1994年6月、ローレンス・カスダン『ワイアット・アープ』

  16, 2017 10:32
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勇気のある奴は前へ出ろ。全員道連れだ。

人海戦術的リアル西部劇。ワイアット・アープさんがワイアット・アープさんになるまでを真正面から描いた一代記。堂々の2枚組み。

かつて米国において、銃とは無法の象徴であり、法の象徴でもあったのです。いやたぶん今でも。

町が若すぎて葬式を出すのが初めてだというほどの西部の黎明期に、人々は血の絆だけを信じて身を寄せ合わざるを得ず、争いごとを解決する方法は、その血を流すことだけだったのでした。だからこそ、よその家系から嫁に来て、自己主張する女たちもいたのです。

演出・編集は最大公約数的で、黒澤さんや市川さんや篠田さんのような変わったことをしていないので、まず落ち着いて観ることができます。肺病持ちの歯医者が出てくるまでが長いですが、序盤から話の展開は早く、意外なほど退屈させません。

古い『OK牧場の決闘』は、まさかのドク・ホリディ目線の二重ロマンスだったので唖然としちゃったんですが、こちらは実家の様子から独立後の兄弟たちの様子まで、余さず取り込んだドキュメンタリータッチ。決闘の解釈もリアルタッチ。気骨のある監督さんとお見受けいたします。なお、洋画のスタッフは(カタカナ書きにすると長たらしいので)専門サイトにおまかせします。

ケヴィン・コスナーさんの映画は、アメリカの良いところを描くという主題が自覚的にあって好きなのです。良いところを描くためには悪いところも描いて対比させつつ、良いところに潜む独善性の罪深さをも自覚している。もう、男の意地や義理はいや。

砂っぽくて埃っぽくて男どもが汗くさくてどーしよーーもない街の中で、西欧の流行に沿って淑女らしく装う女性たちがいじらしいです。男たちも帽子とハイカラーで知的に装っているんだけれども、腹に匕首ならぬ、腰に拳銃、脇に散弾銃を呑んでいるわけでした。街路にあふれるのは牛牛牛牛牛。馬馬馬馬馬。

映画だから臭いだけは伝わりませんが、撮影現場はワイルドだったと思います。日本人が観るからカッコいいですけれども、アメリカ東部の上流階級にしてみると、西部劇ってのは薄汚くて下品な暴力映画なのかもしれません。

(だからこそ若い人が憧れるのです)

銃身の長い大型拳銃がいっぱい出てくるので眼に楽しいです。発射音を強調してあるようで、三尺玉が開花したかのような轟音が響き渡っております。

個人的にステイシー・キーチが好きなんですが、デニス・クェイドのドク・ホリデイは、いかにもインテリが道を踏み外して立ち直りきれないという風情がよいです。病気は早めに治してほしいですけども。

終幕まで正統派伝記映画として一貫させつつ、伝説が形成されていく様子をも見せるという、アメリカ映画産業そのものの成り立ちを自戒しているような要素もあって、1990年代(=20世紀末)らしい一本だと思います。



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