1953年10月、本多猪四郎『太平洋の鷲』東宝

  22, 2017 11:01
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百年兵を養うは、ただただ、平和を守らんがためである。

製作:本木荘二郎 脚本:橋本忍 撮影:山田一夫 録音:宮崎正信 照明:大沼正喜 音楽:古関裕而 美術監督:北猛夫 美術:阿久根巌 特殊技術:円谷英二・渡辺明・向山宏 応援監督:小田基義 監督助手:小松幹雄 協力:米極東空軍司令部

昭和二十八年度芸術祭参加作品。東宝戦後初の戦記映画。ニュース映画ふうの硬質なナレーションと地図の色分けなど初歩的アニメーション、および新聞記事などのベタっちゃベタな演出によって、かるく歴史のお勉強ができます。

サンフランシスコ条約発効して主権回復後、一年。『戦艦大和』と同じ年。予告篇には「真相は遂に暴露された!」とあります。

『戦艦大和』でも今さら巨大艦の諸元を解説するという場面がありましたが、日本国民は聯合艦隊が終戦前に壊滅していたことを知らされていなかったのだそうで、本当にこれで勉強したのだろうと思われます。

たびたび実録フィルムを使用しており、そこだけ画質が違っちゃってますが、なにぶん本物なので見応えは高いです。今日も飛ぶ飛ぶ霞ヶ浦にゃ♪

予告篇も空撮・特撮によるアクション性を強調しておりますが、じつは山本五十六の人間性に焦点を当てた伝記的心理ドラマの要素が濃いです。

戦後民主主義的観客心理としても、米軍の協力を得ていることからしても、基調は三国同盟推進派だった陸軍が悪役、山本長官全力支援という構図。大河内傳次郎は大正15年に日活入りして以来の大ベテラン。温厚かつ不屈の山本像で、共感度は高いです。

橋本忍は例によってというべきか、情報量の多い原作(事実)を要領よくまとめて説明するのが上手いんですが、やや台詞が硬く、差し向かいのトップ会談という場面が多いようです。

ので、前半は画的に面白いところは少ないんですが、それだけに、大河内・柳永二郎・高田稔・志村喬などのベテラン俳優の台詞あしらいが聞きどころです。

まだ若い三國の熱意ある様子、『七人の侍』の手前でいい感じに髭面の三船の男の愛嬌は、印象的な見どころです。「いいよ」じゃないよ……

開戦に至るまでの心理的・政治的葛藤がたいへん丁寧に描かれたうえで、新高山へ登ることになっちゃいますと円谷組の出番ですが、これはまた虚実不分明なほど見事です。

ミッドウェイ方面の「真相」も実直に再現されており、観客たちは唖然としたかもしれません。整備兵たちはひと言も愚痴を漏らしませんでした。特殊技術班は大型模型を用意したように思われます。

風防越しの目標物や、尾翼越しの飛行甲板など、工夫した構図も多く、どっかで観た感もあれば、「これ零戦じゃないよね」感もありますが、たたみかけるような編集は大いに躍動感にあふれ、戦時中の航空映画へのトリビュートが感じられると申しましょう。なお、旗艦は巨大艦大和にしてはちょっと揺れすぎかもしれません。酔いそう。

軽口はさておき、物語としても技術としても、映画人たちの意気の高さが偲ばれます。しかもなお、やはり全篇を貫くのは、追悼の念なのでした。

御国の四方の海が永遠に静かでありますように。


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