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1943年7月、木下恵介『花咲く港』松竹

潜水艦におどかされてしりごみしたとあっちゃ、日本の漁師の名折れじゃ。

原作:菊田一夫(情報局委嘱国民演劇脚本) 脚色:津路嘉郎 撮影:楠田浩之 美術:本木勇 音楽:安部盛 演奏:大東亜交響楽団 編集:杉原よし 照明:長島猛 大道具:矢萩太郎 小道具:島田信男

名優ぞろいの名コメディ。完成度マックスの上を行く、初監督作品。東山千栄子が大活躍。色男趣味もすでに確立していたもよう。

九州の小島。風の強い海浜、島内唯一と思われる旅館「かもめ館」の外観など、ロケハン絶好調で、さらに自転車や馬車の走行、短艇漕ぎ、造船風景、船上の会話などなどたいへん手間をかけて撮影されており、戦況逼迫・国民生活窮乏が深刻化する世相をものともしない力作、かつ軽やかな味わいは、逆説的に負けじ魂の表現になっているようでもあります。

技法はすでに成立していたものを極限まで磨きぬいたというべきで、実験的・特撮的な技法を駆使した黒澤作品(『姿三四郎』)とは確かに好対照。

黒澤の荒削りさに較べて、役者の持ち味を活かした群像心理描写は早くも木下節の真骨頂ここにありで、このスタート地点の違いもいい対象のような気が致します。

男と女、人生の出だしと転換期など、主題的にも真逆なわけですが、だからこそ、ちょうど補完的な位置関係にあるわけで、これはやっぱり両方楽しく拝見すればいいことだろうと思われます。

せまい町へ新参者がやって来て……。来訪の前に町の人々の様子を描いておくところが味噌。

開戦当時の様子を描いているので、既に諷刺とも言えるんですけれども、当時の庶民がこのように言った気持ちに嘘はなかったと。

戦中映画は軍隊の活躍を描きつつも映画人の本音がしのばせてあるものですが、木下は『陸軍』にしても本作にしても、庶民の心情に寄り添う目線で描いていると思います。


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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験・就活を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

映画評は、アップロードする以上は「下げる」ようなことは言わないことにしております。あらすじもあまり申し上げませんので、楽しみに御覧になってください。記事冒頭の色つき文字は映画中の台詞・挿入歌の歌詞からの引用です。

なお、取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・分割・削除しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。