2007年映画『自虐の詩』観ましたー

  10, 2012 17:12
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これは贅沢な・・・・・・。

いやすごい貧乏な暮らしを描いてるんだけど、それを面白く見せる工夫がすごくて、映画的に贅沢な時間を過ごすことができます。基本的な人間関係を紹介する冒頭の15分ほどで、とっくに1時間くらい経ったかと思ったほど密度が濃かった。
原作は4コマ漫画だそうで、なるほど意識的な繰り返しが多かったわけです。

マンガをアニメ化するとギャグのテンポが間延びして面白くないということがままありますが、これはギャグマンガのテンポをそのまま再現したという、映像・演出技術の結晶、かな。(アニメはアフレコの関係で掛け合いのテンポが難しいんだと思う)

原作マンガは白っぽく、もっとほのぼのと肩の力の抜けた味わいのようですが、映画は気合いの入った極彩色の堤調になってるので、イメージ違うと思った原作ファンはいらしたかもですね。

原作は1985年から80年代後半の5年間に連載されたそうですが、……っていうと昭和60年から平成2年まで。にしても「いつだよ」ってツッこみたいほど、昭和ど真ん中で時間が止まった舞台が、ある意味すばらしい。よく再現したというより、よくぞロケ地を見つけたというべきか。いや割と大阪の街じゅうにあんな昭和があふれているのかもしれない。平成の裏側って実はこんな感じだよね。

撮影は大変だったろうと思います。とくに序盤はいろいろなアングルから撮ったのを細かく組み合わせていて。

先日『犬神家の一族』を見たばかりですが、あの頃はやはり基本的に肉眼と同じ高さで水平に撮るしかなかったのが、「真上から」という目線が加わったのは、やっぱりマンガやゲームの影響かな、などと思いました。
料理をする手元や青いガス火の接写と音を使って、嫁に背を向けている男の耳にそれが聞こえているのを表した場面はすてきでした。
ストップモーションを加えてアクセントをつけるのは『ツィゴイネルワイゼン』『犬神家』でもやってましたね。洋画ではあまり見たことないかも。あと全体的に思い出したのは伊丹十三監督の作品で……あちらもまた意識して見なおそうと思います。

これは堤監督で借りたと思います。お正月の『格付けチェック』で堤演出のドラマを観て興味深かったのでツタヤディスカスで予約しておいたのが消化順に今ごろ届いたのです。なぜこの作品にしたかは覚えてないです。

原作を読んでないので、ちゃぶ台返しについて予備知識がなく、非常に楽しく拝見しました。スローモーションきれい(笑)寿司はよく飛びますね。「トロおぉッ」
うどんは……一発でOKできたのかな。食材の後かたづけ大変だろうなァと主婦的心配をしました。

すっごい面白いけどこれどうなるんだ? 何回繰り返すんだ? 基本的にはホームコメディでいいのか? まさか『青春の殺人者』みたいに急に笑えない話になるってことは……などと心配し始めた頃、急展開。

そこから雰囲気が変わって、テンポも撮り方も変わり、大らかなカメラ使いで、じっくり見せるいい話に。葉山が見上げていた電車の上の空の開放感が切り替えの象徴でしたね。
タイトルがタイトルだけに、ついていけないほどカルトっぽいのか、すごく暗い社会派ドラマかとも思っていたので、最終的にはきれいな話でよかったです。

白馬ならぬホンダバイクの王子様にグーパンチ。

どうすればバイクが炎上するのか分かりませんが、あのときの阿部ちゃんは「片翼の天使」みたいでカッコ良かったですな。

あらすじを言ってしまえば昭和時代に男性誌に掲載されたにふさわしく「尽くす女とダメ男」「アクシデントによって絆が深まる」なわけで、古くさいんだけど、『青春の殺人者』の原田美枝子を彷彿とさせる中谷美紀と、彼女の少女時代を演じた岡珠希ちゃん、熊本さんを演じた丸岡知恵さん(こっちは「さん」)たち女性陣の、ほとんど「素」な渾身の演技が、非常に好感度高いですねっ

「なぐり合って友達になる男の友情に憧れる」とはよく言われますが、女の子同士も殴りあって友情を深めるというのは新鮮でした。ケンカの仁義を知ってる熊本さんすてき。いや、それだけ追い詰められてるんだけども。漫画だったら七輪ぶらさげて教室の真ん中に立ってるのは笑える最終コマなんだろうけど、映像では凄みがありましたね。平等を訴える者の余裕など、今だからこそイタイというメッセージ(?)もありましたか。

ところで映画的には関係ないけど胎児写真が3Dであることにカルチャーショック。私の頃はあんなんなかった(ノ´∀`*)
中谷美紀の妊婦らしい歩き方は上手でした。お腹の張りを思い出しちゃった。
強面のバンド兄ちゃん達がすごい勢いで席を譲るシーンには笑わせて頂きました(*´∀`*)
ところどころにコメディアンが出演しているのも大阪らしさを高めていたのだろうと思います。

音楽は序盤のギャグパートでは個性的なラテン調が自己主張し、中盤以降は控えめに、しっとりと泣かせる「劇音楽」に徹しているあたり、ああ上手いなァなどと。

上手いといえばもしかしたら竜雷太のじいさん組長役が意外なほど似合っていた。下宿のおばさんがカルーセル麻紀と気付いた時にはのけぞった。「若いときの美貌を残している、化粧が丁寧など女を捨てていない」という役がすごく似合っていた。ポスターがしっかり貼ってありましたね♪ 遠藤憲一と西田敏行の役者ぶりなんてもう言うほうが失礼かしらん。

ストーリーは盛りだくさんだけど「ありそうなこと」に徹しているので意外とシンプル。あまりヒネった物語にしなくていいんだ、笑いと泣きのツボを押さえていれば、という見本みたいな一本。タイトルは、つまり「自虐しないで手の中を見てごらん」という反語。「元気な赤ちゃん」が幸せの鍵なのでそこは人によってはあれだけど、作りの面白さで観ておくといい作品だと思います。
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