1961年4月、黒澤明『用心棒』東宝・黒沢プロ

  07, 2017 11:02
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俺を買わんか。

製作:田中友幸・菊島隆三 脚本:菊島隆三・黒澤明 撮影:宮川一夫(大映) 美術:村木与四郎 録音:三上長七郎・下永尚 照明:石井長四郎 音楽:佐藤勝 監督助手:森谷司郎 剣道指導:杉野嘉男 剣技:久世竜 振付:金須宏

買ったッと叫びたくなる口元を押さえつつ。西部劇ふうのBGMに乗って、弁当も持たんと懐手で一人歩きする三船敏郎、41歳。岡本喜八さんとこでは端役だったり主役だったり忙しかったですが、黒澤さんとこでは天下御免のタイトルロールでございます。モテてモテて困る。たまに出刃包丁装備。

木下が母親と妹に気配りできるお兄ちゃんだとしたら、黒澤は男の子どうしで夢中になって遊んでる感じがするわけでございまして、序盤は「似たような場面が篠田正浩『悪霊島』にあったなァ」と逆デジャヴュを覚えつつ。

モノクロ撮影ですが、画質がすごく綺麗になって、艶めいております。日本の好景気のせいにしちゃいましょう。作中世界は不景気のずんどこのようですが、わざとボロく作ったセットの豪華さという逆説が観られるのも映画の面白いところ。お話はたぶん東映任侠時代劇(次郎長もの)への対抗心むき出し。河津清三郎の低姿勢っぷりが楽しい。

今回は漫画的娯楽に徹してみたということのようですが、海外作品の影響は明らかで、これがまたあちらに影響を与えたのでしょうから、なんというか映画の流行の折り返し地点にいるような作品かと思われます。

低めに構えたカメラが絶好調。男盛りの三船の表情を堪能させてくれます。藤田進の笑顔の良さを活かした夜逃げではない使い方も楽しい。無声映画みたいな演出も興味深く。海外からは、悪役たちの誇張的造形も含めて、いろいろな点で日本らしさのエッセンスを集めた典型というように見えるのかもしれません。

進行は意外にゆっくりめで、途中止まりかけちゃうようなところもあって、『醜聞』『白痴』あたりを連想させたり致します。『生きる』のような台詞上のかけあいの面白さは少なくて、三船一人を徹底的に 使い倒した 持ち上げたヒーロー活劇。ひと足早く007シリーズの向こうを張っているとも言えるかもしれません。後の『必殺』シリーズなどのテレビドラマに多大なインスピレーションを与えたものと思われます。

冒頭の人物紹介では東野英治郎の独特の毒々しい口調がよく活かされております。この人も思えば面白い俳優さんで、顔と声が印象的だが、やや野卑な感じがあってヒーロー向けではなく、そうかといって誇張メイクでコメディリリーフというわけでもない。ここには出ていませんが笠智衆も人がよすぎて苦労するタイプのヒーローの一人だったわけで、東野は対比的に重要な役なのでした。

なんでこの人が天下の副将軍だったのかと思うと、あまり(千恵蔵みたいに)ヒーロー然としていると、民間人のご隠居らしくなくなっちゃうからだったのかもしれません。個人的には西村晃バージョンが好きです。

『用心棒』に話を戻しますと、珍しいほど大自然ロケをしていなくて、宿場町内部の話に終始しており、かっこいい画が多くて印象的ではありますが、比較的気楽に撮られた作品かもしれません。仲代さんは本当に賢い演技者でした。

(挙句に釜足さんに持っていかれた件。)


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