Misha's Casket

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1959年7月、松林宗恵『潜水艦イ-57 降伏せず』東宝

激してはいかん。激した気持ちで日本の将来は考えられない。

製作:堀江史朗 原作:川村六良 脚本:須崎勝弥・木村武 撮影:完倉泰一 美術:清水喜代志 照明:森弘充 音楽:団伊玖磨 監督助手:清水勝也 特殊技術:円谷英二

昭和二十年六月二十日。魚雷に人を乗せる必要があるんですかと思いつつ、特撮見事です。

モノクロ画面に第二種軍装がまぶしい。美男俳優大量投入の娯楽活劇にはちがいないですが、実直な描写によって戦中映画の魂をよく再現していると思います。

須崎脚本のいいところは、前線の兵たちの会話がたいへん生き生きしている点で、明るいジョークの応酬は、やっぱり似たようなことが実際にあったんだろうなと思わせます。部署どうしの対立意識も(観てるぶんには)面白い話題です。

それにつけても潜水艦の中はせまいです。男臭さもすごそうです。俳優たちも一体感が出るようで、ドキュメンタリーさながらの緊迫感を実現しております。

内部はセットだと思われますが、たいへん丁寧に造られており、洋上撮影も敢行し、見応えは高いです。機雷はきらい。いわゆる海軍式敬礼をしてるようですが、これも諸説あるようです。

池部さんが主演でクレジットのトップ。リアル学歴を活かした海軍士官らしいたたずまい。藤田進とのツーショットは、一瞬呆然とするほどの豪華顔合わせ感に満ちております。意外な秘密任務の意義を説く藤田の長台詞が(字面としても演技としても)感動的です。司令官役・高田稔も美しいです。

乗組員では、三橋達也の先任ぶりが実にいいです。うちの女房にゃ髭がある。

【以下、物語に直接言及しますので未見の方はご注意ください】





指揮官の苦悩と兵の日常を描いたことによって戦中映画のエッセンスを再現し得た良作で、細部の見どころが光りますが、物語全体としてはどうなのか。禁欲的というべきか。

終盤も、潜水艦なら潜水艦らしく戦わせるべきではなかったか。

これが実際の生存艦の伝記であれば、乗組員が上陸・部隊が解散して、それぞれに新たな任務についたところで終戦を迎えたとなるわけで、ラストシーンは高齢に達した乗組員が記念艦として展示されている所を訪れるとなるのでしょう。

これは娯楽作品として、あっけなく終わるわけにはいかず、怪獣映画的なスペクタクル画像を必要としたという、事情は推察できるんですけれども、せめて、中途半端にかついで行った魚雷だけでも有効利用させたかった気がいたします。


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