1957年1月、黒澤明『蜘蛛巣城』東宝

  19, 2016 10:32
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見よ、妄執の夢の跡。魂魄いまだ棲むごとし。

脚本:小國英雄・橋本忍・菊島隆三・黒澤明 撮影:中井朝一 美術:村木興四郎 録音:矢野口文雄 照明:岸田光一郎 美術監修:江崎孝坪 音楽:佐藤勝

大ロケーション、大叙事詩。シェイクスピアと能楽を、シェイクしないでステアして。

まずは、スタジオを飛び出した時代劇。馬がドカドカ走ってるのが新鮮。これは自動車かオートバイにカメラマンが乗ったんでしょうね。日本経済が復興した感に満ちております。

三船さんがすっかり渋くなってるのは、もののけの仕業ではなく。ウサギさんとムカデさんの腹の探り合いは切ないとか言ってる場合じゃございません。

時代劇ですが痛快冒険活劇ではなく文芸路線の一種で、厳粛なまでに装飾を削ぎ落とした美術を背景に、生死をかけた緊迫感をはらんで、重厚に、ゆっくりめに、リアルタッチに進行します。

けれども、三船敏郎の「根本的に人がいい」という個性と爆発的な演技力をフル活用した三船さん万歳映画でもあります。思いがけず、山田五十鈴の身ごなしの美しさを見る映画でもあります。「能面のようにいい表情」ってのも珍しい言い方ですが、そこを見る映画でもあります。千秋實もだんだん出世してる感。志村喬の安定感。

強風が吹いたり雨が降ったりしているので撮影苦労話はいろいろありそうです。騎馬描写はもちろん、高さのあるセットを活かした構図と動きの妙味といい、霧にまぎれた印象的なシーンといい、演劇的ではあるけれども映画でしか表現できない。シェイクスピアを日本の活動屋が翻案するとこうなるという到達点であり、金字塔であるかと思われます。


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