1961年11月、鈴木英夫『黒い画集 第二話 寒流』東宝

  12, 2017 10:31
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男と女の違いはあるが、事業のセンスは僕より奥さんのほうが上かもしれないな。

原作:松本清張(週刊朝日連載)脚本:若尾徳平 撮影:逢沢譲 美術:河東安英 照明:猪原一郎 音楽:斉藤一郎

1959年前後に発表された松本清張の短編集『黒い画集』所収の作品を映像化する企画のようです。今回は池部良と平田昭彦のツーショットが眼福な銀行内幕劇。序盤は編集が凡庸に思われますが、じわじわ来ます。

池部良は、いわゆる滑舌があんまり良くない代わりに、黙ってる時の表情がひじょうに美しい人で、根が真面目すぎて翳りのある美形という個性を存分に堪能できます。

平田はちょっとバタくさいような美貌で、岡本喜八『暗黒街の顔役』(1959年1月)では最後までいい人でしたが……。

サスペンスの感想文は書きにくいです。

不安をかきたてる前衛調のオープニング、銀行・料亭・ゴルフと高度成長期らしい道具立て、女性の強さと弱さ、池部の顔に白塗りの時代劇かというほど照明を当てたモノクロ撮影と、いろいろと1960年代らしいです。

女の言葉使いの美しい脚本、それを演じる新珠三千代の気品と滑舌の見事さを鑑賞する映画でもあります。長いつけ睫毛がパチパチしております。

なお、志村喬と丹波哲郎が特別出演状態で、気を吐いております。

もとより清張作品をよく知っている観客=読者をターゲットにしており、本格推理ものではなく、日本人らしいというか、観客に喧嘩売るようなサスペンスで、つまり一般的な意味で後味がよくはないんですが、徹底しているという意味で、逆に爽快でもあります。

池部だから美化されておりますが、もっと外見的に冴えない俳優が演じていたら観客の感情移入の質がだいぶ違っただろうと思われることです。けれども、あまり冴えない男だと序盤がロマンスとして成り立たず、先行きが見えてしまうので、配役の妙味なのかもしれません。

池部自身は本当に丁寧に主人公の心理を演じたので、彼の代表作の一つに数えてもいいのかもしれません。これに較べりゃ高倉さんと並んで殴り込みするのはなんぼか気楽です。なお、東宝の予告篇はいつも見せすぎ。

こういうのは、じつは逆説的に男性ナルシシズムなわけで「男はこういう中で苦労してるんだよ」と讃えているのです。連想するのは城山三郎。

でもなんかこう気が済まないので、高倉さんにご一緒願って、バッサリやりに行きましょう。

(平田に任侠路線の悪役をやらせてみたかったなと夢を見つつ)


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