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顔をみれば分かる。

最近は早めにやってしまうところも多いようだが運動会シーズンである。体育の日だし。
学校行事などで親子が連れ立って歩いているのを見ると、ゾッとするほど、あるいは笑っちゃうほど顔が似ているものである。

赤ん坊の顔はみな同じなようだが、よく見ると他所の家の子は他人の顔をしている。
新生児の両親(母親も)はまだ実感が薄く、新生児室に並んでいる赤ん坊の中から自分の子を見分けられないことはある。

が、一人一人見つめていくと、「これは明らかに他人の顔」というのが分かるものだ。消去法で自分の子を見つけると「そういえば目が自分に似ているような……嫁(夫)に似ているような……」というので、少しずつ実感が湧いてくる。

見舞いにきた親戚のおばさんは一目見て「○○くんの小さい頃にそっくり!」などと叫ぶ。

面白いのは、父方の親戚は新生児の顔をみて「お父さんに似ているね」と言い、
母方の親戚は「お母さんにそっくり」ということだ。
ミックスなんだから両方の特徴を備えているのは当たり前で、人間の目は自分の見たいものだけ見て取る。

『犬神家の一族』事件の肝は「神主の娘がじつは」だった。

佐兵衛から見れば「愛した女性にそっくり」である娘が、はたから見れば「誰が父親か一目瞭然」だった可能性はある。サスペンスのトリックは意外と綱渡りだったりする。

(事実は小説よりも奇なりということがあって、本当に誰も気づかなかったってこともあり得るけど。)

だから「高平太って白河院にそっくりじゃね?」と思った人がいた可能性もある。

テレビのなかった当時の庶民は、院のお顔なんて知らない。が、両方のはざまにいた家成卿はゾッとしたかもしれない。

やせても枯れても女性関係がえげつなくても、院は元・天皇であり、神の子孫である。その血を享けたとすれば、ギリシャ神話でいえば半身の英雄であり、死後は星となって天上に列せられるべき存在だ。日本史上に輝く赤い巨星ではあるかもしれない。

ともかくそういうわけなら家成さんは「ゆめゆめ粗末に扱ってはなりませんよ」と従姉妹の宗子さんに言ったかもしれない。

だからこそ平太に要職を与えなかった、出仕させなかったと考えるのも面白い。皇子として担ぎ出され、あるいは政治家として実権を持つことを恐れられた……「うちで唐菓子でも食べてのんびりしていらっしゃい」と家成卿は言ったかもしれない。だからこそ忠盛も四位以上に出世させられなかった、落胤の後見が参議となって院とガッチリ手を組んでは朝廷貴族はたまらない……と考えるのも面白い。

逆に言うと、そういう子にありがちなように「寺へやられる」ってことがなかったんだから、ふつうに忠盛の子だと思われていたのかもしれない。祇園女御による特別な計らいは、単に白河院と忠盛の関係を強調するための演出だったかもしれない。そう考えりゃ清盛も、彼の馬のくちとりをさせられた子も、いい面の皮といえなくもない。

実父より位の高い家の養女にされた上で嫁入り(入内)させられた少女たちも含めて、子供たちはそんなふうに大人の政略の道具にされていた時代だ、といっていいだろう。

そう考えてもなお、忠盛を参議にするわけにいかない。院とガッチリ(以下略)

要するに忠盛(平家)は、武力とコネと金で昇れるところまで既に昇りつめてしまったのであり、どっちにしてもそれ以上の出世の望みのなかったものが、後白河院というイレギュラーな存在によって覆された。

近衛帝が早世なさったのが多くの関係者にとって計算外だったわけだけど、そもそも近衛帝をむりに即位させないで、崇徳帝を長生きさせて差し上げれば、あの騒ぎにはならなかった。鳥羽院が「私なき後は皆で顕仁を盛りたてるように」っていえばよかった。院が彼を「自分の種ではない」と信じて遠ざけたがったのがいけない。白河院が最初の駒を倒したドミノが廻り廻って平家を頂点に押し上げた。

70~80年代のテレビでは「ドミノ倒し」が流行った。三角錐のふもとから頂点へ向けて駒を並べると、勢いのついたドミノは重力にさからって上へ上へと這い上って行く。最後はロケットが上がったりしたものだ。面白かった。

ドミノの向きを変える回転盤のようなものがあったが、保元の乱(またはその前史)でその役目を果たしたのが信西だったのだろう。

やがて正三位となって正装した清盛を見て、昔を知る高位高官たちが「白河院のお若い頃にそっくり」とゾッとした……なんていうのは、やっぱり面白い。

(ついでに殉死というのは美福門院みたいに残された者が権力をもつことを防ぐためだったのかもしれない、と思うなど)


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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

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Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。