Misha's Casket

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1963年5月、古澤憲吾『青島要塞爆撃命令』東宝

飛行機も補給隊も、どちらか一方が失敗しても、この作戦は成り立たない。

脚本:須崎勝弥 撮影:小泉福造 美術:北猛夫 録音:伴利也 照明:金子光男 音楽:松井八郎 特技監督:円谷英二

1914年。難攻不落のビスマルク砲台。日本男児ここにあり。痛快無比の冒険活劇巨編。(予告篇より)

こちらは1960年代の航空映画の金字塔と申してよいかもしれません。企画としては『ナヴァロンの要塞』(1961年)準拠でしょうが、撃墜した敵に敬礼を送る航空魂と日本映画人の丁寧かつ大胆な仕事ぶりに満ち潮のように感動が迫ってまいります。

まさかの、といってもいいほど作例の少ない第一次大戦もの。極東方面、日独戦。下駄履いて出刃包丁装備。佐藤允演じる主計長が料理修行する話じゃないです。複葉水上偵察機の優美なフォルムを拝見できます。

実寸大模型に俳優を乗り込ませているのは明らかなんですが、カメラが大きく揺れていて、臨場感がものすごく、「どうやって撮った?」と心配になったところ、ヘリコプターを使って空撮したんだそうです。そこまでやる……

臨場感というか、リアルなのです。撮影の苦労を伝えていると思って観れば、そのままドキュメンタリーなのです。漫画よりも、アニメよりも、実写映画が元気だった時代があるのです。敵は勇敢だ!

海外スパイアクションの流行に乗って、異国情緒をスパイスに、美男美女を多めに起用した明るい冒険活劇であって、泣けるタイプの映画じゃないんですが、よくぞ撮ってくださいました。

大正3年。ニュース映画調のナレーションが明けると、ほのぼのタッチで開始いたします。まだ飛行機が戦力として頼りにされていなかった頃。通信機がなかったのでトランペットで会話していたようです。出刃包丁の使い方は観てのお楽しみ。

「戦争とは音である」って誰かが言ったらしい(と牧島貞一のドキュメンタリーに書いてあった)んですが、音楽で盛り上げるのではない野戦描写がむしろ圧巻。

輸送船は実物を繰り出して洋上撮影したようで、ひじょうに低い位置からあおった珍しい構図も見られます。中盤はさまざまな場面が用意されており、後半は市川『野火』顔負けの体当たり演技。とにかく、ものすごく手のこんだ作品です。

俳優陣は実際に(第二次の北支戦線で陸軍の)将校だった池部さんが主役。やっぱり悔しいときの表情が美しい人で、得がたい個性だと思います。藤田進が司令官で存在感を見せております。平田昭彦が口髭をたくわえて海軍将校らしいたたずまいです。

開始30分くらいで登場する浜美枝が超絶美人。佐藤允はやっぱりいい人。そして黒色火薬の量が半端なかった模様。

好景気だったんですね、日本……。



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