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1957年1月、黒澤明『蜘蛛巣城』東宝

見よ、妄執の夢の跡。魂魄いまだ棲むごとし。

脚本:小國英雄・橋本忍・菊島隆三・黒澤明 撮影:中井朝一 美術:村木興四郎 録音:矢野口文雄 照明:岸田光一郎 美術監修:江崎孝坪 音楽:佐藤勝

大ロケーション、大叙事詩。シェイクスピアと能楽を、シェイクしないでステアして。

まずは、スタジオを飛び出した時代劇。馬がドカドカ走ってるのが新鮮。これは自動車かオートバイにカメラマンが乗ったんでしょうね。日本経済が復興した感に満ちております。

三船さんがすっかり渋くなってるのは、もののけの仕業ではなく。ウサギさんとムカデさんの腹の探り合いは切ないとか言ってる場合じゃございません。

時代劇ですが痛快冒険活劇ではなく文芸路線の一種で、厳粛なまでに装飾を削ぎ落とした美術を背景に、生死をかけた緊迫感をはらんで、重厚に、ゆっくりめに、リアルタッチに進行します。

けれども、三船敏郎の「根本的に人がいい」という個性と爆発的な演技力をフル活用した三船さん万歳映画でもあります。思いがけず、山田五十鈴の身ごなしの美しさを見る映画でもあります。「能面のようにいい表情」ってのも珍しい言い方ですが、そこを見る映画でもあります。千秋實もだんだん出世してる感。志村喬の安定感。

強風が吹いたり雨が降ったりしているので撮影苦労話はいろいろありそうです。騎馬描写はもちろん、高さのあるセットを活かした構図と動きの妙味といい、霧にまぎれた印象的なシーンといい、演劇的ではあるけれども映画でしか表現できない。シェイクスピアを日本の活動屋が翻案するとこうなるという到達点であり、金字塔であるかと思われます。


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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。