は原作者個人にのみ帰属します。総理大臣が原作者から剥奪して同人に投げ与えるということはできません。それでは国家が原作者の人権を侵害したことになってしまいます。

非親告罪化したが取り締まらないというのは、被害が限定的なので警察力を投入しない(=国民の税金を使用しない)というだけであって、原作者が自作に関する権利を永久停止されたわけではありません。

つまり、今なお、原作者は権利の侵害を申し立てる権利があるのです。

じつは「すべての犯罪が親告罪だ」ということもできます。警察が被害者の存在を認知した時点で動き始めるからです。人身事故などは、被害車両などがそこに「ある」ことを目視確認できるので、初動が早いわけです。

けれども認知されていなかった被害者が「いままで報復を恐れて黙っていましたが、じつは」と訴え出ることもできるわけです。非親告罪を親告しても認められないということはないわけです。

いまなお、原作者は差し止め請求を出すことができます。裁判所ではなく、ブログなどで一般社会に向かって「キャラクターのイメージを壊されたので悲しいです」などと訴えることもできます。

同人側から「それ絶対にしないでください」とは言えません。言いようによっちゃ脅迫になってしまいます。

くり返しますが、最近起きたことは、首相が原作者から著作者人格権を奪って同人に投げ与えたことを意味しません。総理大臣が変われば方針が変わる可能性もあります。同人は安倍政権の安定にひと役買わされただけという見方もできます。

ロビー団体が最高権力者に圧力をかけて、口約束を得たので安心というのは、独裁の容認につながる危険な発想でもあります。用済みになった途端に手のひら返しというのは政治の世界ではよくあることですから気をつけましょう。

なお「国民全体における、イメージの共有とは何か」という哲学的・認識論的議論へ持っていくこともできます。やりたい人がやってみましょう。

いまや国民全体ではなく、世界のアニメファン全体かもしれません。アニメの時代が来たことは、同人の時代が来たことを意味しません。海外で日本製アニメがヒットすればするほど、二次創作に反対する人も増える可能性があるということです。

第三世界にスマホが普及したらどうなるのか? 宗教の違う人からのクレームはあり得るのか? 今後50年くらいの間にも何が起こるか分からないのが現代の国際社会であり、同人です。

くり返しますが、インターネットにおける権利侵害の問題は今後ますます深刻化し、規制強化・法律の見直しという声は繰りかえし挙がってくることになるでしょう。

また、先進各国はいずれも「モノづくり」に限界が来ていますから、すでに製作したものの権利を死守することに文字通り命がけになるでしょう。取れるはずの使用料を取れないとなれば「食いあげ」になってしまうからです。

創作活動そのものは、人命や麻薬が関わっているわけではありませんから「とにかく危なくて困るから、すぐにやめさせろ」というほどの話にはなりません。けれども楽観はできません。せめて社会問題視されないように、公共交通機関利用のマナーくらいは守りましょう。

本日のまとめ: 都会的なおとなであるということは、エッチな話をすることでもなければ、おカネの話をすることでもありません。冷静であることと、視野を広く持つことです。


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