1983年4月、今村昌平『楢山節考』東映・今村プロ

  16, 2016 10:24
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なんぼつらいとて楢山は、雪がどんと降りゃ楽なもの。

製作:友田二郎 企画:日下部五朗 原作:深沢七郎「楢山節考」「東北の神武たち」 撮影:栃沢正夫 照明:岩木保夫 音楽:池辺晋一郎 助監督:武重邦夫 美術:稲垣尚夫 脚本:今村昌平

お山参りはつろうござんすが、ロケハンも美術さんも緒方さんもご苦労さんでござんした。

撮影3年、標高1000メートル、廃村貸し切りのオールロケ。ちょうど木下作品とは真逆の意味の大勝負。美術さんは、あの膨大な量の「小道具」をかついで登ったんですね……(ヘリコプター搬入かな?)

確か『遊星からの物体X』がこの頃の作品だったと思うんですけれども、模型をつくる技術がすごく上がったわけなのでした。しかも廃村というものが存在する。逆にいえば、リアルに人が住んでる村では撮れないわけです。

草深すぎるのも廃村だからで、継続的に人が住んでる村は、もう少し整備されているだろうと思われます。もとより「農村ダークファンタジー」とも言うべきお話ですから、この下界から隔絶した感じが良いのではあります。

人間ドラマは木下版ありきなわけで、あちらがあくまで田中絹代を主人公に、その人間性と心理変化をあまさず物語ることを成し遂げたので、こちらでは観客が話を分かっていることを前提に、ダイジェスト気味に仕上げて分割配置し、その合間に「やっこ」と呼ばれる村の青年団(?)の滑稽な様子をちりばめたのでした。

木下が基本的に舞台劇をそのまま撮るという手法であるのに対して、編集技を駆使したこちらは「映画」として捉えたわけでもあるのでした。

辰巳柳太郎の使い方はちょっと勿体なくて、男の年寄りキャラクターの活かし方は明らかに木下版の勝ち。つまり木下版が老いと死を見つめきったので、こちらは若さと生(と性)という要素を押し出したのです。拝むほどありがたいですかそうですか。

村落内の生物多様性を赤裸々に映し出したカットも多いので、昆虫などの小動物が苦手な方はご注意ください。ヒト科ヒト目の雄である「やっこ」達の生態も、若い女性が無理して観るようなもんではなく、根本的なテーマからいっても自分が45歳になってから観ればいいんじゃないかと思われます。

この話は、覚悟を決めちゃった年寄りと、まだ「明日はわが身」と思うことのできない若い世代にはさまれた中年の葛藤の物語でもあるのです。

後半は、もはやドキュメンタリー。仁義なき実録調や、PTA的表現規制にもめげずに過激化を続けるサブカル(=漫画)の勢いに対抗して、文芸路線の映画論・演技論も変わったようにも思われます。

腹をくくって観れば、いろんな意味で面白い作品ではあって、カンヌも「もうグランプリやるしかないだろこれ」と呆れたのかもしれません。

編集しすぎて、物語のつながり具合がちょっと分かりにくくなっちゃってるようなところもありますが、そのファンタジックなぶつ切り感が初公開当時は斬新に感じられたのかもしれません。

つまり、いろんな意味で1980年代ならでは成立しなかった作品なのでした。

というわけで、お山参りはガチでつろうござんすが、なんで雪が降ったほうがいいのかは、観てのお楽しみ。


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