Misha's Casket

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1978年5月『横溝正史シリーズⅡ 真珠郎』TBS系

金田一の腹具合はともかく、それから間もなく彼の予感は見事に的中した。

脚本:安藤日出男 撮影:森田富士郎 照明:中岡源権 美術:西岡善信 音楽:真鍋理一郎 監督:大洲斉

真珠郎は、どこにいる? アタックのきいた前衛的なチェロ音楽が魅力的です。自転車に乗る前にはブレーキのきき具合を点検しましょう。お断り:この原作には、金田一耕助は出ていませんが、原作者の了解をえて、登場させています。(字幕より)

TBS系テレビドラマ『横溝正史シリーズⅡ』第2話。昭和二十三年、城北大学から始まるお話。

大学の建物をはじめ、ロケハン、マット画を含めた美術陣、照明、撮影が良い仕事してまして、映画ライクな見応えを堪能できます。もとは娼家だったという建物は内装に赤が多用され、艶かしくも惨劇を予感させて魅惑的。鈴木瑞穂のナレーションも素敵です。

原作は(オスカー・ワイルドが普通に流行っていた)戦前のもので、事件そのものはよく組み立てられており、見どころ盛りだくさんで、戦後の金田一ものに通じる原点的作品だそうです。怪奇と幻想、残虐と耽美、湖畔の豪邸、謎の美少年、悲劇の美女。

道具立てはいいですし、観客をミスリードする面白さもあるんですが、ちょっとこのなんというかあれですよ。

原作準拠の御都合主義は言わないにしても、映像作品としてその、脚本と演出と編集に難があって、ミステリーとしてもホラーとしてもロマンスとしても中途半端感ただよう上に、もう少し手際よくやって前後篇くらいにできなかったか。テレビドラマなので「どうしてもここで3回ぶん消化しろ」みたいな事情もあるのかもしれませんが。

タイトルロールの読み方は「しんじゅろう」です。玉のような男の児だから。たまおくんではいけなかったのか。兄弟がいたら珊瑚郎くんや翡翠郎くんだったのか。ダイヤモンドなら金剛郎。強そう。なお、ドラマ中では美少年ではなく「美青年」と言っております。

時代劇で太刀持ちの小姓を女優が演じていると落胆する当方ですが、美少年または美青年というと女性的なのを想像するのはストレート男性の悪い癖で、この世には男性的の美しさというものもあるのです。

もっとも、このシリーズでは古谷=金田一が男の色気と愛嬌を担当しておりますので、犯人側は女性的で正解ではあります。

そして、そこ編集しちゃダメです真珠郎。あくまで目撃者目線の遠めのカメラでワンシーン・ワンカットにしないと。誰か溝口さん連れてきて。いや木下さんか。

もとより殺人事件ではあって、ほかにも人権蹂躙が発端にある話が多いのが横溝ミステリーであり、一度はやってみたい男のロマンでもあるんですけれども、ちょっとこれは極端な話なので現代にリメイクはむずかしいかもしれません。

1978年は、美少年漫画が一斉に連載スタートした年でもあって、流行の主題ではあったんでしょうけれども、当時の視聴者の評価はどうだったかな?

大谷直子のお嬢様ぶりが、とうが立った感がないこともない上に、どう考えても和服を着せるべきだったと思います。

金田一が要所要所で絡んでくる風情がよく、原田大二郎の人のよさが徹底している上に、長門=日和警部が単独行動なのは不自然ではありつつも、金田一とのデコボココンビが楽しいというあたりが救い。

これはしかしですね……

【以下、核心部分に触れますので未見の方はご注意ください】







オスカー・ワイルドから美少年(美青年)を連想するのは正しいわけですが、決定的に重要なのは「ズボンはいてるから男」という先入観であって、原作が発表された1937年現在でなければ成り立たない話なのです。

椎名はもともと空想的の性質があるわけですが、さらに「ドリアン・グレイのような美男がいるものなら会ってみたい」と言わせておくとよかったかもしれません。


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