2017/01/06

2016年、ウシロシンジ『映画妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』

そういう展開か!

原案:日野晃博 原作:レベルファイブ 脚本:日野晃博・加藤陽一 音楽:西郷憲一郎 実写パート監督:横井健司 撮影:神田創 美術:佐久嶋依里 助監督:佐伯竜一

なんだこれ!? タイトルも長いですが、たいへんな力作です。実物大セット? 模型っぽいCG? 合成もしてるけど、ロケもしてるよな……? 我が目を疑い、冷や汗を覚えつつ。

テレビシリーズの背景画からして、実在感が売りでしたが、最初からこれをやるつもりでロケハンしてあったのかどうなのか。パンフレットの情報量の低さには落胆しつつ。(※主題歌CDがついて来ます)

デジタルの時代になって以来、フィルムそのものをいじるという発想がなくなったので、あとはデジタルでどこまで描けるか、ディテールで推して参るわけですが、立体CGで完全再現された妖怪たちの顔に自然光が落とす樹木の影まで完全再現しております。技術的に可能になったとはいえ、よくもまァ。

実写化の不安を逆手に取った導入部のギャグセンス、実写ならではの女性美の表現、クライマックスも実写ライクなCGであることを逆手に取ったパロディ的アイディアが横溢しております。お話の奇抜さと見せ方の洒落っけが呼応して、ここまで来れば、もはや正典。独特の世界観を丁寧に説明するために、序盤のんびり進行ですが、あとのほうで「おつり」が来ます。

全体に「現代の日本でしか発想できない」というミックスジュース的味わいの連続で、こういうのこそ日本代表として海外映画祭に出したいかも。

というわけで、アニメ作りはつろうござんすが、実写パートのスタッフさん・キャストさんも、本当にご苦労様でございました。

【2015年『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』】

俺は思い出にはならないさ。(違)

会社の名前にちなんで5つの物語なのでしょう。前作の遺産を活かしたテレビスペシャル的構成で、それぞれのお話に明確なテーマと見応えがあり、全体のまとまりも良かったと思います。

いろいろ捨てても先代命のぬらりさんのキャラクターデザインは、内面外見ともツボに針打ってもらった感じにきもちいいですし、金髪美少年的俺さまエンマさまと合わせて狙ってるところは明白ですが、イナホという揶揄的キャラクターがいる以上、今さら大きな女性のおともだちの獲得は難しいかと思われます。

こまかあちゃんの登場を合わせて考えるに、もっと単純に、子連れの母親・祖母世代の観客にアピールしただけかもしれませんが(二十四年組ファンも60代ですからね)……

いずれにせよ、クライマックスがゲストキャラクター同士の対決であって、メインキャラクターが傍観者になってしまうのは『宇宙戦艦ヤマト』が繰り返したパターンで、観客にとってはあんまり面白くないのです。

2016年版は、その反省にかんがみて、男児目線・メインキャラクター重視に戻したのでしょう。初心忘るべからず。

劇場版第一作は過去、第二作は未来、第三作は次元超えと、SF的発想を縦横に駆使して、劇場版シリーズ全体としての流れも美しく、最初からここまで構成してあったような気もされますが、出たとこ勝負でうまく行ってるような気も致します。

1970年代以来蓄積されてきた「同人」的パロディセンス・セルフ二次創作センスが、ゲームという国際競争の激しい業界で磨きぬかれた結果なのでしょう。

【がんばれ女の子】

日野イズムのいいところは、明らかに少女趣味なんだけれども、甘やかさない、甘えない。真の女らしさ・男らしさという、いまの時代に最も必要とされ、子ども達を勇気づけ、大人たちを納得させる主題を、少なくとも戦略的に知っている。

すなわち、女の執念深さが「自分自身の夢を諦めない」という前向きな姿勢となって表れること、不自由なく育った男の余裕が他者への優しさとなって表れること。

あのケータが、妖怪になってもフツーなケータが、そのことをちゃんと知っているのです。

テレビシリーズの中には女性脚本家の「同人」的ヤマなしオチなし虚無的悪ふざけのセンスに遊ばせすぎてしまったような回もありましたが、ここ一番の大事な話では原案者がしっかりと手綱を取っているように思われます。

なお、耽美系キャラクターは、毛穴というか鼻下の剃り後が見えちゃう時点でもうダメなのが本当ですが、ぬらりさん役は真面目な俳優さんのようで、ダンスは決して上手くないですけれども、丁寧に演じている様子が好感持てました。大王様のほうは照れがあったようです。

ああいう俺様キャラというのは、もともと河津清三郎や安部徹が得意としていた悪玉の親分を若く描いて美化したものですから、本当に若い俳優さんが演じるのはむずかしいのかもしれません。今後に期待しましょう。

なお、子どもと動物には敵わないとは申しますが、主人公を演じた子役くんは、後からCG妖怪が追加される前提で一人芝居したはずで、そのナチュラルぶりには開いた口がふさがりません。

さらにまた、小品(『スナックワールド 人嫌いのレニー』)が併映されまして、これがまたどえらいアメリカンライクなフル立体CGミュージカル映画なんですけれども、小さいお友達の皆さんは、吸い込まれるように観ていたようです。「ああ、もうこういう時代になったんだな」と思われたことです。

変わらぬ価値もあり、変わるものもあり、見直される価値もあり、散る花があれば、咲く花があり、次世代が育つ。それが本当の永遠の命なのでしょう。

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